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電車でやばい男に捕まる話
日時: 2024/09/21 17:23
名前: とーみん (ID: QxIgp5vM)

朝の電車で必ず一緒になる男がいる。
学生服を着ているので学生だと思うが、近所の学校ではないのか見たことのない制服を身に着けている。ブレザーの制服は袖が長く、サイズが合っていないように見える。

俺がこの男のことを気にしている理由は明確で、すごく容姿が好みなのだ。

一つ弁明しておくが、俺は男を好きになる趣味はない。現に今も、もういくつか先の駅で彼女が乗ってくる予定がある。先ほどからぶるぶると小さく震えるスマホには、可愛い彼女からいくつかスタンプが送られてきている。駅に着いたよとか今日は人が多いよとか、そんな通知は先ほど目を通した。彼女はこうしてコミュニケーションをとるのが好きらしいが、俺がそれに甲斐甲斐しく返信することはない。後で合流したら寝てたとか気づかなかったとか、そんな感じの理由で謝るつもりでいる。彼女はそれでも満足なんだと言っていたので、俺もあまり気にしないでいる。

顔の良い男は俺が乗車するといつも、出入り口に一番近い席に腰かけて本を読んでいる。
通常の通学時間帯は会社員や学生でごった返して息もできないので、少し早い時間の電車に乗るのが定例となっている。いつも乗るこの時間帯の電車は人こそいるものの、満員とは程遠い。ほとんどの人が席に座れているし、立っている人も一定の間隔をあけていることができる。
どこから乗ってきているのかは知らないが、彼の座っている席はいつも同じ場所なのですぐにわかる。俺も階段から一番近い乗車口から乗ると、丁度その男のいる車両に乗り込むことになるのだ。決して狙っているわけではなく、たまたまいつも同じ車両に乗っていることはわかっていただきたい。

さてこの男、制服が少し大きいようだが体格が小さいわけではない。175㎝の俺と比べると上背は少し小さいかもしれないが、小柄な体格ではないように見える。顔が小さいので制服の肩幅とのアンバランスさが際立っている。

俺は大体、彼をチラッと捉えられるよう斜め向かいの席に腰掛ける。スマホに目をやるふりをして、彼をチラ見するのが日課となりつつある。気持ち悪いとかは思わないでほしい。

横目でとらえる男は今日も本を読んでいる。朝の暖かな日の光が彼の綺麗な黒髪を際立たせている。電車の揺れに合わせてさらさらと揺れる髪は伸ばしているのか、後ろで一つに結べるほど長い。是非後ろで一つ結びにしてほしい。
そして時折、その髪の間からキラリと光るものが見える。本を読む黒髪男子の耳に、大量にピアスが付いているというギャップ。俺の願望詰め合わせ男子。違います俺は女の子が好きなんです。

停車駅に停まる度、人が出入りして徐々に人が増えていく。次の駅に着けば、彼女が乗ってくる。

ふと視線を彼にやると、彼もこちらを見ていた。

声にならない息が喉から漏れる。
いつも読んでいる本から視線が外れることはなく、俺が彼を見るといつも下を向いていたのであまりに驚いた。
初めて彼と、目が合った。

その目は気だるげな雰囲気をまとっていたが、強く惹きつけられる魅力があった。吸い込まれそうな目、という表現はこういう目を伝えたかったのかとハッとする。
視線を外さなければと思うのに、体がいうことを聞かない。彼を捉えたまま、動くことができない。
なんて綺麗な顔だろう、このまま見ていたいがあまりにも不審者じゃないか。

頭の中でぐるぐる考えていると、突然彼が立ち上がった。まだ電車は止まっていないし、どこに行くんだ?
彼はどんどん俺のほうへ近づいてくる。

は?待って、おいおい、なんでこっちくるんだ、顔がいい、やっぱり背高いじゃん、この体にこの顔ついてんの?え、近づいてきてるってなんで??無理無理無理無むりむr「すみません、、」

俺の隣に腰かけ、彼は俺をのぞき込む。
初めて聞いたその声は、想像していたよりも低く男らしい。この綺麗なお顔からこんないい声出るの?

「あ、の、ごめんなさい俺、見すぎてましたよね」

とりあえず見ていたことを謝らないといけない。
突然のことに声が上ずって、気持ち悪さがカンストしているがどうか気持ち悪がらないでほしい。

彼はふふっと小さく笑った。
口元を隠した手が、スラっとしていて男の節っぽさがなくて驚いてしまう。この男の容姿は、ことごとく俺の好みを詰め合わせたようにできているのか。

「気にしないでください、いつも見てましたよね」

「、、気づいてたんですか」

「勿論です。、、俺も見てたんで」

「、、、は?」

「あなたは気づきませんでしたか?」

目を細めて笑いかける彼の表情に見惚れながら、記憶を呼び起こしてみる。






全く心当たりがない。



俺を見てた?



彼が??




「なんで?」

素直な感想だった。
なぜ彼は俺のことを見てたんだ??

彼はようやく俺から目線を外して口を開いた。

「顔が、好きで」

「は???」

彼の頬が少し紅潮したように見える。

「すみません、気持ち悪いですよね」

「いやいや!俺もだし、、、あ」

言うつもりはなかったのに、つい口から言葉が出てしまった。
彼が自分のことを気持ち悪いなんて言ってしまう、それ自体を否定しなければと思ってしまった。

「俺もって、ことは、」

再び彼の顔がこちらに向く。ああ、やっぱり綺麗な顔つきだな。
よく見ると、まつげも長いし薄い唇はリップクリームを塗っているのか艶っぽくも見える。

「両想いですね!」

「は?????」

キラキラと目を輝かせる彼に、動揺する。
両想いって言ったか??
彼の口は止まらない。今まで見ていた彼とは別人になってしまったようだ。

「俺今、すごく幸せです。ああ、よかった、言ってみるものですね!」

彼はひどく高揚した様子でニコニコと笑っている。
こんな状況でも、彼の顔が美しいことにとらわれてしまっている。

キキーーっと電車が止まる。ああ、彼女が乗ってくる駅に着いたんだ。

「行きますよ!」

突然彼に手を引かれ、バランスを崩しながらも俺は電車を降りた。
別のドアから、彼女が電車に乗るのが見える。いつもは下ろしている髪を、今日は結んでいた。アレンジしたんだよって見せるつもりでいるんだろう。
それを見せるはずの俺は、顔のいい男に手を引かれて電車を降りてしまったんだけど。

呆然としている間に電車のドアはしまり、いつも通りに出発していく。
改札に向かって歩いていく人の流れには乗らず、その場で俺は彼と立ち尽くしている。

「え、なにこれ」

状況が呑み込めない。
なんで降りたんだ?
彼が電車を降りるところは見たことがないので、学校はまだ先だと思うんだけど。

「驚かせてごめんなさい、俺、もう我慢できないのでこれから君のこと、連れ去りたいと思ってます」

顔を赤らめて、とんでもないことを口にする。

「君がいつもこの駅で乗ってくる女の子と合流するの知ってます。
実は嫉妬してたんです。彼女のこと。
君は女の子が好きなんだと思ってたから、見るだけにしてたんですけど、
今日初めて目が合って、両想いだってわかりました。
今まで男と付き合ったことありますか?
俺はありません、でもこれって運命だと思うんです。
絶対大事にするから、俺から離れないでください」

怒涛の勢いで流れ込んでくる情報はもはや理解が追い付かない。
でも、こんな意味不明の話をしている最中でも、彼のすべてに見惚れてしまっている自分がいる。
もうダメかもしれない。

彼は舌を少し出して控えめに笑う。

「好きになってごめんなさい。
でも君が、俺から離れられない体になるように頑張ります。」

舌先にちらりと見えたピアス。
俺はもう完全に虜になっていた。


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