複雑・ファジー小説
- Re: あだるとちるどれん ( No.4 )
- 日時: 2011/02/25 20:48
- 名前: 右左 (ID: 8hgpVngW)
第壱話
〝 ゼロ から イチ へ〟
『凄くゾクゾクしたよ。 やっぱあの子かわいいね』
『見てたんかよ』
『わたしはやられてたけどねー』
『「止めろー」とか、言ったりしなかったんだ』
『なんで』
『お前、そんなん言ってたらいつか死んじゃうよ』
『あの子がやられるよりか、マシだよ。 それに——』
——キミが助けてくれるんでしょ??
- Re: あだるとちるどれん ( No.5 )
- 日時: 2011/02/26 17:02
- 名前: 右左 (ID: 8hgpVngW)
僕が中学を卒業して、早三ヶ月が過ぎた。
まだ青春を謳歌したりていないというのに、僕は高校へと進学していない。
その所為で、“保護者”に殴られたのだが。
「本当の親ではないので、迷惑を掛けたくなかった」と言ったら、の方が正しいかもしれないけど。
「何にせよ、暇なんだよなぁ……」
そう言いながら公園に居た僕はブランコを片手で持ち、小さく揺らしていた。
ブランコに座っていたら小さな子供に蹴られて落とされたので、座らない事にしたのだ。
本当に、“子供”は好かない。 いや、僕も子供だけどさ。
それでも中学を卒業したんだから、義務教育を終えたんだから、僕の方が地位は上な訳さ。
もう一度言う。 僕は“蹴落とされた”んだ、きっと十歳にも満たっていないであろう子供に。
「僕はどんだけひ弱なんだよ」
少しだけむしゃくしゃして、足でブランコを思い切り蹴った。
勿論僕の細くか弱い足が衝撃に耐え切れるはずも無く、僕だけが痛みを味わう破目になる。
「い……っぅ」と見っとも無く声を漏らした。
その恥ずかしい様子を遠くから見ている者が一人居た。
キミカナ ユズキ
王叶 柚鬼。
僕が中学一年生だった時の同級生だ。
その後進級してから“ある事件”を起こし中退したらしいのだが、僕はその事件を知らない。
兎に角、事件を起こす輩にいい奴なんていないとだけ言っておこう。
王叶はずっと僕の方を見ている。
公園の敷地にも入らずに、その瞳に光を宿さず。
この際はっきりと言っておこうじゃないか。
僕は王叶が好き“だった”。
というか、僕だけに限らず彼女を好く人物は他にもいただろう。
休み時間の間も、彼女の周りを常に男子が埋め尽くしていたといっても過言ではない。
まあ、偶に女子が取り囲んでいちゃもんをつけていたらしいけど。
その王叶を好く人物たちは、全員“あの事件”の所為で王叶に近づかなくなった。
特にやる事がなかったので僕はその王叶に手を振ってみることにした。
すると、それが良かったのか悪かったのか、戸惑った顔をしながらも此方へと歩み寄ってきた。
凄く、挙動不審だ。
あ、手と足が同時に出てる。
王叶が僕の目の前まできた。
少しばかり顔を赤らめて僕を見ている。
王叶は、凄く美人だ。 誰が何と言おうと、いや、何と言う人もいないくらい美人だ。
サラサラと風に弄ばれている薄い茶色の髪からは、どことなくいい匂いがする。
……何だコレ。
え、何このちょっとウブウブな感じの雰囲気。
やばい、この場からいますぐ抜け出したい。
手を振ってものの30秒で僕は手を振ったことを後悔した。
しんとした雰囲気を破ったのは王叶だった。
「お、前さっき手を、手、振った、振ったのか??」
……噛みまくり。 そして、少年口調だった。
女の子とのラブコメ展開(と呼んでいいのか悪いのか)は初めてなので僕も少し動揺する。
「うん、振った、けど。 あの、取り敢えずさ、落ち着こう」
王叶は数回深呼吸をした後、僕の顔をまじまじと見つめてきた。
顔、近いよ……。
「あの、僕の顔に何かついてる??」
王叶はバッと後ろへ二歩下がった。
赤らんでいた顔は余計に赤くなり、熱でもあるのではと疑うくらいだった。
さっきから下を向くのと、僕を見る事を繰り返している。
「っ、」
何か、僕まで恥ずかしくなってきた。
僕は右手で口許を隠し、王叶を見つめる。
中学時代と比べると、随分雰囲気が変わった気がするのは気のせいだろうか。
「あの、さ……」
「ぅえ??」
突然話しかけられた所為で、変な声が出てしまった。
顔の赤さも正常に戻った王叶はちょこっとだけ首を横に傾げて、言った。
「アタシと、お前、どっかで会ったか??」