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- ボンボンと凡人
- 日時: 2019/10/08 02:11
- 名前: タニエノサ (ID: ak9ikTR3)
小学低学年の時に出会った二人。
名前も知らず、住んです場所も年齢だってお互いに知らなかった。
「大人になったらオレと結婚してくれませんか」
「・・・いいよ、約束ね」
「うん!」
ただの子供の口約束を聞き届けてくれたのは二人の間に居た子猫だった・・・
それから15年の時を経て、運命に引き寄せられるように彼らは出会う。
- Re: ボンボンと凡人 ( No.1 )
- 日時: 2019/10/08 02:32
- 名前: タニエノサ (ID: ak9ikTR3)
あれは俺がまだ小学二年生の時、実家で飼っていた猫が子を産んだ。
俺の家は元々両親共に動物アレルギーで、かく言う俺は犬アレルギーだった。
唯一、育てることを許されていた猫がメスだったことと子を産んでしまって、二匹を育てることは小さい俺には無理だろうと決めつけられた。
土砂降りの雨の中、段ボールに入れられた小さな命を誰かが拾ってくれることを願いながら近所の公園の木の下に雨が当たらないように置いた。
小さく甘える鳴き声に顔を伝うのは涙か雨水かも分からず熱くなる目頭を服の袖で擦って、暫く物陰から隠れて誰か来てくれるのを確認していた。
雨に打たれて子猫が命をなくさないか心配で・・・
すると、公園に入ってきたのは俺と同じ若しくは俺より二つ下ぐらいに見える赤いてんとう虫の傘をさして、黄色い長靴で公園に出来た水溜りを踏み潰して遊んでいる小柄な子供だった。
あんなヤンチャな子が主になったら子猫は面倒見てもらえるだろうか?不安で見守る。
てんとう虫の傘が何かに気づくように真っ直ぐ子猫の元へ近づく。
その子は子猫に気づいていたのか近くまで寄ると屈んで、段ボールに雨が当たらないように傘を傾けた。
傘から見えたのは長靴と同じ色のレインコート。レインコートに付いている帽子をしっかり被っていたから顔は分からないけど、暫く子猫を眺めているようだった。
あんな自分より小さい子どもに子猫を預けては不安と心配で俺は焦っていた。
(もっと大人の人が見つけてほしい!)
その子が両膝の上に置いていた小さな手を伸ばして、子猫を持ち上げた時に俺は衝動的にそこへ走り出していた・・・
- Re: ボンボンと凡人 ( No.2 )
- 日時: 2019/10/08 02:58
- 名前: タニエノサ (ID: ak9ikTR3)
「ダメ!!」
「っ!」
そのこの前に行って大声を出すと、いきなり現れた俺にビクッと体を跳ねさせ、その子は顔を上げた。
弧を描いた眉が力なさげに八の字になって、大きな目が丸くなっていて小さい口がちょっとだけ開いてる、可愛らしい女の子だった。
それでも俺と同じ子どもだ、子猫の飼育は任せられない!
「その子を戻してっ!」
「っ、ぃや!」
前脚の脇を持って持ち上げられた子猫をその子から引き離そうと手を伸ばせば、その子は俺の手から遠ざけるように子猫の頭を自分の首元に持っていって抱きしめる。
ムッとした俺が地団駄を踏むと、負けじとその子は俺をキリッとした目で睨みつけて言った。
「ブニャダさんはもうボクと一緒に住むもんっ!」
「ダメだよ!世話できないでしょ!大人じゃないんだから、子猫を戻して!」
「やだ!ボクの!大人になるまでも、なってもブニャダさんはボクが世話するもん!」
今思えば“ぶにゃださん”ってなんのことを言っていたんだろうか、きっと“子猫”のことだろうが、あの時は必死でわけも分からず会話は成立していた。
俺はどうしても子猫を離さないその子と、子猫の命を心配して揺れ動く感情の中、一つの結論を出したのだ。
「だったら・・・大人になったらオレと結婚してくれませんか」
ハッキリ言おう!小学二年生の男子、頭は良くない。言葉の意味なんてよく知らない。
ただ、大人になるまでちゃんと世話したのか証明して見せろって挑戦したかったんだと思う。
子猫を肩口から離して子猫を見つめた後、なにか通じたのか、その子は頷いた。
「・・・いいよ、約束ね」
片手を伸ばして小指を上げたその子に、通じた嬉しさか力強く頷けば、その子は目を細めて歯を見せて「えへへ」とはにかむように笑った。
あれから15年。
- Re: ボンボンと凡人 ( No.3 )
- 日時: 2019/10/08 03:12
- 名前: タニエノサ (ID: ak9ikTR3)
記憶も薄れてしまって、憶えているのは“可愛い女の子が預かってくれた俺の猫、名前はぶにゃたさん”だ。
「ぶにゃた」か「ぶにゃだ」かは忘れてしまった。
可愛い女の子というのは憶えていても顔は全く思い出せない。思い出そうとしてもモヤがかかってるような白くその部分だけ消されてるような感覚で、猫の名前は変だったから覚えてたのに最近は細かい事も忘れてきた。
なんといったってあれから15年経っているのだ、覚えている方がすごい。
10年前、俺は両親が当ててくれた宝くじによって富豪者となった。働かなくても生活ができるようになって学校には行ったが、高校を卒業後“何でも屋”ってのをやり始めた。
そりゃあ頼まれれば品物を運ぶし、命を奪うことだってしちゃう危険なオシゴト。
金によって支配される周囲の人間に飽き飽きしていた。だから、くだらないことを貫く事で得られる楽しみもあるんじゃねえかって思い始めて、勧められるままに、相方と一緒に続けているわけだ。
- Re: ボンボンと凡人 ( No.4 )
- 日時: 2019/10/08 03:40
- 名前: タニエノサ (ID: ak9ikTR3)
俺の他に二人男が居る。
一人は、松下さん、俺の二つ上で武術を習ってたから喧嘩は強いし知識もある頼れる兄貴分。何事も“愛着”らしくて、ソレがないものは何でも傷をつけることが可能な狂気じみたものを内に秘めてる。ヤバイ依頼は彼に任せることが多い。
もう一人は、桜田さん、身のこなしが軽やかでマジシャンを目指してた時期があってマジックが上手い、詐欺系担当だ。危なくなったら任せることが多い。
俺は、比較的軽いもの。物を運んだり誰かの手伝いをしたり草刈りしたり、泥棒の家に鍵を開けて入って盗まれた物を盗み返してきたり、色々細かいことを担当してる。
他の組織もいるらしいけど、俺達は三人で行動する。
今日は「オレは有名人だから誰かにストーカーされてる、一週間見張っててくれ!」との警備の依頼。
くだらない、顔見ても誰か分からなかった。自称有名人なんだろうな、って思いながら受けるか迷っていると相応の金は出すとの条件で契約させてもらった。
今は、向かいのビルで会議中。
俺達はマンションの一室を借りて、俺がソファに座って手持ち双眼鏡で状況確認、松下さんがベッドの端に座ってスマホを観ていて、桜田さんがベッドの上で寛ぎながら雑誌を読んでる。
一日の大半が職場にいる依頼人にストーカーの気配はない。
- Re: ボンボンと凡人 ( No.5 )
- 日時: 2019/10/08 03:54
- 名前: タニエノサ (ID: ak9ikTR3)
正午を回った頃、桜田さんが交代してくれた。
疲れた目の休憩がてらベッドに体を沈めた。
「お腹空いたからピザ頼んどいた」
松下さんから軽く言われた一言に顔を上げる。
「は?何勝手にたの」
何勝手に頼んでんですか、と続けるはずの言葉は桜田さんに遮られた。
「おおー!いいね、サンキュー!」
「・・・。」
いつも陽気な桜田さんは俺の大先輩だし、知能も技術面も適う所が見当たらないので、彼がいいと言えば反抗はできない。
押し黙った俺に松下さんは口角をあげて卑怯な笑を浮かべる。
(憎たらしい笑顔だな・・・どーせ俺が払うんでしょ!)
そう思ってまたベッドに頭を埋める。
左手首に付けた黄色いミサンガはあの時の女の子を忘れないように不器用な自分なりにレインコートの色を思い出して作ったものだ。
いま、なにしてんだろ・・・あの猫、まだ生きててくれてるかな?一緒に住んでんのかな?
トロローンッ
呼び出しベルが鳴った、松下さんに「行け」と命令されるのはウザいので、言われる前にベッドから起き上がって扉を開けた。
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