複雑・ファジー小説
- Re: あだるとちるどれん ( No.53 )
- 日時: 2011/03/23 17:19
- 名前: 右左 (ID: 8hgpVngW)
インターホンが鳴った。
まだ目覚めていなかった僕は、何回鳴らされたか知れない音を聞いて飛び起きた。
“はい”と応答し、出てきた声を聞いて驚く。
「チャオー」
すぐにサンダルを履いて外に出た。
そこには大きな旅行バックを二つ両肩にかけて、右手をヒラヒラさせているハマヤさんがいた。
「何回も鳴らしたんだけど」
「す、いません」
どこか、寂しそうな目をしている。
「コレ、甘味の荷物な。 頼むわな」
そう言って、肩にかけてあったバックの一つを下ろし、地面に置く。
僕は敷地から出て、それを引きずる。
「うわダセーっ! そんなんも持てねーのかよ?!」
「うるさいですね! こっちは根っからのインドア派なんですから!」
つーか、何か僕敬語キャラになってない??
今どーでもいいけどさ。
ハマヤさんが「ダセーダセー」と連呼する。
そろそろ本格的にウザくなってきてないか、この人。
すると、ハマヤさんは思い出したように手のひらに拳を乗せ、言う。
「あの双子にあったんだってな。 真夜が俺ん家に来てわざわざ言ってたぞ」
「……え、真夜だけですか」
「ああ、そうだけど。 え、何、真夜だけじゃオカシイ??」
あの離れそうにもない双子が、チェーンを取ったのだろうか。
真昼さん、執着心高そうなんだけど。
「真夜、何か真昼さんの事言ってた??」
「それ言ってもよ、“知らない”の一点張り。 だから俺諦めたー」
そんなの聞いてねーよ。
早速事件に巻き込まれた気がするんですけど。
つーか自分から巻き込まれてるような、いや、そうだ。
僕はポケットから笛を取り出し、ピーッと吹く。
ハマヤさんはびっくりして目を丸くしている。
なにしてんだコイツ、とでも言いたげな目で僕を見ている。
「は、何。 それで何か犬でも呼ぶつもりか??」
笑いながら僕を見る。
「Yes、ですが何か」「おまたへりーん! 呼んだー?? 和」
柚鬼が猛スピードで駆けてきた。
ハマヤさんは唖然としている。
柚鬼の僕への愛は異常だから、僕が吹いた笛の音が分かるらしい。
毎日尾行されてたら僕、殺されてるかも。
女の人と話しすぎたし。
「ちょっと、頼みごと。 コレを読んでて、黙読で」
僕がポケットから出した紙を渡す前にぶん取り、真剣に読む。
そんなに近づかれながら見られると嫌だ。
「それでは、ハマヤさん。 田舎に行ってもお元気で」
大きく手を振り、僕は走り出す。
「気ーつけろよー! 死ぬなよー」
冗談じゃない頼み事だ。
僕が幽霊になったとしても、生霊で僕に憑いてきそうな人が居るからね。
幽霊が生きてる人間に憑かれるって、どんなだよ。
(笑)。
***
「濡れ手で粟ー」
今のオレはご機嫌だ。 うるさい奴が居ない。
「地獄で仏に逢ったようー??」
開放された、今のオレは。
ジユウだ、じゆうだ、自由だ!
「いやいやー、地獄に仏は来んでしょう」
きひひひひひひ。
楽しい、愉しいよ、凄く楽しいよ。
「きひひひ、笑う角には福来るー」
さあ、“妹”という難題も解決した。
明鏡止水で行こうじゃない。
待っててホシイナ。
芦原 和クン。
……(笑)