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- 謝罪のオンパレード
- 日時: 2019/11/17 00:46
- 名前: くまろあてぃっく (ID: f2y8EREE)
プロローグ
「恋は盲目」とか「恋は落ちた方が負け」だとか聞くけれど、それに打ち勝つ訓練がしたいと市村隼人ここに宣言します!
25歳、会社員、普通の男で彼女なし恋人ありのちょっと変わった生き物じゃなくて普通の人間。
波乱万丈とはいかないと思うけど波のある人生だったんじゃないかなって思う。いや、死なないよ?
境地に立った今、どうすればよいのやら、困り果てているところなのだ。
事の始まりは何処だったか頭を抱えて記憶を辿ったーー
- Re: 謝罪のオンパレード ( No.1 )
- 日時: 2019/11/17 01:08
- 名前: くまろあてぃっく (ID: f2y8EREE)
ーー遡ること九年前、オレは高校一年生でそれなりに友達も出来て充実した生活を送っていた。
うちの高校には何人も顔のイイヤツが揃っていて、その中でもミスターコンテストなんかの行事で一位から三位までの人にぶち当たり告白なんてものをノリで一年間は皆がやっていた。
それは男女関係なく、その男が恋人を作ったとしても顔の良い彼らはモテるから告白は一年に留まらないという話もあった。
自分の顔はいい方だとは思ったことはないが悪い方ではないと自負してて、単純に顔の偏差値が知りたかったからこの高校に入ったけど、正直嬉しいことがあった。
それは、キレイだったりカワイイ子がいっぱい居ること!男にとってそれはとっても幸せを感じること!内気で温和な小さい子も居れば強気で長身でツンデレな子もいる、モデルやってる子が居ても分からないほど女の子の偏差値も高いし、偏差値とかくだらないものつけらんないくらい女の子って尊い存在だって思う、うん!
女の子には日々、生まれてきてくれてありがとう!って思ってるオレだけど、この十六年恋人が出来たことがなかった。
いやね、正直な話、オレは臆病者でフられるのが怖い。女の子っていいなあ、って心で思ってるけど口からは棒読みの落ち着いた声しか出ないから、クールだって凄い言われるし、単純に「可愛い」とか「好き」とかなら全然言えるけどそれだとチャラいって言われるし、上手く表現出来ないことに落ち込んで、本気の恋なんてした事がない。
引かれたり、傷つけられたりするのが怖くて足を踏み出せないでいた。
そんなオレにクラスメイトの明るい系の男子生徒が「まずは男相手で告白練習してみたらどうだ?」なんて提案してきた。
一瞬「は?バカバカしい」なんて思ったが、はたっと考え直すと「いい案じゃないか!?」と思った。その場のノリですで済むなら早い話だ。
ホントにオレはバカだったんだ……まさか、こんな事になるなんて思わなかった。
- Re: 謝罪のオンパレード ( No.2 )
- 日時: 2019/11/17 02:35
- 名前: くまろあてぃっく (ID: f2y8EREE)
もちろん、ミスターグランプリ三人に告白練習という、地獄の罰ゲーム。
彼らにはファンまでついてるから、お手を煩わせると思うと心が傷む。
一位は三年生の生徒会長さんで、真面目で優しく礼儀もあって知的な人。やっぱり頭がいいと生徒会長候補になるのかな?なんて失礼なことを思う。
あ、もちろん丁寧に断られた。
「今は誰ともお付き合いする気はないんだ」
って典型的な断り方だけど、スッキリする受け流しのような断られ方に若干傷つきつつも、こちらを思いやってくれる言い方に「ありがとうございました」と思わず腰から頭を下げてしまった。
慌てた彼に、オレまで慌てて言い忘れていたネタバラシをすると彼は苦笑いして「ほどほどにね……」と哀れむような、もう巻き込まれたくないという被害者の顔で言った。
苦労人の顔に「すいませんでした」ともう一度謝って、協力に感謝を告げて終えた。
正直、一人目で疲労困憊だったが、今から女の子に告白出来るかと聞かれると、告白を意識しただけでも足が動かないものだ。
童貞と屈辱的なワードで言われてしまうのが悔しいのに反論できなくて「二人目、なっ!」と憎たらしい笑みで背中を押してきたクラスメイト男子。あの時ほど殺意を感じたことは無い。
二人目は三位の三年生の先輩。ダンス部の部長で人当たりがよく、よく笑っていて、滑らかでキレのあるダンスの上手い先輩。ダンスのカッコよさもあるが、普段うるさいぐらいゲラゲラ笑って絶叫系や飛ぶ虫が苦手なビビりな面があるのに、ダンスをし出したら顔つきがキリッと真剣なものになるギャップが強くて、男女から人気なのだ。また、なんと言っても口が塞がらないことでも有名。
生徒会長の先輩よりは言いやすかった。告白するまでの距離もずっと喋り続けていることに関しては女の子相手にもそうなのかと聞きたくなったけど。
結果は、「うわあー、嬉しいけどごめんね?」の一言だ。棒読みだったけど感動を受けたように胸に手を当てて嬉しそうに満面の笑み、そして流れるような謝罪。断られる事が分かってるけど、なんだか出てきそうな涙も渇いた様子。先輩は続けた。
「今はダンスに集中したくてさ!よきフレンドとして、仲良くやろうよ!キミは……今年の一年生だよね?ダンス部、入らない?楽しいよ?そういえば今年は入部者少なかったから困っててさぁー、今日も放課後やってるし!すぐに入部じゃなくても」
「あぁあー!!あの、あの!」
告白をしてきた相手と肩を組み、あげくには入部へ話をもっていこうとまでする先輩、恐るべし。流れるような話のトントン拍子さに思わず大きめの声を出して、言葉を遮ってネタバラシした。
オレの大声に驚いて飛び跳ねて離れた先輩は「なになに?!どした!」と心配してきたが、ネタバラシをして謝ると、話をすぐに理解してくれて「ぁあー、なあに、そうなの?」と小首を回すように一度傾け、からかうように笑いかけられたが、どこか安堵した様子が見られた。
「それなら罰ゲームだったんじゃない?」
「……はい」
「ダンス部入部は?」
「それは、別の話です」
「入ってくれるの?!」
「いえ、入部はしませんけど……」
「なんだよぉー」
「見学には?」なんてまだ喋り続ける。ノリの良さと柔軟性は彼が好かれる点でもあるのだろう。
変に上から目線に脳内で評価してると頭をわしゃわしゃと撫でられた。顔を上げると先輩は笑った。
「ちゃんと謝れたことは誉めるけど、もうしちゃダメだぞ?」
なんて優しく目線を合わせて言ってきた。目が笑ってなかったのでゾッと血の気が引いた。ヒュッと詰まる息。
それから二人で校舎裏から教室まで歩いて途中、廊下で別れたけど、終始笑顔で口の閉まらない人だったことは覚えてる、何も返答しなくても喋ってくれていた。廊下で一人になって思う、なんだか罰ゲームがどうと言うより、あの人に嘘をついたらと思うと命の危険を感じた。
そんなこんなで二人目を終えた。
問題は三人目だった
- Re: 謝罪のオンパレード ( No.3 )
- 日時: 2019/11/17 12:32
- 名前: くまろあてぃっく (ID: f2y8EREE)
ミスターコン二位で二年生の高崎翔平先輩。童顔で大きめのクリッとした瞳は小動物を思い浮かばせ、その目に射止められると逃げられないとか。彼は勉強ソコソコだが運動が得意で負けず嫌いな性格、ルックスが良いし運動が得意な男って女の子は好きみたいで彼の周りには女の子が常にいっぱい居て、男子からは妬みの的、これが一位になれない理由だと思う。常に女の子の誰かと予定の話をしていて、大分遊び人だとも噂があるが、それでも女の子は彼の所へ行くのだ。
後押しされて嫌々向かった、今覚えばなんでそこまでして罰ゲーム実行したのか、自分の忠実さにアホさに「諦めも大事だ」と伝えてやりたかった。放課後、同じく校舎裏へ呼び出して、一人で来たことに安堵して、懇願するように言った。
「好きでした!付き合ってください!」
地獄の罰ゲームがやっと終わりを告げる時、目の前の彼は一度目を見開いて驚くがすぐに細めて微笑んだ。だが返事は予想していないものだった。
「いいよ」
「……は?」
「え?だから、つきあっても、いいですよって」
口をポカーンと開けて言葉を理解しようとしてると、何か変な事言ってるかな?って顔でクスクス笑う先輩。
いや、変だよね!?
「いや、オレ……お、男ですよ」
「俺も男だね」
「いやそうじゃなくて、嫌じゃないんですか?」
オレの言葉に彼はキョトンとした。
「え?……男は初めてだけど、なんか新しい試みじゃない?楽しそうじゃん!」
高崎翔平という男は、好奇心が旺盛で話の通じない人だということがわかった。オレのちっぽけな知識じゃ彼がなにを言ってるのか理解できない。肩を竦めてため息をついたあと、ネタバラシをした。
「へえー……女の子に告白するために男で練習……ね」
「はい……あの、お時間取らせて、すいませんでした。それじゃ」
早々に話を切り上げて立ち去ろうと背中を向ければ腕を引かれた。
「ちょっと待って、それなら俺を好きってのは、嘘ってこと?」
この人はなんの心配をしてしてるんだろうか、そんなこと当たり前に決まってる。だって、これはすべて
「はい、罰ゲームなのでーーっうえ!?わっ……」
言った直後に腕を強く引かれてバランスを崩す、気づいた時には真正面に先輩の顔、背中には冷たいコンクリートの壁、オレを逃がさないように顔の横にある先輩の両手。ビビって肩が上がる。
俯いていた先輩の顔が上がる。
「俺のこと、好きだよね?」
「っは!?」
顔はニッコリ笑顔なのに目が笑ってなくて、背中からドス黒いオーラが出てる。これをオレは昼休憩の時に見た気がする。
恐怖に息が詰まる、先輩は一度雰囲気を和らげるように軽く質問してきた。
「女の子に好きな子がいるの?」
そう言われて、そういえば居ないなと思う。居ないけど、付き合ったら好きになれる気がするし……ってオレめちゃくちゃ失礼なこと考えたってことじゃん!ただなんとなく恋人が欲しいなって……
全世界の女性に謝ります、彼女とリア充したいってだけで好きでもない子に告って付き合おうとしてました、最低なヤツでスミマセン!
いや、そもそも付き合えるかもわかんないけど。
っと、そこでハッとして質問に返事をする。
「い、いません」
「男に好きなヤツは?」
「はあ?」
「いいから答えて」
「いや、いるわけないですけど…?」
なんでこんな状況で普通に質問してくるんだろうか、怖いし近いし何考えてるかわかんないし、神に助けを乞うように両手を胸の前で合わせて指を絡めギュッと握る。早く終わらせるためにも先輩からの質問に素早く返すことに専念する。
「ふうん、好きでもない人に告白して、罰ゲームだからって許されると思ってた?」
「はい、こんなこと思っててすいませんでした」
「それで俺に告白してきたんでしょ?」
「はい、すいませんでした」
「他者をナメてんの?」
「はい、すいませんでした」
「今度は女の子に告白しにいくって?」
「はい、すいませんでした」
「俺のこと好きなくせに?」
「はい、すいませんでした」
「だったらフるよりつきあったほうが効率いいと思わない?」
「はい、すいませんでした……あ、あれ?」
半分から質問の内容も聞かずに謝罪してたら、気づいた時には、なんか違う話の流れにもっていかれていた。
「それじゃあ、今日から恋人ってことで!よろしくね」
謝罪のために俯いていた顔を上げると、にんまりと悪巧みが成功した時の笑みを浮かべていた彼。しまったと思ってももう遅い。
オレを解放してくれた先輩は「そんなに気負うことないよ、仲良くしようね」とだけ言って去っていった。
先輩のファンに殺されそうだなって察したオレは膝から崩れ落ちて空を見上げるーーなにが楽しくて男と付き合わなければいけないんだろう、あの空を自由に飛ぶ鳥になりたい。
あとから聞いた話だが、高崎翔平という人は女性とは何度も付き合った事はあるが、男ではオレが初めてだというのは事実だったらしい。
そして、女の子同様に、いやそれ以上に彼は本当に親身につきあってくれてオレはあっという間に彼を好きになったのだった。
- Re: 謝罪のオンパレード ( No.4 )
- 日時: 2019/11/17 12:52
- 名前: くまろあてぃっく (ID: f2y8EREE)
惚れやすく、染まりやすいタイプのオレはすぐに彼を好きになった。
いや、おかしい話だよ?だって同性の男を好きになるなんてさ。
先輩からくる「少しでも顔が見たくて」やら「会いたくなった」やら「さがしたよ」なんていう愛の言葉にどっぷり浸かっていた。
無償の愛にオレは幸せだった。
一年が経った時、初めて男に告白された。
オレも先輩と付き合うようになってから女子生徒から告白をされることは何度かあった、でも先輩も女の子と付き合うのをやめて、オレがたった一人の恋人だと大切にしてくれた愛を無下には出来なくて断っていた。
丸みを帯びた体型の男子生徒は先輩と同学年だって話だけど、見たことはないし暗めの生徒。
両手の拳に力を込めて、耳まで真っ赤にさせて告白してきた彼が本気なのはわかった。だから「相手がいるから、ごめん」と断った。
頷いて了承した彼が涙を流しながら微笑んだのを覚えてる。
そのことを高崎さんに話したら、嫉妬してくれたみたいで通話履歴からメールの内容と仲の良い生徒、休日の予定も話すようにルールが決まった。
束縛が強くなったなって思ったけど、高崎さんからの愛情だって思えばなんともなかった。だってやましいことなんて一つもないから。
高崎さんが高校を卒業するころ、オレ達は一線を越えた。初夜に不安はあったけど男でも身体の関係を持つことが出来ると知ったし、何度も確認してくれる優しさなんかに胸打たれて、その日から「高崎さん」を「翔平さん」に変えた。
だが、そんな幸せも長くは続かない。
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