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- Identity5【第五人格】
- 日時: 2020/01/03 17:27
- 名前: びっくり箱 (ID: ouuVQhrA)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12691
今回は二次創作と言うことで第五人格(identity5)の小説を書かせていただきます。
CPは特に考えていませんが、解釈によっては十分BLっぽいかな…と。
何かあれば即刻削除させていただきます。
また、自分の勝手な都合で削除する事もありますので、ご了承ください。
問題がある場合はお伝え下さい。相談掲示板に居りますので。
基本的に主人公が傭兵のナワーブ、準主人公及び主人公が占い師のイライとなります。
語り手、視点、問題提起は大体イライですが、主人公はナワーブです。
ハンター側の主人公はリッパー…ですかね?
まあ、中心となる人物は色々変わると思います。
最初からハンター視点の話は無いと思います。尚、視点変更はあります。
アールグレイは記念すべき第1話です。
過去捏造口調捏造更にはキャラ捏造一人称二人称捏造等…まあ酷いです。
懲りずに見ていただければ幸いかと。
- Re: Identity5【第五人格】 ( No.1 )
- 日時: 2020/01/03 16:57
- 名前: びっくり箱 (ID: ouuVQhrA)
「やあ。」
「……よォ。」
続かない会話には慣れたつもりでいる。どうしても、むず痒さだけは残ってしまうが。
元来、己は『無口』か、と聞かれれば確実にNOである事は分かっている。
とは言え、『御喋り』か、と聞かれれば、それもまたNOであるのだが。
先の戦争の為か、どうにも人間というモノを好きになれない。
酷く悲しい過去ね、と、ある女性は泣き、もう忘れろ、と、ある男性は言った。
どちらも正しい。だがな、うるせえ。
そう言いたいのを十分に堪えた、ような。或いは暴言と共に言い放ったか。
正直、その時の事は覚えていない。
軽い気持ちで話せるような事ではないし、まあ、つまり、どうでもいい。
それでも触れられたくないと言う矛盾。それこそどうでもいい。
来客は微笑みながら、手元の紅茶を啜った。ついでに菓子も勧めてやる。
悪いね、と微塵もそんな事を思っていなさそうな声色で手を伸ばした。
「実に、愉快な午後だ。そう思わないかい?」
「…………もう直ぐ午前だけどな。」
連れないなあ、なんて言いながら、カップを皿に戻した。それはもう、酷く丁寧に。
けれど、既に湯気の立っていない赤めの液体が揺れる。
それを見遣り、中々本題に入らない客人を見つめた。
おお怖い、と肩を竦める。
「そんな顔しないで。まあ、夜遅くに訪ねてしまったことは謝ろう。」
「…俺が苛々しているのはそこじゃねえ。分からないほど、お前は馬鹿では無いはずだろ?」
「参ったな。…君がそんなに舌の回る人だったなんてね。」
「喋らねえ奴の方が都合がいいと?思い込み甚だしいぞ。」
「うーん…そういう訳では無いんだけどね。まあまあ、急かさないでくれよ。」
困ったように笑いながら、もう一度紅茶を啜った。
不愉快だとか邪魔だとか、そんな事は思っていない。
唯々、本題にさっさと移って欲しいだけなんだ。そう伝えたい。
どうせ口に出さなくても伝わっている癖に、それを実行しようとしない。
性格が悪いのか、捻くれているのか、或いは…
「……何もねえんだったら一人で茶会でも楽しめ。俺は寝る。」
感情を見せるだけペースに飲まれると直感した。
だから興味を出さないように、出来るだけ関わるなと別の言葉に含ませて伝える。
そうすれば、ほら。
こんな風に表情を変え、言葉を変えてくれるだろう?
「………………君は、何も思わないのかい?」
「…は?」
唐突な質問に、思わず素が出そうになるのを抑える。
布を通して交わる視線が、どうにも気持ち悪い。
相手の表情は分からないのに、こちらの表情だけが伝わるのは些か不平等である。
真意が汲み取れれば、もっと楽にこの奇妙な茶会を終わらせられたのだろうか。
相手が、この人物で無ければ、茶会自体、開かれることは無かったのではないか。
というか、そもそも茶なんか出さずに追い返せば良かったのか。
こんな感じで、目の前の相手に思うことなら腐るほどあるのだが。
一先ず質問に質問を返してみる。
「……何に、何も思わないって?」
「そりゃあ勿論、僕にだよ。」
「別に。」
反射で吐ける嘘がこんなに軽いとは知らなかった。
みるみるうちに歪んでいく彼の顔が面白い。表情がやっと割れた。
「……さては、反応を示さなければ飽きて帰ると考えてはいないかい?」
「まあ、図星だな。迷惑なことに変わりはないし。…答え寄越したからいいだろ。早く帰れ、明日も早いんだよ。」
寝不足でチェイスなんてできる気がしない。
しかし、相変わらず目の前の此奴は不満そうである。
答えさえやれば帰ってくれるとばかり思っていたが、そう簡単にはいかないらしい。
何故だ。
そんな疑問に答えるかのように、言葉が紡がれた。
「……………………しかし、それは僕に対しての思いでは無いだろう?君が言っているのは、『夜遅くに来た奴』に対しての思いだ。」
「回りくどいな、何が言いたい?」
「君の感情は薄っぺらいんだ。そうとばかり思っていたんだが…」
「答えになってねえぞ。なんだ、思い込みが他にもあったってのか?」
苛々が、注がれた水のように増していく。
器の小さい人間では無いと自負してはいるが、己は若干短気であるとも自覚している。
焦らされるのは好きじゃ無い。
感情が薄っぺらいだって?此奴は本当に人間観察が得意らしい。
「…分かった。そこまで言うならはっきり言うよ。…本心が、君には無いのかい?」
「……つまり?」
「常にどこか冷静で、達観している…ように見せているだけだと、少し思ったんだ。
…………ほら、この前のゲームの時に。」
つきり、と。
胸が痛み、頭にヒビが入ったような感触に襲われた。
「君はあの時逃げも隠れもせずに、真っ先にハンターの方へ向かっただろう?チェイスを引き受けてくれるのかと思ったが…そうでは無かった。」
空になったカップが置かれた。布の奥の瞳が、真っ直ぐに此方を見つめてきた。
震えた手と青くなっていく顔に此奴が気付くのは時間の問題だろう。
言葉を紡がれるのが酷く怖い。
こんな恐怖、以前は感じなかったと言うのに。
「…………君は…何も言わず、唯々ハンターに殴られに行っているように見えた。」
ピリッとした怒気が頬を撫ぜた。
これもまた図星。居心地がどんどん悪くなっていく。
「ゲームの後に君は、少し調子が悪かっただけだ、と答えた。」
もう無理だ。前を向いていられない。
断罪されるのを今か今かと待ち続ける囚人の気分だ。
化けの皮が剥がされていく。これだから、此奴は、
「………嘘だ。僕はそう感じた。最初こそ信じていたが、君の言葉はどうにも本物では無いらしいのでね。それで、真意を聞きに来たわけさ。」
「………っ」
「……言葉も出ないかい?良いよ、少し落ち着こう。何も、尋問している気は無いから、安心してくれよ。」
冷や汗が鬱陶しかった。視界が少し滲んでいる気がした。
こんな奴に、仮面を剥がされるなんて思ってもいなかったのだ。
逃げたい。でも、どうやって。
いつも頼りになるチェイス役の意味が、無くなってしまう。
落ち着け、と思いながら、大きく息を吐いた。
いつもはやらないような、意思のこもった目で、前を向く。
勇気を出して、此処で言わなければ、此奴は多分…
「…………最初は、自分でも何しているかわからなかったんだ。勿論、チェイスを引き受ける気ではいた。…ただ、いつもと違ったのは、その時点で相手の機嫌が頗る悪かった、という事。理由は知らないし知りたいとも思わなかったが、当たり方がキツそうだと少し感じた。」
あんなに滅多打ちにされるとは思わなかったが。相手に後で謝られた。
今更だろうと真顔で返せば、相手は悲しそうに笑っていた。
何故あんな表情をしたのだろう。いつもとさして変わらない事をしただけなのに。
「……………」
「だから、何か…発散させればいいのかなって。」
「それでみすみす殴られに行ったと?」
「………自傷癖があったわけじゃあ無いんだけどな。」
「……………それで場が収まるとでも思ったのかい?」
「まさか。そこまで阿呆じゃないさ。時間稼ぎだ。苛々しているなら、殴るだけ殴って去るか、執拗に追いかけて最後に殺すか……まあ、後者だろうなと思った。だったら、出来るだけ引き付けられれば良い。」
上手くはいかなかったけど、と乾いた笑みをこぼした。
とっくにばれていたそんな考えは、ハンターを逆上させるだけであった。
一緒にいたエミリー先生とエマには、可哀想なことをしたと思う。
勿論、目の前の此奴にだって、迷惑を掛けたなと思う。
けれど、少しだけ相手が落ち着いたのは確かだった…筈。
上手くいったのは、寧ろそこだけであったが、それでも満足だ。
「………………傷は?」
「残っている。ダウン寸前でゲートに入った。…どうせ見てたろ。」
「………君は…自己犠牲精神が少し強すぎやしないかい?」
「なあに、ただの気まぐれだ。普段だったらあんな事は…」
「ふざけないでくれ!」
ビクリと体がはねた。
分からない、自分は何故怒られているのだろう。
そうだ、エミリー先生もエマも、あの時みんな俺を怒った。
なんで、どうして。人の感情に対して鈍くなってしまった俺はそれすらも分からない。
辛さだけが綯い交ぜになっている確かな『怒気』に、困惑する他なかった。
ハッとしたように、此奴は…イライ・クラークは、此方を見つめなおした。
「すまない。………サベダー?」
「……………分から無いんだ。」
ポツリと、一言零れた。
驚きに見開いた自身の瞳から、雫が落ちた。
ギョッとしたように奴は顔を歪めた。お前の所為だと、腹を立ててしまう。
俺だって、こんな事で泣くだなんて思っていなかった。
ただ今は、ゆっくりと次の言葉を待ってくれる彼の優しさが、酷く痛かった。
「お前が、ここまで怒る理由も、エマやエミリー先生が怒る理由も……人の感情が、分からないんだ。でも、どうしてそれが『悲しい事』なんだ?もう、それすらも分からなくなっているんだ。…なあ、お前なら知ってるか?それが何故なのか。」
「………」
皮を剥けば、こんなにも弱く脆い人間に、誰が守られてくれるだろうか。
恐ろしい。何よりも、なぜ怖いかが分からないのが恐ろしい。
「もう、手遅れなのかもなぁ…」
「…………手遅れじゃあないさ。」
ぽん、と頭に手を置かれた。子供扱いすんな、とやんわり手を払う。
ごめんよ、なんてまた思ってもいないことを、奴は口に出した。
先ほどとは違う、酷く穏やかな笑い方だった。
「君はまだ感情が残っている。今確信した。分からないなら、教えて貰えばいい。きっと、丁寧に教えてくれる。」
「…でも」
「でもじゃない。いい加減君は自覚すべきだ。」
はて、何を?と首を傾げる。
奴は、ああもうそういう所だ、と顔を顰めた。
「……まあ良いさ。これから分かれば。邪魔したね、おやすみ」
「は、え、おいイライ!」
すっくと立ち上がって、奴は部屋を出て行こうとした。
俺も立ち上がったところで、ふとドアの前で止まった彼が言った。
「明日。……素晴らしいチェイスを期待しているよ。」
不敵な笑みを浮かべた彼奴が、どうにも頭から離れない。
あの時、ゲーム自体は結局引き分けになった。
もうなるようになれ、と滅茶苦茶に走り回ったが、ゲートが開くまでの時間しか稼げず、結局俺はハンターに捕まった。
先に飛ばされてしまったエマは、俺ほどは殴られていなかった。
それに、不思議と酷く安心した自分がいた。
早く逃げろ、と声をかけるが、なかなか離れようとしない二人が理解できなかった。
彼奴は結局俺を助け、代わりに飛ばされ、俺はボロボロになってゲートから出た。
それでも、良かったと彼は笑った。何故、あんな顔ができるのだろう。
知らない。知りたい。
「……ックソ」
寝付けないのは、きっとカフェインの所為だ。
眠るのを諦めて、ベッドから出る。
ふと、完全に冷め切ってしまった紅茶が目に入った。
自分用に淹れたが、そう言えば紅茶はあまり好きではない。
何故淹れたのだろう。…覚えていない。
月光に照らされて、風もないのに不思議と揺れているそれは、異様なまでに神秘的であった。
無性に腹が立ち、それを飲み干す。不味い。
カップを片付ける音が、少しだけ大きく聞こえていた、午前1時。
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