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- 弱ペダBL小説 荒北「大好きなひと」
- 日時: 2017/11/27 01:24
- 名前: 齋木怜人 (ID: vlOajkQO)
※漫画の設定と異なる所がありますので、ご了承下さい。名前と性格は同じになるようにしてます。
「大好きなひと」
いつもへらへら笑って掴み所のない俺のことを、「不思議チャン」と呼んだ人。少し口は悪いんだけど実はとっても優しくて温かい人。不器用で照れ屋なすごく可愛い人。そして、俺の、好きなひと。
(1)
「あっ、あの…荒北さん待ってください!」
練習が終わった後、帰りがけの荒北さんを呼び止める。緊張で震えている俺の声に、やや気だるげにゆっくりとこっちを振り向いた。
「ああ?なんだ…真波か」
強く握った手のひらが汗で滲んでいる。何回も練習してきた言葉が頭から消えて声が出ない。黙っている俺を不思議に思ってか、荒北さんが近くに来て俺の額に手をおいた。
「熱はねーな。顔赤ぇから風邪かと思ったけどヨ」
目の前にいる荒北さんにドキドキして身動きできない俺の頭に大きな荒北さんの手がのり、俺の頭をグシャグシャに撫でた。「ま、風邪ひかないよーに気ー付けろよ」
手をヒラヒラと振ってそのまま去ろうとする荒北さんの手を咄嗟に握ってしまい、そのまま部室へと駆け込んだ。しばらくの沈黙の後、少しずつ言葉を紡いだ。
「えっと、急に呼び止めて、いや連れ込んで?すみません。その…荒北さんに伝えたいことがあって…」
そう言うと荒北さんはしっかりと自分を見つめた。
「ん?何だヨ?」
大きく深呼吸して、一息に想いを伝える。
「俺…、荒北さんのことが好きです。」
言えた安心と答えを待つ不安を抱え荒北さんの言葉を待った。荒北さんは目を見開き、驚きを隠せないでいるようだった。あぁ、この恋は失敗なのかもしれない。男子同士なんて気持ち悪いって拒絶されるのかな。でも優しいから傷付かないように振ってくれるかもしれない。俺は、荒北さんからの“ごめん”の3文字が聴きたくなくて、拒絶されるのが怖くて、そんな自分の弱さが嫌になって、この場から逃げ出したくなる衝動を必死に抑え込んでいた。その時、部室のドアが開き誰かが入ってきた。
「あれ?靖友と真波?2人とも何してんの?」
新開さんは俺達の組み合わせを不思議に思ってか質問を投げかけた。何と答えていいか分からずに俺は視線をそらした。
「何でもないですよ〜。それじゃあ、お先失礼しますね」
明るくいつもの自分を装って部室を出る。
「おいっ、待て真波っ!」
荒北さんの焦りの滲む声を後ろで聞きながら俺は雨が降りそうな天気の中、自転車に乗り、走り出した。
(2)
家と逆方向に自転車を走らせていた俺は、案の定途中で雨に降られ、びしょびしょになりながらペダルを踏んでいた。荒北さん、怒ってるかな…。あの後どうなったんだろう…。頭は荒北さんのことでいっぱいだった。やっぱり言わない方が良かったんだ。そしたらどこにでもいる普通の先輩後輩の関係のままでいられたのに。気まずい関係にならずに済んだのに。そこまで考えられなかった自分と、荒北さんに迷惑をかけてしまったことに涙が止まらなくなった。その涙は雨と一緒に流れていった。
自宅につくと、玄関前で濡れた荒北さんが座っていた。そして、俺を見るなりほっとした表情をみせた。
「どうして…ここにいるんですか…?」
「話の途中で出てったお前を追いかけたに決まってんだろ?電話にも出ねーし、家いけば会えると思って…」
荒北さんは頭を掻きながらそう答えた。
「そのままじゃ風邪ひきますよ、中入ってください。」
「ありがとヨ。お前も風邪引きそーだけどな」
そう俺に笑いかけてくれる。
「大丈夫ですよ。俺けっこう健康なんで」
「そうなノ?そうは見えねーけどな」
こんな当たり前に交わせる会話が嬉しい。告白のことを忘れてないかが心配になるくらいに。
「シャワーだけでも浴びてきて下さい。風邪引かせられないんで」
「おう、あんがと。」
着替えを用意して先輩を風呂場に押し込め、俺はリビングで着替えた。少し肌寒い気はするが大丈夫だろう。それより心配すべきはこれからのことだ。ソファーに体育座りをして中身のない頭をフル回転させる。嘘だってことにした方がいいんだよね…。その方が楽だし一番傷つかずにすむはず。でも…。
「あったかかったわ。あんがとヨ。」
扉を開けて入ってきた荒北さんはそのまま俺の隣に腰かけた。肌がくっつくほどの距離で。俺は自分の気持ちに蓋をして話を切り出した。
「あの、さっき言ったこと、忘れてください。嘘なんです。ただ、荒北さんの困った顔が、見たかっただけなんです。」いつもの笑顔でそう告げた。全く不思議チャンだな、なんて言われると思いながら。
「それは、本心なのか?」
真っ直ぐと目をみて言われる。
「ほ、本当ですよ…」
嘘をついている俺には、そんな目をみれなくてついそらしてしまう。押し込めていたはずの気持ちは何故かすぐそばにあって、溢れだしそうになって口をとじた。
「本当のこと、ちゃんと言ってくんなイ?」
俺は優しい荒北さんの声に嘘がつけず、涙を流しながら気持ちを伝えていた。
「俺、ほんとは荒北さんのこと大好きですっ…。嘘でもなくて、でも傷つくの嫌だったから…っ。」涙で声が震えてる。「荒北さんに嫌われたくなくて…それでも気持ちは伝えたくて…。ごめんなさい…」
荒北さんは、俺の頬を伝う涙を拭って手のひらを俺の顔にあてた。俺は断られるのが怖くてぎゅっと目を瞑った。
「バァカ。」
その声の後に俺の唇に柔らかいものが触れた。驚いて目を開けると荒北さんの顔がすぐそばにあって、この状況を理解する。今、俺、キスされてる…?荒北さんは顔を離して呟いた。
「こーゆーことだからぁ。その…俺も真波のこと好き…なんだヨ」
顔を真っ赤にして告げられた言葉は俺の心にゆっくりと落ちていった。「う…そ…」「本気だヨ。嘘でこんなことしねーから」「あ、あの…付き合ってもらえるんですか……?」
恐る恐る訊くと荒北さんは楽しそうに言った。
「俺はそのつもりだけど?真波は嫌か?」
いたずらっぽく俺の反応を楽しむように笑いながら。
「嫌じゃないです!でも、なんで…。」
「俺もお前が好きだからに決まってんだろ?それ以外の理由はないだろ?」
この人はすごく真っ直ぐで、純粋で、かっこいい。
「…大好きっ!荒北さんのこと、すごく」
ぎゅっと、ありったけの愛情を込めて抱きついた。
「泣くなよな…。俺だって真波のことすごく好きだぜ。」
「泣いちゃうのは幸せだからですっ。…だから先輩のせいですよ?」
「俺は真波のあのへらへらと笑った顔が好きだったけどよ…今泣き顔も好きになっちまった」
この人はまた好きにさせる。多分これから、この人のいろんなとこを知って、その全部を好きになっちゃうんだろうな。
「俺も荒北さんの照れた顔大好きですよ。俺にしか見せないでくださいね?」
耳元でそう呟くと耳まで真っ赤にして、少し怒った。
「あたりめーだろーが。こんな顔お前にしか見せらんねーよ。」
何気ないそんな言葉に嬉しくなりながら、俺は幸せを噛み締めた。
「荒北さんだーいすきっ!」
今度は自分から唇を重ね合わせた。