複雑・ファジー小説
- Re: あだるとちるどれん ( No.50 )
- 日時: 2011/03/23 16:37
- 名前: 右左 (ID: 8hgpVngW)
五日前の出来事は、無事終わったようで。
結局ハマヤさんは田舎へ帰る道を選び、細々と暮らしていくようだ。
甘味はまだ入院してるけど、本人めっちゃ元気。 コイツ何で入院してんのとか思ってきた。
何か、病院で知り合った男の子とワイワイキャイキャイとイチャコラしてるらしい。
そしたら一緒に来た(無理矢理連れて行かされた)柚鬼がらびゅーな二人に当てられてちゅーを迫られて僕達にはまだ早いよと止めておいた。
ぶすくれてご機嫌取りが辛かった。 悲しい思い出としてしまっておこう。
拓美さんは怒って「俺暫く帰んねぇかんな!」と家を出て行った。
何でも、知り合いの家に行くらしい。
金なら余分にあると言っていた。 すねかじりなのに、拓美さんの金じゃないのに。
そんで、僕はというと。
今は散歩に来ている。 暇だったし、何となく。
今日の星座占いは一位で気分がいいので、お外に気分転換しに行ったのだ。
いい事が起こるぞって思ってたのに。
「キミ、久しぶりだね! 和クンでしょ。 だーいじょーぶっ! わたしは覚えてるぜー??」
陽気な子供に話しかけられたと思ったけど。
よく見れば……大人な気がするようなしないような。
でも、多分知り合いと思う。 久しぶりとか言ってるし。
後ろには、女の人と手首をチェーンで繋いで「一生一緒」とかそんな感じのよく似た、雑誌を読んでる男の人が居た。
「あーあー、覚えてます。 えと、巷で噂の年中半袖……あ、今日ノースリーブなんですね」
太陽さんが迷惑なのに張り切ってサンサンしてるといえ、そのクマさんがプリントされたのはナイと思うぞ。
あれ、なんか今日擬音語多い気がする。
「つまり、覚えてないんでしょ!」
突っ込まれた。
「あれあれ、変態ストーカー男の先輩じゃよー?? 覚えとらんかのぅ」
フォフォフォとお爺さん風に笑って見せてくれた。
そういえば、ハマヤさんにストーカーされていきなり抱きつかれて暴れた時に助け出してくれた人が居たような。
でもその時助けてくれたのは男の人じゃなかったカナー。
「そっちの人は覚えてます。 真昼さんですよね。 んで、そっちの人は……真夜??」
「んでわたしだけ呼び捨て?! んもーっ、真昼ぅー! コイツ潰していいっ?! ふぇぶっ」
パアンッといい音がした。
真昼さんが持っていた雑誌で真夜を叩いたのだ。
「可愛さ余って憎さが百倍」
「んだとぅ?! 真昼までそんな事言うなっ」
ん、ことわざ。
この人と話してるとタメになる気がする。
でも、怖い。 面白いほど生気が感じられない。
目は虚ろ……。 眠そうなだけかな。
「軽佻浮薄」
真昼さんが真夜を指差して言う。
「あ、コレ“ちょっと落ち着け”って意味ねー。 あ、わたしに言ってるのコレ?!」
ナイス?? ノリツッコミ。
もうこの双子色々と訳分からん。
「……逃がした魚は大きい…………」
真昼さんが小さく呟いた。
……僕を見てる??
真昼さんは右手でこめかみを押さえ、僕から視線を逸らして真夜を見る。
この人、昔は普通に喋ってたと思うんだけど。
何があったとか聞かないし、聞きたくもないけど。 もう、面倒事に巻き込まれるのは御免こうむる。
「ま、いーやー! 真昼が訳分かんないのいつもの事だしっ! んじゃー、またねん♪」
真夜はウインクをした。
真昼さんは、妙に目力のある視線で僕を見る。
そして、真昼さんと僕とを交互に指差して、言った。
「蛇の道は蛇」
何か、聞いた事あるけど。
どんな意味かは分からないし、多分この人達は物事を深く考えない人たちだから。
考えても考えても、正しい道が分からないから。
僕は、この日聞いた言葉を特に考えずにこの道を後にした。
あーだこーだしてたら、夕方だったんだな。
今日も、ヘイワ、へいわ、平和。
***
「わたしたち、双子なのに似てないね」
「……」
オレは小さく頷く。
「顔以外、全部似てない」
「……」
オレは帰り道の空に浮かぶ夕日を見つめたまま、何もしない。
「チェーンで繋いでもさ、なーんも意味ないねぇ。 行動、分かったら似てくると思ったのに」
オレはチラリと横の真夜を見て、目を細める。
泣いてた。 夕日の光で、赤みがかっている。
「何で真昼は普通に喋んないの?? お願い。 そんなに短い言葉だったら、声、忘れそう」
オレの顔を覗き込んでくる。
「何で似なきゃだめなワケ。 意味不明」
オレは素っ気無く返す。
真夜は妹だけど、オレよりしっかりしてると思ってたから、こんなので崩れるとは思わなかった。
「真昼はわたしが“キライ”なのっ?!」
声を荒げて言う。
オレは、呆れたように真夜を見て言う。
——お前さ、うるさいよ。