複雑・ファジー小説

Re: あだるとちるどれん ( No.111 )
日時: 2011/05/03 13:44
名前: 右左 ◆B.t0ByGfHY (ID: 8hgpVngW)
参照: 許さない、絶対に。 彼を変えてしまった学園なんて、許すもんかぁ!






目が覚めると、そこには誰か見知らぬ人が居た。
一瞬だけ記憶が無くなって、そのまま堕ちてしまった。
理解、出来ない。 周りはとても白くて、それで、嫌いな薬の臭いが鼻を劈く。

「あ? 起きたか和」
「……、ん? ああ、そーだった、俺ァ、和かァ。 そりゃーいーやァ、ハハッ」

目の前の人物が迷惑そうに顔を顰める為、俺も申し訳なさそうに力なく笑った。

「わーってる。 そんな目で見んなって」
「……すまん」

困惑の色が浮かぶ瞳は真摯に俺を貫く。 ……僕、か。
 ・ ・ ・ ・
「依楓さんは、どーなりました? おれ……僕に、何が起こったんですか?」
「依楓は、田舎に連れてった。 今の状況なら他の人間に見られたって平気だと思うからな」
「……僕については、無視ですか?」

クス、と自分に似合わない笑い方で茶化す。
目の前の人物——拓美さんは、分が悪そうに口を尖らせ、バスケットの中から林檎を一つ取り出し、投げる。

「……丸齧れ、と」

ため息をついて、ガブリと噛みつく。

「……悪かったな、一人で依楓に付き合わせて。 記憶が無くなってて、正解っつーとこか」

僕はフラつく体を勢いよく立ち上がらせ、拓美さんにしがみつく。
そして、胸倉を掴み、パンチを一発お見舞いする。

「ってェな!」
「ンで俺の問題をお前の中にしか抱えこまねえんだ! 俺の問題だろ! 俺にも話せ糞野郎!」
「落ち着けよッ! 話し方、戻ってる」
「うるっせえんだよ! 今ァどうでもいいだろォがァ!」
「病院内は静かにしろやゴルァ!」

えらく美人の女性がドアを開けて入ってきた。
桜色の美しい髪に、淡い色の口紅、凹凸のある身体。 ねちっこい美人じゃなくて、こう、さらっとした美人。

「マーサの方がうるせえよ」
「あ? 拓美ィ、アンタねぇ……」

拳をプルプル震えさせ、今にも殴りそうな雰囲気。

「ん? ふぁ、あ、あーっはっはっはっはっはあ!」

いきなり腹を抱えて笑い出した。
よく、感情が変わる人だなあと思った。

「アンタ、小学生のオトコノコに殴られてやーんのォ! だっせー!」
「うっせー!」

拓美さんは頭を掻いて、ため息をつく。

「話してやるから、落ち着け」
「あっははー、わたしねぇ、もうすぐ退職すんの! だから何かちょーだいっ」

真剣に話しているときって、こういう人殴りたくなるよね。
拓美さんも心境は同じらしい。

「ハイハイ、明日、明日ね」
「そー言って軽くあしらってさあ!」
「うるさいんだよ! さっさと向こう行けよ! 診察して来いよ!」

ごもっとも、拓美さん。



「じゃあ、聞かせてもらいます」