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いっしょだね。
日時: 2025/01/13 20:08
名前: ゆれる (ID: fMHQuj5n)
プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=14055

重いです。死ネタ注意。
バドエンですので、地雷の方はブラウザバックを推奨します。
幼馴染の共依存です。

登場人物
主人公:佐伯 秋人(さいき あきと)
幼馴染:月城 奏(つきしろ そう)

Re: いっしょだね。 ( No.1 )
日時: 2024/11/23 23:58
名前: ゆれる (ID: fMHQuj5n)
プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=14055

:1
「おはよ」
 耳によく馴染んだ彼の声が聞こえる。うっすらと目を開けると、そこには想像していた通りの彼の笑顔があった。怠い体を起こし、彼に挨拶を返す。
「…ぉはよ、う」
 俺の口からこぼれたのは酷く掠れた声。そんな声でも、彼は嬉しそうに目を細める。
 「今日はちゃんと起きれたね、えらいえらい」
 ペットを愛でるような声色で俺に話しかけてくる。いつからこうなっていただろうか。
 
 彼─月城奏とは、俺の記憶にない時から、ずっと一緒らしい。いわゆる「幼馴染」と言うやつだ。小、中学と同じ学校で、不登校気味の俺を毎朝飽きもせず起こしにくる。正直言って、少しうざい。
 奏の手を振り払い、
「やめろ、変なことすんな」
とわざと突っぱねる。
 そうしたときのしゅんとしたしおらしい顔が何故だかとても魅力的に思えて、ついついいじめたくなってしまうのだ。
「俺のこと、秋は嫌い?」
「んな訳ねえだろ、冗談冗談」
 こうしたやり取りも、もう何回と繰り返してきたか覚えていない。飽きもせず、ずぅっと。いつか終わらせようと思っても、いつまでも奏の視線に囚われる。
 
 また今日も、彼に依存する。

 

Re: いっしょだね。 ( No.2 )
日時: 2024/12/31 00:58
名前: ゆれる (ID: fMHQuj5n)
プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=14055

:2
 学校に行くと言う奏を玄関まで送り届ける。俺は正直めんどくさいが、そうしないと彼は捨てられた大型犬のような眼差しで見つめてくるからたまったもんじゃない。俺もなかなか甘いなと思いつつ階段を降りる。
 「秋、ちゃんとご飯食べるんだよ?それとゲームばっかりじゃなくて…」
 「あー、わかったわかった。毎日言う必要ねえだろーが」
 途中で言葉を遮って言うと、彼は何か言いたげに目を細める。その瞳には俺しか映っていないように見えて心配になるが、それと同時に彼の視線を独占しているという優越感を感じる。そんな自分に嫌悪感をおぼえるのもいつものこと。
 少し顔をしかめると、彼が心配そうに俺の顔を覗き込む。俺をこんな顔にさせている張本人なのに呑気な顔をしていることに腹が立ち、その端正な顔を歪めてみたくなる。だが、そうしても自分が虚しくなるだけだし、やり返されてどろどろになる未来が想像出来てしまう。
 「奏、俺の心配してる暇があるなら、さっさと学校行けよ。お前は一応優等生なんだし」
 そう。彼は俺なんかと違い、容姿端麗、頭脳明晰な優等生。幼馴染でなければ、話すことすら叶わないくらいの人気者だ。
 「僕は秋といれたら、学校なんてどうでもいいんだけどな〜」
 「そんな世迷言言ってるくらいならさっさと学校行きやがれ。叱られたいのか」
 俺が語気を強めてそう言うと、
 「わかってるよ〜」
と少し拗ねながら靴を履く。俺にしか見せない子供らしい姿も愛おしくてたまらない。
 「じゃあ、行ってきます」
 「おう、いってら」
バタン、と扉が閉まると同時に息を吐く。彼の居なくなった玄関は妙に寒くなったように思えて、無意識に自分の体を抱く。そして、失った体温を求めるように、彼の作った食事を食べにキッチンへ赴くのだった。

Re: いっしょだね。 ( No.3 )
日時: 2025/01/01 01:03
名前: ゆれる (ID: fMHQuj5n)
プロフ: https://www.kakiko.info.profiles/index.cgi?no=14055

:3
 まだ湯気が立ちのぼる温かい料理を頬張る。やはり奏の作る料理は美味しい。
 俺が小さい時に亡くなった母さんの味はもうとっくに忘れてしまった。父さんは仕事人間で、ここ最近まともに顔を合わせていない。だから、俺の家庭の味は奏の味だ。少し薄めの味付けに、5分づきの少し茶色い米。俺の舌は、もうとっくにそれに染まりきっている。
 「ご馳走様でした」
 手を合わせて、軽くお辞儀する。そういえばこれも、奏に言われて始めた事だったなと思い出す。奏は、俺が言いつけを守るととても嬉しそうに微笑むのだ。彼が笑みを浮かべた時にする目を細める仕草が、俺を慈しむようにも、縛りつけるようにも見えて少しぞわりとする。が、俺はその目から視線を逸らすことが出来ない。
 食器を片付け、自分の部屋に戻りゲームのスイッチを押し込む。オンラインのゲームは奏が嫉妬するからやらない。俺がやるのは一人用のゲームだけだ。ヘッドホンを付け、パソコンの画面に齧り付くようにして、俺は一日を消化する。夜まで訪れる不安を紛らわすように、俺はゲームに没頭した。

Re: いっしょだね。 ( No.4 )
日時: 2025/02/03 00:52
名前: ゆれる (ID: fMHQuj5n)

:4
 「あーきー?」
 「うわ」
 ヘッドホンを外された音で俺は現実へ引き戻される。時計をチラッと見ると、午後六時。カーテンを開け放った窓からは青い暗闇が見える。
 「秋、ただいま」
 真後ろから声が聞こえる。安心する奏の声。俺はこの声を聞くたびに生を強く実感する。
 「おかえり、奏」
 たった一言だけでも、奏は表情がコロコロ変わるから面白い。俺と似たような家庭環境で、よくここまで表情筋が育ったものだ、と一人感動する。
 奏は、俺からとったヘッドホンを机の上にゴトリと置くと、側の窓のカーテンを閉める。すると、荷物をベットの上に乗せ、話し始めた。俺は、多分いつものだろうな…と思いつつ椅子を回し、奏の方を向く。
 「秋はちゃんと言いつけ守ってた?ご飯食べてた?トイレ行った?家の外出てない?和室の畳のへり踏まなかった?階段は左足から降  りた?それからー」
 やっぱり。奏の早口モードだ。最近なってなかったから、今日は随分と疲れてしまったのだろう、と考えていた。
 「もう大丈夫だよ。ドアを開ける手は右だし、ドアに入る足は左から、だもんね?ー」
 「うんうん、さすが秋!」
 めんどくさくなってきたので、話の途中でぶったぎる。
 「奏、今日疲れているんじゃない?よかったら話、聞くぞ?」
 奏はよく拗ねるから、扱いには慣れている。たぶん、この世で一番奏のことがわかる人物と言ったら、俺になるんじゃないだろうか。
 話をふると、新しいおもちゃの前の子猫のように身を乗り出し、
 「よく聞いてくれたね、実は…」
と話し出す。微笑ましくなり、思わずクスッと笑ってしまった。
 ああ、幸せだな。

 「っとそうだ。今日は秋の好きな菓子パンが安いんだよ。少し買い物行ってくるから、いい子にして待っててね」
 「言われなくとも」
 制服のジャケットを脱ぎ、玄関に降りていく奏の背中を見送る。そして、
 「楽しみに待ってるから」
と声をかけた。
 その時彼は振り返り、俺にとって眩しすぎる微笑みを浮かべた。

 その笑顔が今も、忘れられない。


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