BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- CHARISMA
- 日時: 2018/02/25 17:35
- 名前: 弓雷斗 (ID: KYfV.KBV)
完全オリジナルです。
結構前から考えていた奴だから、受けくんの名前をうっかりペンネームにしてしまったことに後悔。ここでの雷斗は私のことではない。だけど、このペンネームを使っていくことにする。
三神 魁(15) みかみはじめ
容姿:黒髪にちょっと鋭い大きな目、高い鼻、赤くて小さな唇、その左下にホクロ。ちょい昔のホラー漫画に出てきそうな美形。
一人称:俺
性格:正しくないことは正しくないと言い切る。愛に盲目。ルールにルーズ。
家:極道の2代目。
弓 雷斗(15) ゆみらいと
容姿:刈り上げたチョコレートケーキ色の髪、程よい攣り目、つんとした鼻、カッパ口。
一人称:僕
性格:常に客観性を忘れない。賢い。割とポジティブ。
家:F1レーサーを父に持ち、人気漫画家を母に持つ。
タイトルは「カリスマ」
前々からカリスマ性漂う少年二人の話を書こうと思っていました。でもどっちかっつーと雷斗の方がそう。魁は拳と権力に物を言わせる感じがなきにしもあらず。
- Re: CHARISMA ( No.1 )
- 日時: 2018/03/04 19:04
- 名前: 弓雷斗 (ID: r7gkQ/Tr)
「なあ、魁」
「どうした、雷斗」
僕は今、彼の運転する車の中で、ぬるいコーラをすすっている。無論、無免許運転だ。
「君が吸ってる銘柄、何だっけ」
「俺?KENTだよ。親父はLARK。去年、親父の目を盗んで一本吸ったら、すごく気分良くなって。そんときゃまだ、お前みたいなやつはいなかったからな」
「僕がいたって、吸う癖に?」
「はは、まいったな。ほんとお前には頭上がんねえよ」
その小さくて上品な唇にシガレットを咥えながら、ぎゅんとカーブをきる。
いいなぁ。
本当、こういう瞬間に、お前と友達になれてよかったと思うよ。
同時に出逢わなかったら、って考えるとちょっと怖くなるほどに。
だって、喫煙も無免許運転も、君にとっては優雅な戯れに過ぎないんだから。
それに加担しているときのエクスタシー。
出逢わなければ分からなかったろうな。
なあ、裏社会のプリンス様。
「今日は何処に行くの?」
「高速道路は通れねえからな。海、いくか」
「いいね」
「俺、結構飛ばしてるし、乗り心地最悪だろ」
「いや、最高さ。父さんの運転とは比べ物になんないよ。ほんと、公道走るなって、毎回思う」
「お前の親父さんの走りは最高だぜ。まさに風だ。どうよ?今シーズンは」
四車線を難なく運転する君には、F1レーサーの父さんもかなわないよ。
「さあ。でも必死だよ。獲らなきゃ母さんの紐だからね」
「紐か、お前のおふくろさんも美人だからな。女優業に進出すればいい」
「無理だよ、ああ見えて一途でね」
ほんと、朝、裸同然で父さんと寝室から出てくるのは教育上よくないと思う。
「でも弓財団の資産は莫大だろ。お前の親父さんのとこには……」
「んあぁ、もう、そんなもん、ないない。勘当されたようなもんだから。5兄弟の末っ子だし、落ちこぼれだもん。医者になれって言われたのに、なんなかったからな」
「風になることを選んだ、か。かっこいいな」
「君の手にかかれば、陳腐な歌の歌詞も文豪の小説になるね」
「あんまりおだてんな、お前の財団とはコネクト、もつ気ないからな」
「分かってるよ」
そんなことわかってるさ。
君は高貴な存在だ。
気高くて。
金づるや門地のような、そんな雑な枠組みで決められた『品』じゃあない。
生まれ持った『品』が漂っている。
天は二物を与えた。
- Re: CHARISMA ( No.2 )
- 日時: 2018/03/09 14:42
- 名前: 弓雷斗 (ID: Mb8u4qok)
「海なんて久しぶりだなぁ」
雷斗は、良いデザインのスニーカーを脱ぎ捨てて、駆け出した。
やれやれ、また雪次に怒られるかな。
だって乗りたいもんは、乗りたいんだもんなぁ。
第一、俺は三神敬弥の息子だ。お前らの頭の息子だぞ。
レクサスなんて、俺が乗るくらいがちょうどいいんだ。釣り合ってる。
「雷斗!」
「何?」
「このスニーカー、かっこいいな!」
「そのブランド、父さんのスポンサーなんだ。いわば、ナチュラルな宣伝」
お前はそういうところが、悔しいくらいかっこいいよな。
流石、疾風の息子。
顔やスタイルがいいだけじゃない。
人を分け隔てしないところが、最大の魅力だ。
とりわけて、何かや誰かを嫌いになったり、好きになったりするわけじゃない。
だけど、俺にだけは、なんでも言ってくれる。
同じことを考えてるんだろ?
そうだよな。
お前と話して釣り合うのは俺だけで、俺と話してて釣り合うのはお前だけ。
覚えてるか、出会った時のこと。
今では誰も使わない旧校舎の図書館で、教師の目を盗んで煙草を吸っていた時だ。
どうせ誰も来ないだろう。
もし見つかっても、口をふさいでやる。
「げほっ、ごほっがっ」
誰だよ。舌打ちをして振り返ると、そこにいたのは、お前だったんだ。ふざけた髪の色をしていると思った。薄い赤茶色だ。俺はチョコレートケーキ色と呼んでいる。今ではこの色がとても好きだけど。
「ここ、埃すごいよね」
「嘘つけ。俺の煙草だろ?」
「違うって。っていうか、煙草吸うんだ。ふ〜ん」
こいつ、なめてんのか。
「やくざの息子が煙草吸うのはふつうか〜、って感じか?」
「え、そうなの?」
「あぁ、俺そういうの嫌いだわ。変な嘘つくなよ」
「嘘なんかついてないってば。今君を初めて知ったもの。自慢させてもらっていいのなら、僕だって、弓孝平の息子だよ」
え……。俺の好きなレーサー。
「へん、つまんない嘘つくなぁ」
「嘘じゃないよ。君、僕の言うこと全部嘘だと思ってるんだね。心外だな。僕の父さんがレーサーやってるから、この学校これたんだよ。でなきゃ、僕なんて、清明学園、無理だよ」
- Re: CHARISMA ( No.3 )
- 日時: 2018/04/12 18:58
- 名前: 弓雷斗 (ID: 3rsK9oI3)
俺は、その一言で、ひどくこいつを気に入った。この学園は確かに教育水準が高い。この学園に入るのは、金のある名門の家や、恐ろしく頭のいい庶民だからだ。俺は名門といった聞こえのいいではないが、やらしい話金は山ほどある。
はっきり言って、「仲間」だった。
最初から。
「でなきゃ、僕なんて、清明学園、無理だよ」
奴のこのセリフは、「謙虚」なんていうありふれたもんじゃなく、「自己理解」的な響きがあった。面白いじゃんか。ここで俺はさらに試すみたいに、意地の悪いことを言おうと思った。
「へえ、じゃあお前は『たかだかレーサーの息子ごときが君に何かを咎めるなんて、無理です』って、そういうことか?」
思わず、嫌みなほど口角がぐいっと上がった。俺はよくこの笑い方をして、先輩方ににらまれる。
腹を立てるか。
気分を害するだろうか。
いや、こんくらいで怒ったらダサいぜ。
意外にも奴は、間の抜けた笑顔で返した。
「君、意地悪だね。それに、変わってる」
「変わってる?」
「……僕、弓雷斗」
雷斗は上目遣いで、おもむろに手を差し出した。
「はっ、どういう意味だよ」
「ヤクザの息子ってのは、そんなに馴れ合わないの?」
「……なんでお前はここまでの扱いされて、そんな態度取るんだ?」
「君のその扱い、僕に興味がありたげだから」
こいつ……。
明らかに他の奴とは違う。
安い形容じゃない。
そうだ。
俺はお前に興味がある。
「負けたよ」
俺は雷斗の白い手を握った。
お前は徐々に嬉しそうな顔して、誰もいないというのに声を潜めると、
「誰にも言わないよ」
親父さんそっくりのウインクをした。
また魁が虚空を見つめている。コーラを飲むその手は動いているけれど。これは彼が何か考え事をしているときなので、敢えて何も言わない。
あの日は本当に、ビックリしたよ。魁。
君は覚えててくれてるかな。
君は記憶の断捨離が本当に上手い人だから。
まあ、出会いなんて、今となっては、ただの通過点だったかもしれないけど。
あの埃臭い古書堂(図書室だけれど、市立図書館と同じくらい大きいので僕はこう呼んでいる)で、鼻を突いたタバコのにおい。
先生かと思って、一瞬萎えたんだ。
僕はどうも馴染めずにいた。
気が悪いかもしれないけど、この学校は頭の良さをひらけしてるような人たちの巣窟みたいに感じたからだ。だからって、極端に皆謙虚なんて、気味悪いだけだけど。
だから一人になるために、あすこへ来たのだけど。
- Re: CHARISMA 目つき ( No.4 )
- 日時: 2018/05/02 21:31
- 名前: 弓雷斗 (ID: pYv9VleS)
忘れそうな節を書いておきたいです(゜∀゜)
すみません。スマホだとハジメが変換できないのでハジメで行きます。ほんとにショートショート。
「三神さん、あなた目つき悪いわよ」
音楽の先生が、言った。
「三神くんって、かっこいいけど、目つき悪いよね」
「あいつは荒れてるけどイケてるよな。目つき悪いけど」
しょうがないだろ。
親父から継いだんだ。
親父の殺人級の目つき。ひと睨みで犬も死にそうな鋭さ。
廊下ですれ違っただけで、驚かれる。
うるさいな、黙ってろよ。毎回思う。
これは俺が生まれ持ったものだ。偏見は良くないだの、人の身体的特徴を否定しちゃなんねえだの作文に書くくらいなら、黙ってろよ。矛盾もいいとこだ。
今日はひときわ苛々しながら、うちの社会の先生が大事にしている庭園に向かう。
雷斗に会うまでは、俺の苛立ちは消えそうにないから、自然と早足になる。
薔薇のアーチを抜けると、あの赤茶色が見える。
「雷斗」
雷斗は白い椅子にもたれて俺を待っていた。その性格なら、お前と昼飯を一緒に食いたい奴はいっぱいいると思うけど。必ず一人で俺を待ってくれている。
「今日は遅めだったね。追試?」
「音楽のな」
「どうして?君は歌上手いじゃない」
「歯のヤニとか息で喫煙バレたら面倒だからな」
「ああ、なるほど」
結構そういうところ、律儀だねハジメ。音楽、取らなきゃいい話なのに。しかも、いつも君のお母さんが作った弁当を持ってきてるね。食堂でなにかをテイクアウトするわけでもなく。
「なあ雷斗」
「なに?」
「俺、目つき悪いか」
「いや別に?」
雷斗の返事が思ったよりシンプルなものだったので、思わずふはっと笑ってしまった。
「なんで?」
「いや、いろんな奴に言われるし、事実親父も目つき悪くてさ」
「僕だってつり目だよ。父さん譲り」
「そうか?俺にはそう見えない」
「僕だってそうには見えないよ、ハジメ」
......。
ハジメったら、そんなこと悩んでたんだね。僕は少し嬉しい気がする。
だって、君ってば完全無欠な感じするんだから。あるべき場所に、在るべき形の部品の集合体みたいな、ね。
「俺の親父......お袋といるときはものすごく優しい目をしてる」
「君といるときは?」
「そりゃ勿論優しい目してるよ。当然だろ。血を分けた親子だ。他の親がどんなかは知らねえが、息子に心を許さない親なんかいねえ。少なくとも俺の親父は違う」
- Re: CHARISMA ( No.5 )
- 日時: 2018/06/23 17:51
- 名前: 弓雷斗 (ID: 9XZqZQ8s)
「じゃあ君も、僕といるときは優しい目をしてるって、そういうことだよね」
なんとなく、聞こえないフリをした。
そういうことになる。
別に、そういうことで、良い。
俺の顔を覗き込んで、口角をあげる雷斗が視界に入った。不意に雲がかかって、その視線は天井に注がれた。
「あ、雨だ」
徐々にたちこめる雨のにおいに、母さんの誕生日を思い出した。
台風の夕方
「ねえ、魁。君は、友達のやめ方って、わかる……?」
雷斗が本棚越しに、唐突に聞いた。俺たちは台風でみんなが早引きした後の古書堂にいた。何を読みに来たわけでもない。そもそも、停電で読めやしない。ただっぴろいこの中は、唸る風と横殴りの雨の音、そして互いの気配だけだ。誘惑も何もない。二人で何気ない会話をするには絶好の環境だ。尤も、会話なんていらないんだけどな。
「分かんねえな、友達、作ったことねえから」
皮肉った。でも事実だ。
でも雷斗のことだから、きっと「え、ほんとに?」とか聞くんだろうな。
「え、ほんとに?」
「そもそも、なんでそんなこと聞くんだ?」
「待って、僕は君の友達に入ってるんだよね?」
雷斗は焦ったように、本棚越しにひょこっと視線を合わせてきた。バカだなぁ。あの答えが欲しいってか?そうはいかねえよ?
「ふん、まあな。でも」
「でも?」
雷斗の程よく吊り上がった目が、答えを乞う。いや、シンプルに。
「俺が作ったわけじゃない」
「あ、んもぅ!」
「あぁ、はっはっはっ」
まあ、怒るなって、雷斗。ここからが本題だ。お前がほんとに欲しがってる、セリフ。
「じゃあお前、俺がお前と友達やめたいって言ったら、どうする?」
「やめるさ」
「え、ほんとか?」
雷斗は一本取り返したような顔をした。くっそ。
「まあ、妥当だろうな」
「ん、ふ、ふ、焦ったでしょ?」
「なんで、やめるって即決できる?」
「あ、逃げた」
「俺だってやめる」
「え、なんで?」
「なんででしょう」
雷斗はムッとした。
「先人たちに学べって。ここは先人の知識の宝庫だぜ?」
「知ってる人、いるのかなぁ」
それからは、ただ雨の音と、風の唸りだけが収まる気配もなくわめいているだけだった。
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