複雑・ファジー小説
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 10曲目執筆中 ( No.121 )
- 日時: 2011/08/19 20:24
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: COM.pgX6)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は、一瞬痛みを理解できなかった。
瞬間的にその攻撃力は、奴の攻撃能力は、俺の痛みを感じる神経の限界線を越えたのだ。
痛みを感じ処理していては、気絶するほどの強烈な痛み。
人間が、それを上位天使の俺に、与えるなど……有ってはなるぬ筈の出来事。 しかし、俺は、事実。
倒れ臥し悶絶している。 慟哭したくても肺の辺りに激痛が走り声が出ない。
治癒能力を全力で傾ける。 だが、遅い。 奴等の姿は、ドンドン離れていく。
あぁ……俺のカナリア。 俺の物。 放せよ? 放せ! 俺の愛した……最大最高の至宝なんだ!
助けられなかった。
奪われた。
今、俺は倒れ臥し情けない顔でイースレイを見詰ている事しか出来なかった……
恥辱……人生最大の恥辱! 俺は、生かされた。 アルファベットZ! それを後悔させてやる!
違う……俺の中に有るのは……! 彼女を理解できていなかったと言う自らへの悲嘆。
振り向き際のあの目。 俺を失いたくないと涙ぐむ。 追って来ないでと……釘を押す。
俺が、損傷を回復させカナリアを追う程度の事が出来る事を彼女は理解しているのだ。
『カナリア……俺は、お前のためなら魔に落ちる。 神など……あのような身勝手な下種どもなど糞喰らえだ!』
あぁ、そうだ。
そうさ……元々、神々への忠誠心なんて紙切れみてぇなオブラートだ。 分ってる。
あぁ、俺は……俺は、俺を理解しているぞ?
神々を骨の髄まですりつぶして脳漿をぶちまけて…………そうだ、心の臓を抉り取る!
世界の歪みの発端が神共なら、元々組する側が間違えていたのだ。
天使に生まれた天使には堕天と言う術が有る。
神への背信行為として忌み嫌われる其れだが……神の本質を知る頭の冷めた分析者達は、口々に言うじゃないか?
堕天こそ、天使の本当の姿で有るべきだと。 そんな、愚か者めと糾弾し狂信者共の殺される賢者達。
『あぁ、知っていた。 知っていたのだ。 俺は、最初から神々を裏切るために此処に来たのだ』
思い出す。
過去……何千何万と言う天使の長い生の中では、本の短い数日前の事。
そうだ。 あの時、サイアー兄さんに会った時、俺は、彼女の堕天返しを臨んだ振りをして居た。
心の底では、羨んでいた。 そして、流石は俺の婚約者だと誇らしかった。
何せ、か細い女の力で神々へのアンチテーゼを掲げたのだから。 俺も続きたいと沸々と情念は、湧き上がっていたのを思い出す。
黒々とした闇へと俺は、身を委ねるように瞑目する。
瞬間、光が消え、深淵が、視界を支配する。 俺は、其処へと手を伸ばす。
そして、言う。
神々への決別の言葉を。
一切の迷い無しに! 痛む体を震わせて!
その瞬間、体中が嘗て無い程の恍惚感と脱力感に襲われる。 大地が鳴動するのが分る。
一瞬の間。
その後、轟音を上げて空を突くほどの巨大な黒いオーラの奔流が迸る。
多くの者達が怪訝に思い戦闘を中断したのが、手にとる様に分る。 天使族の者の多くは、憤りを感じ俺と気付いたの者の大半は、叱責し恥と断じただろう。
だが、構わない。 俺の中には、奴等の間違いが鬱積と積まれ続けている。
最初から奴等に高潔さも正義の強さも見出していない。
奔流が消えていく。 空を覆っていた黒が少しずつ斑になっていく。 何時の間にか傷が、消えている。
圧倒的な力の嵐が、体全体の自然治癒力と霊的回復力を底上げし一瞬にして全開させたのだ。
立ち上がる。
「あっあぁ……」
声が出る。
先ほどまで、ガラガラと妙な雑音が入った声しか出せなかったのに。
高々、地に臥していたのは数分、否、一分弱だろうに。
この高揚感は何だ? この開放感は何だ?
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
怒号が空を震撼させる。 鳴動する。 空を覆っていた雲達が霧散する。
近くを通りかかった弱者が敵味方構わず昏倒し空から落ちていく。
力が漲る。 体中を嘗て無い強大な力が、駆け巡る。
あぁ、理解する。
今、俺は、最高に興奮している。
神々をぶっ殺す。 それを公然と出来る立場に昇華した俺に酔い痴れているのだ!
黒白円舞曲 第1章 10曲目「天使進撃 Part5(援軍)」No1
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〜お知らせ〜
今回から書き方を少し変えました。 ご了承ください。