BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

(2+8)×3 = ?【 アイドリッシュセブン】
日時: 2018/02/25 15:11
名前: 深海蒼 (ID: INzfmPW5)

アイドリッシュセブンの小説書く
感想は完結するまで受け付けてない
よければみるだけ閲覧数増やしていってください
のろのろ亀更新

Re: (2+8)×3 = ? アイドリッシュセブン ( No.1 )
日時: 2017/12/27 03:41
名前: 深海蒼 (ID: 0apRgaLj)

「なぁ。俺のこと、どう思ってる?」
こいつにしては、いやに女々しい質問だな。
手にしたグラスの酒を干しながら、バーカウンターの隣に座る男を眺めた。薄暗い店内でも僅かな明かりで煌めく銀髪。いつも冷めているようにみえて、本当は熱い情熱を秘めたシルバーアイ。触らずともきめ細かくて滑らかなことが伺える白磁の肌。グラスをくゆらせる長くてきれいな指。長くて、緩くカーブを描きながらアーモンド型の瞳を縁取る睫毛。
どこを取っても、嫌みなくらいにイケメンで、完璧な八乙女楽がそこに居る。
八乙女と飲むようになったのはつい最近のことである。たまたまバラエティー番組の打ち上げの席で話が合い、時々こうして飲みにいく仲になった。まだそんなに回数を重ねていなくても、八乙女がどれ程男気にあふれていて、誠実で真っ直ぐな人間なのかは充分理解できたと思っている。逆に意外と考えなしにいろんなことに好奇心旺盛で、突っ込んでいっては痛い目にあうタイプだとか、ロマンティックすぎて若干引く言動があるとか、そういうことも知ることができたとおもう。
「何だよその質問」
だから、そんな質問は、何だか八乙女らしくなかった。たしかに人は誰かに対して一番に思われたいと思うものだ。アイドルなんて商売上、必然的にその意識は高まるだろう。俺だってアイドリッシュセブンのファンの子が俺のことが一番好きだと言ってくれたなら、嬉しいに決まっている。だがそれはあくまでファンであって、飲み友達ではない。飲み友達からの自分の評価なんて細かいことを気にするような男には思えなかった。
「答えろよ。…俺のこと、好き?嫌い?」
「は?何言ってんだよ。酔ってんなお前。」
流石に眉根を寄せた。好きとか嫌いとか、それこそわけがわからない。俺と八乙女はあくまで飲み友達であり、ましてや男同士であり、そんな質問が間違っても飛び出してくるような仲では無いのだ。たまたま仕事帰りに時間があったら寂れたバーでカクテル飲みながら話をしても、休みの日に何処かに遊びに行くわけではない。そんな関係性に対して、八乙女の質問はどう考えても踏み込みすぎていた。何かのラインを踏み越えて、俺の中へと侵入しようとする質問だった。
「……頼むから、聞かせてくれ」
「…何かあったのか」
八乙女は、グラスをたんっと机に置くと、そのまま突っ伏す。弱々しい声だった。何か悩んでいるのだろうか。それで俺にあんな質問を?
「…嫌いじゃねーよ。嫌いな奴と飲みになんか来ないだろ。」
「…そっか、そうだよな」
答えると、八乙女は顔もあげずに、そう言った。泣きそうな声に聞こえてドキッとする。ダークブルーのシャツに隠れた八乙女の表情は、感情は窺えない。まさか、泣いてるのか?いや何で?
「……や、おとめ?」
恐る恐る、戸惑いながらも声をかけると、八乙女は少しだけ腕から顔を出してこちらを見上げた。普段は見上げるばかりの銀の瞳がこちらを見上げている。酒のせいだろうか、熱に浮かされたようにうるんでいる。
「…変なこと聞いたな、忘れてくれ。」
「…おう。」

Re: (2+8)×3 = ? アイドリッシュセブン ( No.2 )
日時: 2017/12/27 04:11
名前: 深海蒼 (ID: 0apRgaLj)

「ただいまー…って、もう皆寝てるか。」
バーで八乙女と別れてタクシーで帰ってきたら、時刻は既に日付が変わったどころの騒ぎではない時間だった。かなり酔っているようで心配だったが、八乙女が大丈夫だと主張するのでそこで別れた。
タクシーの中でも、やっぱり気になるのは八乙女がおかしかったこと。好きか嫌いか?それを、俺と八乙女の間で確認しあって何になると言うのだろう。八乙女は何を求めていたのだろう。わからない。
今まで八乙女と接してきたなかで、何か特別なことはあっただろうか。他の芸能界の飲み友達にはしなくて、八乙女にはしたようなこと。いや無い。俺たちは至って普通にフランクに付き合っていた筈だ。なら、何が違う?店の選び方も、飲み方も、喋ることも大した違いはない。じゃあやっぱり八乙女サイドの問題なのか?俺に心当たりが無いと言うことはそういうことだろう。ならやっぱり八乙女には何かあったのだ、忘れてくれ?忘れられるわけがない。
「…………寝よ」
とっ散らかした思考はもうそのままにして、とりあえず眠ることにした。シャワーは朝にしよう、下手に酒が回るといけない。
簡単にラフな格好になってベッドに寝転がる。柔らかいシーツが体を優しく受け止めて、掛け布団が優しく眠りに誘う。
明日の仕事は午後からなので、ゆっくり眠れるのがありがたかった。

いつもより少し寝坊した時間に起きたら、昨日の晩あんなに悩んでいたことはすっきりしていた。寝ている間に脳みそが頑張って処理してくれたのだろう。ぐちゃぐちゃだった部屋のなかを綺麗に整えて、本もきちんと分類して並べる。そしたら意外とすっきりまとまってしまって、終わってみたらあっという間だな、と思えてしまった。
八乙女は何かあったのだ。それは確実だろう。
だが、分かったところで俺に何ができる?
俺は八乙女に比べて何ができると言うのか。
ならば、次会ったときに何も触れず、八乙女が話したいようなら黙って聞いてやろう。
思考の整理が終わるとスッキリする。シャワーを浴びて遅めの朝食をとった。既にメンバーは仕事で出払っているようで、寮の中は静かだった。自分で焼いたパンケーキに手作りのりんごのジャムを乗せたものをゆっくり味わう。角切りにしたりんごを混ぜて正解だった。りんごのしゃきしゃきした食感とパンケーキのふわふわもちもちとのコントラストがたまらない。
そんな風にゆっくり仕度を終えて寮を出た。今日はバラエティー番組のゲストMCである。気合いを入れねば。撮影現場にいつもより早めについて挨拶周りをしたら、台本を確認して、本番に向けて集中力を高める。
この番組は台本なんて関係なしに進めていくことが多い。何かあっても台本にしがみついていくことはできないので、正直不安な部分もあるが、知名度は抜群の番組だ。ここはアイドリッシュセブンのバラエティー担当として頑張らなくてはいけない。
用意された場所へ座り、営業用のスマイルをカメラに向けて浮かべた。

Re: (2+8)×3 = ? アイドリッシュセブン ( No.3 )
日時: 2017/12/29 23:45
名前: 深海蒼 (ID: GuSqVW3T)

番組は大成功に終わったのでほっとする。大きなミスをすることもなく、きちんと自分の色を出せたと思っている。ブラホワで知名度が上がったとはいえまだまだ気を抜けるほど有名ではない。一つ一つの仕事を丁寧に全力投球していかなければ次は無いのだ。俺にできることは何だってしよう。
「和泉くんおつかれさま!いやーよかったねぇ。」
「プロデューサーさん!ありがとうございます!」
「いや、君ならこれくらいしてくれると思ってたからね、次も頼むよ。」
「はい!」
こうして認めてくれる人もできて、今とてもやりがいを感じている。バラエティーが得意とはいえそれだけに頼っていくわけにもいかないけど、ボイトレもダンスレッスンも気合いいれてはげんで、アイドルとしても認めてもらえるようになろうと頑張っている。モチベーションが高いのが、自分で自覚できる。
「また飲みにいこうね」
「はい、喜んで!」
プロデューサーと別れて寮に帰ると、久しぶりに寮には全員が揃っていた。俺が中に進むにつれてソースの焼ける良いにおいがする。リビングを覗けば環がホットプレートで焼きそばやお好み焼きを焼いているのがみえた。忙しくなったのは喜ばしいことだが、前と比べて全員でご飯を食べることが少なくなったので、たまにこうして全員揃うと嬉しくなる。ただいま!と声を張り上げれば、口々におかえりを返してくれるのでそういう優しさや、暖かさがじんわり心に染み渡る。
「ソースの良いにおい…もう俺食べるだけか?」
「たまにはミツも楽すりゃいーんだよ。」
「OH!ヤマトは楽をしすぎでは?飲んでいるだけです。」
ナギのツッコミにくすくす笑ってから洗面所に行く。手洗いうがいそんで顔洗い。陸のために全員がしていること。誰が決めた訳でもなく、自主的に習慣にしている。7つ並んでいるコップの中に自分のオレンジのコップを戻して皆の元に戻ると本格的に食べるだけになっていて、疲れていたのでありがたかった。
「環、ひっくり返すの上手だよね」
「りっくんも、やってみれば?」
「そうだよ、コツがあるんでしょ?環くん」
「二人ともやめてくださいよ。七瀬さんにそんな危険なことすすめないで下さい。」
こういう何気ない日常を、これからも大切にしていきたいな。
陸と一織がいがみあうのを見守りながら、そんなことを思った。

Re: (2+8)×3 = ?【 アイドリッシュセブン】 ( No.4 )
日時: 2018/01/19 23:36
名前: 深海蒼 (ID: 0apRgaLj)

ある日のこと
「………はぁっ」
局の廊下を歩く足取りは重く、どうしても目線が下がり気味になる。原因はわかってるし、こんなの気にしても仕方のないことなのだけど、でもやっぱりコンプレックスにも直結してて。
゛三月くん。アイドルやってるときよりバラエティーのが面白いわぁ゛
先程共演者の芸人さんに言われたのだ、俺はアイドルより、やっぱりこちらの方が向いているのだろうと。…いや、あの人はアイドルである俺を貶したわけではないことは理解してる。けど本職の人からみても、俺はMCの方が向いているのかと思うと…。
とぼとぼと楽屋までの廊下を歩く。誰ともすれ違わないので人目を気にすることもなく、ため息をこぼせるのは少しありがたかった。


ごそっとポケットを探ると、目当てのものが手にあたる。目の前には喫煙室の扉。普段からそんなに吸う方では無いのだが、時々思い出したかのように吸いたくなる。なかには誰もいないので、遠慮なく煙草をふかした。
「…ふー。」
まぁ、吸いたくなるのはきまってこんな風にぐるぐるしてる時なんだけどな。
肺いっぱいにメンソールやニコチンなんかを入れて、味わう。吐き出した煙と一緒にこんな不毛な悩みも消えてしまえばいいのに。
そう思ってぼーっとしていると、誰かが入ってきた。
……って
「八乙女?」
「和泉兄。偶然だな、おまえも煙草吸うのか」
「まぁ、たまにはな」
八乙女である。煙草を箱から出して火をつける動作までいちいちカッコいい。駄目だな、今日は多分こいつと平静に話せない。妬んでしまって嫉んでしまってきっとお互いのためにならない言葉しか吐き出せない。
「…俺、もう行くな。また今度飲みにいこーぜ」
ちょうど吸い終わりそうだったので、灰皿に押し付けて揉み消すと、扉の近くに立っている八乙女の脇を通って出ていこうとする。…が、何故か八乙女に腕を掴まれて、阻止された。
「は?ちょっ、なに」
「…」
八乙女は、何がしたいのか無言で俺の頬をつまんだ。そのままむにむにともむ。それだけじゃなくて、何故か顔中の筋肉をぐにぐにと指先でいじくられる。ひたすらに無言無表情なので真意がわからなくて怖い。流石にひりひりしてきた頃、ようやく八乙女は俺を解放した。
「何すんだ!」
「何かあったか」
抗議なんてどこ吹く風で、唐突に、それだけ聞かれた。言葉が詰まって返事に窮していると、八乙女にとんっと指先で額を押される。
「何があったか知らねぇけど、そんなこの世の終わりみたいな顔してんじゃねーよ。」
そんな顔をしていたのだろうか。自分のことは自分じゃ見えないから、八乙女の言葉を否定することもできない。そのまま黙りこくっていると、八乙女の手が再び伸びてきて、俺の髪をぐしゃぐしゃにする。
「わっ、」
「おまえは笑顔がいいんだから、笑えよ。ステージの上の笑顔を、収録中の笑顔を、いつでもだれかに届けんのが俺らの仕事だろうが。…ほぐしてやったから、ちゃんと笑えよ」
手荒だった八乙女の手つきが急に優しくなる。撫でながら乱された髪を整えられて、八乙女の手の重みをはっきりと感じた。
「…あ、やべ。休憩終わる。じゃ、またな」
「お、おう…」
八乙女はそれだけ言って喫煙室から出ていった。
…そっか
そうだよ、笑顔をいつでも届けるのが俺たちの仕事だ。アイドルである以上、それがどんな形であっても、ファンを喜ばせられるなら何でもやってやろうじゃんか!手段なんて関係ない、俺に合った、俺の得意なことで、みんなを幸せに出来ればそれでいいじゃんか!
ふっきれて、とりあえず気合いをいれようと両頬を自分でたたく。パアンッと良い音がして、痛かったけど、これでまた笑えそうだ。
けど
八乙女の手の温もりが、何故かいつまでも髪に留まって消えてくれないことには少し戸惑った。


Page:1 2



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。