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- 小野寺と桐山
- 日時: 2019/09/06 21:56
- 名前: ナビ (ID: uqFYpi30)
たまに同じ大学で校内を歩いてる姿を見かけた。
二人の時もあれば三人から四人で歩いてる時もあって、その中に女性を見かける事は無かったから男友達とつるむのが好きな人なんだろうとは思っていたが、中でも顔が整っているその人に目を奪われた。
ただ容姿が美しいというのもあったけれど、楽しそうに歯を見せて笑うその人の笑顔は周りまでも光を放つようだった。
俺は俺で顔や容姿が良かったから人気はあったけど、あんなに美しい人は初めて目にした。
何人かの女の子と付き合ったけど、疲れないわけじゃない。溜まった不満を誰かに話したかったーーー・・・
ただ、それだけだったはずだ。
翌朝、目が覚めると見慣れぬ部屋に、ベッドの下には脱いだであろう衣服と鞄。
下着姿で寝ていた自分と、隣にはあの容姿の綺麗な人が自分と同じ姿で肩まで布団を被ってスヤスヤ寝息を立てていた・・・ーーー
ーーーーーーーーーー
第一話「小野寺と桐山のはじまり」
(>>1,>>2,>>3,>>4,>>5,>>6)
第二話「普通じゃない桐山」
(>>7,>>8,>>9)
- Re: 小野寺と桐山 ( No.3 )
- 日時: 2019/09/03 12:52
- 名前: ナビ (ID: 0H2MybmK)
ハッとして振り返ると、自分と同じく下着一枚のその人はゆっくりと瞼を持ち上げ、俺を見ると数回瞬きを繰り返し、被っていた布団を持ち上げて、上体を起こそうとする。
目が合うと射貫かれたように視線が外せなくなり、その人の行動一つ一つがとても貴重なものを見えているようで、頭で何も考えられなくなり目で追ってしまう。
「んー・・・いたっ」
「・・・え・・・?」
「ん?」
上体を起こした途端にその人は小さい悲鳴を上げて片手で腰を抑えた。
ホテルの一室で二人仲良くベッドで眠った、酒に酔って記憶のない頭、下着一枚の二人、一人は腰を痛めている。
その行動が指す意図とは・・・
酔いの醒めた頭は瞬時に理解してしまう。
血の気が引く頭で信じられないものを見る目をした。
その人は、まだ働かない頭で、後頭部を軽くかいて俺の方を見て片眉を上げて首を傾げた。
俺はその人に向き直り、ベッドの上で正座して両手と額をベッドに付けながら謝罪を言った。
「すいませんでした!!!」
- Re: 小野寺と桐山 ( No.4 )
- 日時: 2019/09/04 11:23
- 名前: ナビ (ID: 0H2MybmK)
俺はヤッてしまったんだと思った。
同性の男相手に夜の行為を・・・酔っていて記憶が無いとはいえ、やってはいけないことをした。しかも相手が憧れの人だなんて!やましいこと思ってたみたいになるじゃないか!
というか、なんであの飲み会に参加してたんだ?なんで俺と?この人は酔ってなかったのか?
頭をベッドに押し付けながら悶々と考え事をしていると頭の上から声が聞こえた。
「どうして謝るの?」
(低っ!)
まだ眠たいのか、ゆっくりとした口調で問われた言葉は低めのハスキーボイス、誰が聞いても男性の声だと分かるのだが、顔が中性的なこの人には似つかわしくない声に驚いて俺は思わず顔を上げる。
(くっ・・・!)
顔を上げるとその人と目が合う。布団を下半身に掛けたまま、両膝を曲げて体育座りをして、美しい女神の様な顔が立てた両膝に頭を預けるように軽く首を傾げた。それだけで苦しくなった胸を抑えるように胸のシャツを掴んで、顔に熱が集まるようでまたベッドに顔を埋めた。
俺がそんなことをしてても、気にせずこの人は俺がさっきまで考えていた悩みの種を解決させる発言をした。
「なにもなかったよ・・・?」
「ふえっ?」
また驚いて顔を上げれば、目の前の人は気まずそうにするでもなく、頬を赤らめるわけでもなく、ただ当たり前の事を言うかのようにキョトンとした顔で俺を見据えていた。
俺は思わず、間抜けな声が出た。
- Re: 小野寺と桐山 ( No.5 )
- 日時: 2019/09/04 11:58
- 名前: ナビ (ID: 0H2MybmK)
(なにもなかったって、なにが?)
聞いた言葉を復唱して疑問を消せず眉を寄せる。
(なにもなかった、はずがない。こんな状況で)
俺の考えを読み取るかのように彼は後頭部を掻いて唇を尖らせ、うーんと唸って何から話そうか考えてポツポツと話し始めた。
「混乱するだろうけど、その、変な事とかはなにもなかったから」
「えっ?」
「昨夜は皆と別れて家の方角が同じだった俺とお前で帰ることになって、フラフラのお前が途中で帰りたくないって道端に座りだして、タクシー呼んで乗せても住所忘れましたとか言い出すから・・・」
(うわー、何やってんだよ俺・・・酒に呑まれて駄々こねたのかよ、恥ずかしい)
話を聞いてて、恥ずかしさと呆れに頭を抱える。彼は話を続けた。
「近くのホテルまでおぶって部屋借りたんだけど部屋に着くなり、財布が無いって慌てて服を脱ぎ始めて」
(何で服を脱ぐんだよ・・・酔った俺って相当バカなの?)
「俺も疲れてたから寝ようとベッドにダイブしたら、下着姿のお前が自分の身に財布が無いからと思ったからか俺を疑いだして、殆ど無理やり服脱がされた・・・」
「ごめんなさい・・・(この人が警察に言ったら、オレ刑務所行き決定じゃん)」
落ち込んでる俺を慰めるように彼は言う。
「あ!でも、俺も下着姿になった時に財布持ってないって通じたから、安心して二人で寝たよ!」
(うわー、可愛い笑顔・・・可愛いってなんだよ!違うだろ!というか、安心して二人で寝るのもおかしいから!・・・酔ってたから疲れてたのか)
はあ、とため息をついて肩を落とす。自分の失態になんと詫びを入れたら良いか、発言を聞くだけでも話したことのない初対面のやつとホテルで寝れるこの人も相当変わり者だと思う。
今なんて、喉が渇いたからとサイドテーブルに置いた俺の飲みかけのペットボトルの水を取って、平気で飲むんだから。
(当たり前のことのような言動が当たり前じゃないことを知らないのか?本当にそれだけ?何も無かったのか?こんな綺麗な人と)
- Re: 小野寺と桐山 ( No.6 )
- 日時: 2019/09/04 12:45
- 名前: ナビ (ID: 0H2MybmK)
「それじゃあ、腰を痛めているのは・・・何故?」
「お前おぶってる時に痛めた・・・だってお前重いんだもん」
「すいません・・・(だもんとか言わないで!可愛いから)」
筋肉の無さに悔しそうに頬を膨らませた彼に愛くるしさを感じる。一つ一つの言動が幼くてまるで小動物を見ている気分だ。
だが、話を戻せば全て解決したように思う。俺は何かが引っかかる。これで解決したのにまだ何かあるんじゃないか、とか、あってほしいって思ってるのか。
ベッドから出て、服を着始める彼に少しでも繋がりが欲しかった。
「あの!俺、小野寺って言います!」
「うん、よろしく」
「・・・お名前伺ってもいいですか?」
「おれ?」
「はい(今、俺と貴方しかいませんよね)」
「きりやまって言います!」
一瞬考える素振りが見えたと思ったら、緊張して名前を報告しただけみたいになった俺の言動を彼は真似て見せた。俺をからかっているようだ。なんだかムッとして問い正す。
「なんですか、それ。俺の真似ですか?」
「ふふっ、うん」
「似てませんね・・・桐山さん、よろしくお願いします」
「そんな硬くなんなくていいよ、よろしく、小田切」
「小野寺です」
「ふふっ」
優しく微笑む笑顔に、大学で見た楽しそうに笑む彼が重なる。わざと名前を間違えて、俺が訂正すればまた嬉しそうに笑ってくれる。人見知りの俺とは違って人懐っこいんだなと思った。
自分が着替え終わっても俺が着替え終わるまで待っててくれているように、話をしてくれる。
「この間、できたケーキ屋のイチゴタルト美味しかったよ!」
「へえー、一人で行ったんですか?」
「ううん、ニッタさんとミナミと三人で!ああ、美味しかったなあ、また行きたい!」
「・・・(誰だよ、ニッタとミナミって!)」
「あの付近にはチェーン店が少なくて、確か二軒先のラーメン屋も美味しいってニッタさん言ってたな」
「(ニッタさんって人とよく一緒にいるのかな?)」
「ラーメン好き?」
「え?ああ、はい。食べますよ」
「じゃあ、今度行こ!」
「え、いいんですか?」
「イヤ?」
「いえ、行きたいです!」
「じゃ、決まり!来週の土曜日お昼って空いてる?」
「はい!」
「よし!じゃあその日で」
その日にアドレス交換もしてくれた。とても社交性のある人で話題もコロコロと出てくる。会って数分の人と次会う約束までしてくれるなんて、少し危険ではありつつも桐山さんとの繋がりを感じられたようで嬉しくて誘いを断る無粋なことはしなかった。
その後は、チェックアウトを済ませて、用事があった桐山さんとは別れてタクシーで帰った。
- Re: 小野寺と桐山 ( No.7 )
- 日時: 2019/09/05 03:17
- 名前: ナビ (ID: tDifp7KY)
翌日、大学では何も騒がれることは無かった。
どうやら、俺と桐山さんがホテルに入る所は誰にも見られなかったらしい。桐山さんなんて、今や校内中、見知らぬ者は居ないぐらいアイドル的存在なのだから、そんな人と二人でホテルに一泊したなんていいネタに使われるだけだ。
あれからしばらくは、桐山さんを見かけることは無かった。
なんとなく、同じ学年でないことは分かった。
俺は彼女とあんまり上手くいかずにすぐに別れてしまった。それでも何故か悲しくなかった。
桐山さんから貰ったアドレスにショートメッセージを送ってみた。
《今日、来ますか?》
既読と着くまで見ていられず画面を下にして講義を聞いていると返信は案外早く来た。
《お前ん家知らない》
「は?」
一瞬、思考が停止する。自分が送ったメッセージを読み返して一気に顔に熱が集まった気がして、それと同時にどうしてそんな思考になるのかとやるせない気持ちになる。
慌てて、訂正文を送る。
《そういう意味じゃないですよ!》
《うん、知ってる》
《大学に来るかどうかって意味です》
《うん》
俺が打ってる最中に、返信が返ってくる。打つのが早いなと感じながら、次のメッセージが来るか待っていると
《もうすぐ着くとこ》
と返ってきた。淡々としたメッセージのやり取りだったにも関わらず、憧れのあの人としてるんだと思うと優越感を憶えた。どんな表情で、どんな気持ちで送ってくれたのか分からないけど、すぐに返信が来るだけでも俺とやり取りしてる時だけは俺との時間を過ごしてくれてるみたいで俺は嬉しくて思わず顔が綻んだ。
(ああ・・・早く会いたいなあ・・・)
スマホを胸に抱きしめて、意味もなく天井を見上げた。