複雑・ファジー小説
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 3曲目更新 コメ求む!! ( No.18 )
- 日時: 2011/04/13 09:52
- 名前: 風(元;秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
逆憑 緑茶様
コメント下さって有難う御座いますvv
その単純な一言が本当に心に響きます…また,暇が有ったら読みに来てやって下さい^^
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
父さん!!母さん!!命が引裂かれ自分の前で血の花を散らしていく
知っていた世界は……深緑の優しい世界は一面朱に染まった
血
血…血…血……夥しい血の嵐 鼻を突き刺す鉄臭さに咳込み喉から血が逆流するような感覚に襲われた。
嗅いだ事の無い其れは然し確実に体に恐怖を刻み拒絶反応を起させた……
怖い…嫌だ,血の花になりたくない。必死に祈ったさ神に!
あの時私は家族が死んで行く姿を見ながら家族が死ぬ事の辛さ以上に自分だけは生延びたいと言う感情に駆られていたんだ————
<全ては悪魔がやったのだ————>
そう断じてきた。
世界は無情で冷酷な朱色をしている————だが,其れを美しい優しい色で取繕っているだけだ。
そう,あの時悟った……悪魔と言う意思に人は抗えず悪意を隠し蹴落とし愉悦に嗤い進んで行く。
世界は汚い,悪魔が居るから……だが,そんな私の長年掛けて生まれた感情は今揺らいでいる。
本当は天使なのか?憎むべきは天使を使役する神々なのか!?
分らない……どうか,答を
黒白円舞曲 第1章 3曲目「魔界ラヴァーズ」
アンリ・ハンナハンナに理想郷と言わせた世界が扉を抜けた先には有った。
アンリの言う事など信じず魔気が充満してさぞ息苦しいのだろうと決込んでいた魔界の初めて空気は予想以上に綺麗で全く息苦しくなど無い。
どうやらアンリの言った事は真実らしい。元々天使だった者達にとっては矢張り魔界の空気は息苦しかったのだろうかと他人事ながらに考える。
そして,星明りによって映された眼下に広がる家々はイースレイの想像していた魔界とは掛け離れていた。
理路整然とした綺麗な左右対称をしていて毒々しい装飾など全く無い。人間が天使の家を模して造ったとされる家と何ら変らない。
視覚に訴える魔法の力によるものだろうかとも考えれるがまるでその様子は無い。
如何に自身が上級の魔族の真の力を分らないとしても大体出来うる事象の限界は想像が付く。
そもそも,是から何日も居る事になる筈である彼を一時的な懐柔の為に騙す理由は無いと推測する。
そんな時,ガデッサがくっくっと声を上げた。そして,突然腕を徐に広げて言う。
「ようこそおいでませ!魔界唯一の開拓地…俺達のシャングリ・ラへ♪」
此処は自分の街なのだと自分の愛する桃源郷なのだとガデッサは誇張するように言う。
其れと同時にガデッサは一度手を鳴らす。
すぐさま,巨大な青い鳥が現れ宙に浮いていた体に重力の力が戻る。
先程までは魔力の力により体が空に浮いている状態で妙な気分だった。
矢張り重力が有る方が体に馴染む。府と安堵の溜息が漏れる。
「オルゲロスゥ,早くするニャァ♪」
「タピス……此処にはオルゲロス初心者が居る事は忘れるなよ……もう遅いか」
この青い巨鳥はオルゲロスと言うらしい。
彼等「シルヴィア」が管轄する魔物の様だ。
それはタピスの明るい声に共鳴する様にして反応し羽を速く動かし始める。
どうやらオルゲロスの速度は相当速いらしい。
イースレイを慮るように抑揚に掛けるが心配しているような言葉をエルターニャが言う。
オルゲロスは既に移動態勢に入っている様でもう,減速は望めない様だが心の準備が出来た事は感謝しようと思うイースレイだった。
オルゲロスは一度旋回して目的地を目視した後に急加速する。
その加速は凄まじい物で体が軋むのを感じる。堪えきれず吹飛びそうになるとタピスが腕を引っ張り助けてくれた。
「ご免ニャァ……本拠地に着けば色々と伝えれる事が有るから遂」
腕を掴みながらこの風の壁による息苦しさにも慣れている風情でタピスはイースレイに謝った。
どうやら,シルヴィアの本拠地には口で説明するより遥かに鮮明な説明手段が有る様だ。
ハァハァと息を整えイースレイはタピスを見詰める。
それに気付いたタピスは顔を赤らめて目を逸らす。何故,目を逸らされたのか理解できず怪訝そうにイースレイは目を細めた。
「本拠地……見えてきましたよ」
アンリがタピスに目の行っているイースレイに優しい口調で知らせる。
其れを聞いたイースレイはアンリに向き直りアンリの指差す方向を見る。
どうやら,高さはそれ程無いが面積が広いと言う構造の建物らしい。
高さから見るに精々三階建てと言った所か。シルヴィアと言う組織の規模がどの程度なのか理解出来た気がした。
無論,地下室等あれば別だし人間の目では認識出来ないような隠れた空間がある可能性も有るが。
オルゲロスは颯爽と一点へと進む。其処はどうやら巨鳥の着地地点として決められた場所らしい。
其処に静かに減速しながらオルゲロスは足を付けた。
「オルゲロスゥ,今日もありがとニャ♪」
ジッとしているのは飽きたとばかりにタピスが元気一杯にオルゲロスから飛び降りる。
そして,オルゲロスの頭の当りを撫でながら労いの言葉を掛ける。
それに続いてアンリ・エルターニャと降り立ち夫々オルゲロスに労いの言葉を掛ける。
「何だ……降りねぇのか? あっ,それとも怖くて降りれないか!?大丈夫だってこの程度の」
「魔族が他者を労う……」
「おいおい,好い加減にそう言う固定観念は捨てろよ」
その光景にイースレイは瞠目していた。
此処,数時間彼は夢を見ているのでは無いかと問答していた。
魔族と言う存在が自らの想像と全く相反している。他者を心配し労い謝る事も出来る。
今迄の考えの全てが一瞬にして一変したらそれは心情が付いていかないだろう。
唖然として鳥から降りることを忘れる。
オルゲロスが煩わしそうに低く唸ると粗同時にガデッサが降りられないのかと馬鹿にした口調でイースレイに問いかける。
ガデッサの言葉等殆ど聞いていなかったイースレイは唯,驚愕し嘘だと否定するように言う。
其れに対してガデッサはやれやれと肩を竦める。
オルゲロスから降りて数時間がたった。
暫く本拠地内を歩いて応接室と書かれた札のある場所に居た。
応接室までの道程は長かったが整然としていて清楚な雰囲気だった。
所々に絵画があり其れは神々への敬意を完全に捨て切れては居ない堕ちた者達の複雑な感情が多少は分る様だった。
応接室の内装も綺麗なものだった。きちんと整理整頓されていて間取りも最も日の差し込み易い過ごし易い位置だ。
ソファーの座り心地が気持ち良い。
だが,応接室でガデッサから聞いた話は凄惨な魔族と天使の戦いと
そして,此処シャングリ・ラの開拓の歴史と開拓の理由だった。
天使の歴史が30億年以上と言う長い歴史なのに対し魔族の歴史は凡そ20万年程度と言う短い歴史と言う事実。
その20万年の間に天使により迫害され多くの天使から堕ちた魔族は死去した事。
そんな中,自らも1000年程前に多くの仲間を失ったガデッサは絶望の淵で神々の啓示を聞いたのだ。
天使や堕とされた悪魔達にとって親愛なる存在である人類の消滅を決定すると。
だが,それには多くの天使が反感を抱き暴動を起し神々は人間に1000年の猶予を与えた。
1000年の間に少しでも人間が学べば人間の殲滅の命令は廃除すると言う事になったのだ。
「待て……1000年の間に我々が学べば」
「先ず其処じゃないだろ疑問に思うと頃は……
何で俺が天使に発された筈の神の言葉を知っているのか?」
イースレイは至極最もな質問をしようとするがそれをガデッサにとめられる。
其れより前に聞くべき事,疑うべき事象が有るだろうと。
イースレイは瞠目する。態々自ら疑問に思うべき場所を掲示してくるとはと。
イースレイ自身気に成っていた事でも有るので素直に其れを聞くことにした。
其れによると多くの悪魔は堕ちても変らず天神の言葉を聞く力を色濃く残している。
全ての天使に伝える様な神の啓示の様な物は自然,堕天使の脳内にも響くのだと言う。
その神々の暴挙とも言える振舞いを黙視している事は出来なかった。
それまでバラバラに戦っていた仲間達を一箇所に終結させ彼等は,
来る戦いに備えて戦力を増強し続けた。それがシルヴィアの発起の理由だ。
質問に応えたガデッサは手を組み顎に当てながら今度はイースレイの質問に応える。
——神の本質は先刻も言ったが遊び好きな子供の様な物だ
一時は引いたが奴等は絶対に人間の殲滅を行うだろう
所詮は使い魔である天使の間に生まれた締約だ
奴等は容易く裏切る,そして天使に命じるだろう殺戮を
幾ら良い方向に変っていても神々が認めなければ同じだ——
イースレイは慟哭する様に喉を鳴らし顔を引き攣らせる。
この男の言う事に嘘はない。全く嘘が見えないのだ。言葉一つ一つに重みがある。
何が面白くないのか神々は確かに人間を邪魔と思い全滅させたいのだろう。
だが,だからと言ってそんな神々の使役する軍勢に自分如きがどうしろと言うのだとイースレイは沈黙する。
「お前は実は強い……アルファベットZ,お前の中には最強の魔族の血と竜族の血が流れているんだ」
「何?」
イースレイは自身の事を決して弱いと思った事は無い。
然し,この現状を収束させるのに足る力が有るとは思えないのも事実。
自らより遥か格上であろう多くの上位魔族を束ねることから最上位の魔族に属するこの男に強いと証明されると少し気が楽に成った。
其れと同時に語られるイースレイにとっては衝撃的な事実。
今迄全く,自分の出生の事など知りはしなかった。自分がまさか魔族の血だけではなくあの知的にして強大な肉体を誇る竜族の血まで引いていたとは。
怪訝に眉根を潜めながら成程,こうまでして懐柔しようとする訳だと得心が行った気がした。
「初耳か?当然だろうな……お前が本気で鍛えれば恐らく1年程度で上位魔族級の力を手に入れる」
「だが,それじゃ戦力が————」
ガデッサは訝るイースレイに聞いた事の無い事だったかと確認するように言うと当然の事かと瞑目し顎に手を当てて自らの見立てを語る。
精々1年で上位の魔族に至れるポテンシャルが有ると言う事実だ。
だが,それでは足りないだろうと言う懸念がイースレイの脳内を過る。
「タイムリミットまではもう少しある。神々は気紛れだが自分の提示した時間には真面目だ——
後5年だ……5年有ればお前は上位天使数体或いは10数体を相手に出来る実力を有する様になる
俺がお前を招きいれた理由は2つ……この戦い,魔族だけでは抑え切れない事
そして,お前がイレギュラーであり神々に匹敵或いは超える可能性のある存在である事」
取り乱すイースレイに全く動揺する事も無く当然の反応だと言う風情で言葉を続ける。
神々は自らが宣言した時間には真面目に従うという事とそれまでのタイムリミットは5年残っている事,
そして,その5年の間にイースレイは順調に成長すれば神々と渡り合う戦闘力を有する可能性が高いと言う事。
全てが雲を掴むような話でイースレイは唖然とする。
男の口調が緊迫感に溢れている故か事態が深刻に感じられるが事実,天使に滅ぼされるだろうと言う未来の事項に猜疑心が強くある。
「はぁ……幾ら言葉を並べてもそう簡単に払拭は出来ないよな。
まぁ,何れ天使が来るだろうからその時に真実を見て貰おうか」
イースレイの当惑する表情を見詰めながら何だか疲れたと言う様に嘆息してガデッサは立ち上がり退室するのだった。
ガデッサの退室と同時に表情の抜け落ちた感じの猫耳の男アンリが現れた。
トレイの上に紅茶の入ったマグカップが2つ並んでいる。
恐らくはガデッサとイースレイに振舞う物だったのだろう。
ガデッサが退室した事を確認した彼はソファに座り丁寧な所作でマグカップを配りイースレイを見詰める。
「唐突過ぎて信じていた世界が崩壊した感覚」
妙に詩人気取った口調で男は問いかけてくる。
其れに対しイースレイは頷く。
「全くだ——天使は正義,悪魔は悪……光は天使,闇は悪魔と断じてきた」
今までの自分の信じてきた全ての事が一瞬にして崩壊した事実。
当惑せずには居られない。脳内が警鐘上げ多くの取り止めの無い情報が周っている様な感覚。
其処に更に混乱材料を携えて来たのかとアンリに不審の目をイースレイは向ける。
「……まぁ,生きて行く上で構築された感情は簡単には拭えないですよね?
僕も貴方の立場なら分りますよ。然し,貴方は結果此処に来てしまった。
下手に疑念を抱き続けるよりは身を委ねる所は委ねた方が良い…そう言う風にしか出来ませんしニャ」
綺麗な所作で紅茶を啜りながら真剣な眼差しでアンリは言う。
慰めではない。迷っている仲間は彼にとっても邪魔なだけなのだと言うそう言う厳しい感情が窺えた。
そう,事実だ。自らが此処に居る事もそして此処から自ら程度の力では逃げられない事実も。
是が運命と言うべき物なのだろう。圧倒的な力に掌握され身動きを制限される。
「悪く考え過ぎない事ですニャ……僕達は何も貴方を食ったり殺したりする積りはないですから」
「それは 分るさ————」
アンリは最後に本心から慰めるように気楽に行きましょうと言う言葉を発し
安心させる為に悪い様に扱う気は無いのだと強く訴える。
その訴えにイースレイは其れを首肯する。
アンリは安心した様に不覚息を吐き紅茶を啜る。その所作に釣られてイースレイも紅茶を飲む。
その様を見てアンリはくすりと笑った。存外に美しい其の笑みにイースレイは動きを止める。
「どうかしましたかニャ?」
「いや……綺麗だと思ってな」
「それはどうも♪所で,タピスの事はどう思います」
それに気付いたのかアンリがイースレイに何かあったのかと尋ねる。
イースレイはアンリの視線から目を外し恥かしそうに思った事を正直に述べた。
其れを聞いたアンリは嬉しそうに顔を赤らめて褒められた事を素直に喜ぶ。
そして,気軽な風情で自らの妹はどう思うかと問う。
実はアンリにとって是が最もイースレイから聞き出したい事なのだ。
そうとも知れずイースレイは“五月蝿い女で好みじゃない”と断言した。
アンリの表情が曇る。
「僕の前でタピスを侮辱しない事だ————……ニャ」
ゾクゥ!!アンリの怒気の篭った言葉にあてられイースレイの体が言い知れぬ痛みに襲われる。
まるで針の筵の様なプレッシャーは確実な上位者の証だろう。
イースレイは唯,はいと答える事しか出来なかった。
語尾のニャすら恐ろしく感じた。
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アンリとの会話を終えてイースレイはアンリに薦められた通り館の中の散策をする事にした。
2時間ほど歩いたが存外に広くまだ,3分の1も歩き回っていないが疲れも有るので今日はもう寝る事にした。
ガデッサ達と会ったのは夜,9時過ぎでとうに朝の光が差し始めていた。
「よぉ,探したぜ……」
「あんたは?」
そろそろ寝たいと思ったが眠る場所が無い事に気付き逡巡する。
そうしていると前の方から オールバックの面長の悪人の様な目付きの茶色のフードを着用した体付きの良い男が現れた。
どうやら,気配の質からして上位の存在のようだ。
イースレイが問うと男はウルブス・サージェンスと名乗った。
「兎に角,お前の部屋は今掃除中だから少しの間,俺とタピスと雑魚寝状態になるとの事だ……宜しくな」
この男は兎も角,タピスと一緒に寝るというのは相当な不安が有った。
相手が体の成熟したとはまだ言えないがそれなりに体の出来た女性である事
そして,彼女のような性格の場合自らに抱きついて寝たりしそうで怖い。
『タピス————』
「あぁ,多分,俺達の席にアンタが割振られたのはガデッサの遊びだから気にするな!」
正直,エルターニャやアンリの様な分を弁えた真面目そうな者達の所に割振るべきだろう
そう,イースレイは思った。そんなイースレイの考えを読み取ったのかウルブスは言う。
是はガデッサの遊びだと……薄々は気づいていたがやっぱりかとイースレイは深く溜息を付いた。
「矢張りか!」
「まっ,慣れりゃ良い奴だと思うぜ♪楽しく行こうぜ兄弟!」
「兄弟じゃねぇ!!」
ウルブスの兄弟と言うフレーズにイースレイは過剰反応する。
気持ちが昂ぶっていていけないと反省しながらウルブスを見詰る。
「冗談通じねぇなぁ…まぁ,案内するから付いてきな」
ガデッサの言付けを破って他の部屋で寝ても大変な事になるのは明白なので
イースレイはウルブスに渋々と付いて行くのだった。
Fin
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