BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 【おそチョロ】桜咲くころに
- 日時: 2019/01/03 01:56
- 名前: イッチー (ID: hg1Gx/0a)
それは春の始め。そう桜の咲く季節だった。
町全体が明るく、淡くピンク色に染まっていた。
僕は今、カラ松がよく逆ナン待ちしている橋にいる。
橋の下を流れる川には桜の花びらが浮かんでいた。
「…僕の恋も桜みたいに淡いピンク色だったらよかったのに」
—僕は気がついたら「人の恋の色」を見ることができるようになっていた。
幸せそうなリア充は綺麗な赤色の「愛の色」をしている。
片想いをしている人は桜のような淡いピンク色の「恋の色」をしている。
—そう、僕はある人に密かに想いを寄せている。しかし、僕の恋の色は淡いピンク色とは程遠い色だった。ほぼ黒と言ってもいいようなどす黒い赤だった。
黒に近い赤色。それはとある一部の人にしか見られないのだ。
…「同性愛者」にしか見られないのだ。
かといって僕が男に好意を寄せるかというとそうではない。僕の場合、好きになってしまったのがたまたま男なだけで、その人以外の男を見ても何とも思わない。ただ、他と比べると少し特殊だと思う。なぜなら—
僕が恋してしまったのは家族であり、兄弟であり、相棒である「松野おそ松」なのだから
僕は何回もおそ松の恋の色を見ようとした。しかし何回挑戦しても見えない—いや見えるのだがまるで水の膜が張っているかのようにぼやけていて分からないのだ。
『あいつは好きな人とかいるのだろうか』,『あいつは僕の恋心を知ったらどう思うのだろう』
『…僕があいつの恋の色が分からないのは僕が嫌われているからだろうか』
こんな事ばかりが心の中で渦を巻く。
そのうちに僕の恋の色はさらに黒くなっていた。
「もう、こんな恋なんて…捨ててしまいたい」
つい、ポロリと言葉が出ていた。しかしこの言葉のおかげで奇跡が起こったのだ。
—目の前に置かれた薬を見つめる
「ホエ…本当にいいんダスか?」
「うん、もういいんだ」
僕は薬を口に放り込み、飲み込む。すると胸のあたりが赤く光り、コトリっと綺麗な赤い石が落ちた。
「デカパン、これは?」
「ホエ…これはチョロ松君の恋を取りだし具現化したものダス、大切に扱うんダスよ」
「…分かったよ」
僕はその石を箱に入れ家へと帰った。
「ただいまー」
「おけぇりぃ〜」
っと間抜けな返事が返ってくる。どうやらあいつ一人のようだ。
居間へ入り、テレビの前へと座る。
もう僕には悩む必要はないと思うと嬉しくなる。
「なーに一人でニヤついてんの〜お、この箱開けていい?」
「ニヤついてねーよ、開けてもいいけど大切に扱えよ」
「わかってるってぇ〜」
おそ松は言われた通り慎重に箱を開ける。手がプルプルしていておもしろい。
「お、なにこれ宝石?」
「ううん、そんな大層なものじゃないよ…」
宝石と比べるなんてできないくらい汚い。黒く、汚れてしまった恋なんてお世辞にもきれいとは言えない。
「そお?俺は綺麗だと思うけどな〜」
こいつは何を言っているんだ?この恋のどこが綺麗なんだ?汚れて、黒くくすんでしまったこの恋が綺麗だと言うのならば、あいつの目は節穴だ。
「そ、そう?よく見ると汚いよ」
そう、汚いのだ。綺麗とは程遠いくらい汚いのだ。
さあ汚いと言ってくれ。これで僕の恋はようやく終われるのだ。さあー
「俺はこの色、好き」
「っ—!!」
なんで、なんでそんなこと言うんだ。やっと…やっとこの汚い恋を捨てられると思ったのに…
そんなこと言われたら—
「…捨てようと思ったのに、捨てられないじゃんか…!」
ポロポロと涙が零れる。捨てられない、捨てられる訳ない。
「…うん、捨てなくていいんだよ」
あいつがそっと僕の涙を拭う。
捨てなくていい?あいつはこれが何なのか知りもしないくせに…
「それが何かも分からないのに、無責任なこと—」
「知っているよ…お前の恋心だろ?—俺に対する恋心…違う?」
なんで、なんで分かるの?僕ずっと隠してきたのに
声には出なかった。でもあいつは応えてくれた。
「さっきデカパンから電話が掛かってきたんだよ
『チョロ松君がおそ松君に対する恋心を捨てようとしてるダス…!』ってな」
嗚呼、じゃあデカパンに言われたから止めたんだ
…少し落胆してしまうのはなぜだろう
「…なーに勘違いしてんのか知らねーけど、止めたのは俺の意思だからな」
「…え?でも、それ、お前に対する—」
「あーもう知ってっから!」
ぐいっと腕をひかれる。咄嗟に目を瞑ってしまう。
次に目を開けるとあいつの色で視界が溢れていた。
—抱きしめられている…
そう意識すると同時に顔に熱が集まる。
「なっ…!おまえ、なにすっ…!」
「ん?抱きしめただけ〜」
さらにギュッと抱きしめられる。
ドキドキしすぎて心臓が爆発するのではないか
「チョロ松…」
「な、んだよ」
「俺ね、チョロ松のこと好きなんだ…恋愛対象として」
「へ…?」
頭が真っ白になる。あいつが…おそ松が僕のこと、好き?恋愛対象として?
—恋愛対象として…少しずつ理解することができた。途端に涙が溢れる。
「ふっ…ひぐ…」
「もぉ〜また泣いちゃって〜」
先ほどより優しく、僕の涙を拭う。
しかし涙はとめどなく流れる。
「泣くほど、嬉しかった?」
『うん…!』
声にはできなかったが大きくうなずく。
「おそ、まつ…グスッ」
「ん?どーしたのチョロ」
今度はちゃんと気持ちを伝えよう。
捨ててしまう前に、諦めてしまう前に
「ぼくも、おそ松が、好きっ…!」
僕の恋の色が綺麗な赤色—おそ松の色へと変わる。「恋の色」から「愛の色」へと変わる。
でもすぐに見えなくなった。もう必要ないのだろう。
「俺と付き合ってくれる?…後悔、しねぇ?」
「誰が後悔するか、それに—お前についていけるのは僕だけだから」
二人だけの秘密のように、静かにキスをする。
僕は密かに心の中にで思う。
『同性愛者だろうと、兄弟同士だろうと関係ない。リア充に負けないくらいの「愛の桜」を咲かせてみよう』っと—
END