複雑・ファジー小説

Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 4曲目更新 コメ求む!! ( No.29 )
日時: 2011/04/13 09:54
名前: 風(元:秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
参照: 猫は……最高です!!生まれ変ったら猫に成りたい★

コメントして下さった方々本当に有難う御座います。

アビス様へ
設定を細かくしすぎて窒息しそうな予感がします♪

メフィストフェレス様へ
いえいえ♪
私も天使とか悪魔好物ですよvv理想郷を好きとは…何と言うシンクロ!?
そう言って貰えると嬉しいです^^
好きなキャラとか居たら教えて欲しいな?

かりん様へ
ご来店有賀が問う御座います♪
はまっただなんてそんな……
ちょくちょくと言わず更新する毎に……いや,ちょくちょく来て貰えるだけで十分すぎるほどですけどね^^

霊夢様へ
ようこそおいでませ♪
ゆっくりじっくり自分のペースで読んで下さいなvv
此方こそ頑張って下さいね!

葵へ
葵って二次小説のアリスだよね??トリップ外したの??
ハンナハンナ兄妹は分り易くて僕も好きです!!
特に苦労性のアンリが♪




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

身を委ねろ————
委ねるしか無いのだ……違う,其れは唯楽なだけな事だ!!
私は私なのだ,私の目で真実を見ねばならないのだ……

真実?
私は今まで真実を見てきたのか?
悪魔は闇 天使は光,その決め付けは私の視野の狭さから来たのか?
何故,分らない!!
世界は赤を綺麗な色で塗りつぶしている……塗りつぶしている。
ならば,この赤を全面に押し出した“魔”と言う存在が本質なのだろうか……

何もかも……何も分らないんだ!!




黒白円舞曲 第1章 4曲目「ニャンニャン冒険紀」

ウルブスに案内されて到着した部屋は幹部寝室A室と言うらしい。
Aと言う事は幹部の寝室の中では古いと言う事なのかそれとも階級の高低による部屋区分なのか
そんな事を考えながら改めてこの屋敷の広さと複雑な造りに驚嘆する。
暫くの間は確実に案内が居なければ此処に辿り着けないだろう。

ドアを開けた先,月明かりが差し込み部屋の輪郭が見える。
広さは3人で暮らすには少し狭いが2人で暮らすには丁度良い位だ。
ベッドの数も2つどう数えても2つしかなかった。イースレイは訝り何度も数を数え直す。
本気で自分を勧誘する積りで自らの世界に来たのなら何でその自分の寝室となる場所にベッドが2つなのだ……既にベッドの1つにはタピスが居る。
詰りは床で何も掛けずに寝ろと言う事かそれともウルブスかタピスのどちらかのベッドで一緒に寝ろという事か。

「おい,是はどう言う事だ?」
「見ての通りだろ?俺かタピスかどちらか選べって事だ!床で寝る方が良いなら別だけどな」

『く……同性同士で肌を寄せ合い眠るだと??否,まだ殆ど面識もない若い女と肌を寄せ合い寝る方が問題か?』

愕然とした悲鳴の様な声でウルブスに質問するイースレイ。
しかし,ウルブスは予想通りイースレイの聞きたくない言葉を淡々と述べた。
どんな罰ゲームだ地獄に無理矢理連れ去られる事自体余程の事だと言うのに……イースレイは心の中で嗚咽する。
流石に今後の事を考えると床で寒さも凌がず眠り体調を壊す事は避けたい。
先ず,是は却下される。しかし,どちらを選ぶ。逡巡する。其の様をウルブスは楽しそうに見詰める。
撲ってやりたいとすら思える嫌らしい笑みに苛立ちを覚えイースレイはタピスの方にする事に決めた。
ウルブスに理由を聞かれるとイースレイは彼女のベッドの方が面積的な余裕が有って窮屈じゃ無さそうだと言った。
其れに対してウルブスは言う。

「そうかい……だが,気をつけろ……タピスは抱き付き癖が有る」
『最悪だ——』

ウルブスの忠告に頭を抱えながらイースレイはタピスのベッドに入る。
予想よりかなり寝相が良いなと思っていると突然,彼女はイースレイに抱きついて来た。
腕の力が強い。柔らかい胸が体に密着する。
イースレイは余りに突然の出来事に小さな悲鳴を上げる。
先程,ウルブスの忠告を受けたばかりだがまさか是ほど速く抱きついて来るとは……
責めて眠りについてからにしてくれとイースレイは懇願したい気分になった。

「ニャァ〜,お兄にゃんがおっきくなったニャァ♪」
『お兄ちゃんじゃねぇ……』

「仲が良い事で♪」
「冗談でも止めろ!!」

抱きついたとうのタピスは夢の中で兄であるアンリと戯れている夢でも見ているのかイースレイを兄と勘違いする。
イースレイは其れに対し至極全うな事を思うが声を荒げて起したりするのは握手と考え我慢する。
其れに対してウルブスがチョッカイを出す。
ウルブスの言葉に小さく怒気の言葉で応答しイースレイは一拍置いて「おやすみ」と言う。
ウルブスもそれに応じるようにお休みと言った。

その後は務めて沈黙を貫きタピスの胸の感触を必死で否定しながら眠りに付いた。
多くの事が頭の中を巡る。当然だ。多くの事が起こった。
是が全て真実なら彼が信じていた物の多くは瓦解するだろう。

____イースレイが眠りについて8時間が過ぎていた。
時間は,12時だ。
何時間眠れただろうか……眠りに付いたのは深夜の4時位,早朝と言っても良い時間だろう。
今は何時だ?そんな事を思いながらノロノロとイースレイは目を開ける。
そして,直ぐに時計に目を見遣る。


「12時……当然か,寝る時間が遅かった」

「お早う♪ってまぁ,俺も今起きたばかりだけどな」
「あぁ,タピスは?」

「食事中だ……お前の後でな」

思ったよりは時間が過ぎていない事に安堵の溜息を吐く。
人間にとって通常夜は活動時間ではない。そんな人間が長時間夜を過ごせば日の当る時に労働するより遥かに疲れが溜る。
故に,通常の睡眠時間より時間を要すると思っていたのだ。
ベッドの室が良かったのかそれともイースレイ自身の体が睡眠時間を強くインプットしているのか?
少し思い瞼を無理矢理開き周りを見回す。視界に入ったウルブスが挨拶をしてくる。

其れに対してイースレイは会釈してこの部屋のもう1人の住人の事を聞く。
ウルブスは愛想の悪い奴だと伐の悪そうな表情をして食事中だと言う。
そう言えば先程から妙な音がする様な気がすると思い後を振り向く。


「あっ,おっはようイースレイ♪朝起きたらお兄にゃんじゃなくてビックリしたにゃ♪」

ムシャムシャと血肉を貪りながら円らな瞳でタピスはイースレイを見詰める。
兄なら驚かないのか……其れを問答する余裕も無くイースレイはタピスが食べている物に目が行く。
それは骨格構造から紛れも無く人間だと判断できた。



                ————矢張り所詮は悪魔か?


そう,憤怒の焔が込み上げて来る。
怒りで拳を振り上げそうになるがウルブスに制され止める。
何故止めた!とイースレイはウルブスに反論するとウルブスは言う。
彼女は元々,堕天使から生じた悪魔とは違い魔物から派生した存在だ……
魔物には自分以外の存在の肉を“特に人間の肉を愛する"傾向が有るのだと……
例え人型になって理性や我慢を覚えても根本を直すには時間が掛かるのだと……
庇う様に。

「ニャッ……ご免ニャ!人間を食べないと死んじゃうって訳でもニャいのにイースレイの事も考えないで……」

その2人の剣呑な雰囲気が自分が原因で出来た物だと理解したタピスは愕然として目に涙を浮かべながら部屋を飛び出していった。
“制御できない本能″多少の哀れみを感じながらもイースレイは許す事は出来なかった。
当然だ。悪魔を今は信じなければならないと思っていた矢先だ。
元々は悪魔から人間を護る職業に就いていた者だ。
だが,涙を流し部屋から飛び出す彼女は強く反省していて……
イースレイが深々と嘆息するのと重なるように扉が開く。
其処にはハァハァと息を荒げるタピスの兄が居た。
普段は無表情な彼が剣呑な顔をしている。

「どういう事だ!何故,タピスは泣いていた!?」

捲し立てる様にアンリは声を荒げる。
イースレイはこの兄妹は本当に愛し合っているのだなとその絆に少し浸っていた。
他人事だからだろうか……違う。今迄1人の様な者だった。
悪魔を倒しても誰も感謝はしてくれなかった。悪魔とか天使とか言う垣根を関係なくこう言う純粋な関係に飢えているのだろう。
アンリの剣幕の手前表情には出せない。

イースレイは短時間黙考し手を挙げ自分の愚だと事の経緯を言う。
其れに対しアンリは成程と口に手を当て思案する。思ったほど激怒はしてこない。
何故だろうと思っているとアンリは冷然とそれは彼女に責が有るなと言う。
一頻り謝り矢張りタピスが心配なのだろうアンリは頭を抱える。
其れに対してウルブスが捜索を手伝おうと手を差し伸べる。

イースレイは彼女が泣き出した原因は自分に有ると言う事で断る理由がないと引き受ける。
其の瞬間,アンリは体中の力を発散し自らの気術メルトンニャンニャンを発動する。
アンリの爪がイースレイ達の体に減り込む。一瞬痛みが有ったが痛みは本の一瞬だった。
突然すまないと詫びながらアンリは自らの気術についての説明をする。

彼の気術,それは相手の喋る能力を奪い其の変り魔界では情報通で知られる猫型の魔物達の事場を理解出来るようにするという能力である。
更に,自らの爪を媒介にした術だからか相手と思考をリンクする事が出来るのだ。
詰まる所是は敵に使う能力と言うよりは仲間を使っての情報収集の為の能力と言える。

「じゃぁ,行きましょう……イースレイ,貴方は魔界を歩くのは初めてですね?」
「当然だろう?」

「色々,参考になることが多いと思いますよ?通常の悪魔とは話を出来なくなると思いますが」

妹が心配だと言うのにアンリは勤めて冷静にイースレイを慮る。
イースレイとアンリの会話が成立しているのはアンリが猫の言葉を理解出来る故である。
アンリは悪魔が襲ってきたりする事は無いので是を機にシャングリ・ラがどんな場所か理解するのも良いでしょうとお節介気味に言う。
ウルブスは口を尖らせてお節介野郎がと嘯く。

嘯くと粗同時に歩みだし東地区を調べると言ってウルブスは走り出す。
其れに対してアンリはイースレイを手招きして付いて来いと促す。
そして,本部の外に出ると言葉で説明しても分らないだろうと考え指を指しこの通りを頼みますと優しい口調で言う。
そうして,アンリはイースレイに任せた通りとは逆の方へと跳躍した。

「あれ?あれって魔族じゃ無いよニャ?雰囲気が違うって言うか」
「うんうん,あれもしかしてガデッサさん達がスカートした人間じゃないかニャ」

通りを歩き始めて直ぐ声が鮮明に脳内に響き渡る。
どうやら猫達の声が直接脳内に入り込むようになっているらしい。
猫が喋っている錯覚に陥りながらもイースレイは猫達に話しかける。

「タピス・ハンナハンナを知っているか?」
「勿論ニャ♪所でアンタイースレイって人間かニャ?」

先ずはタピスの事を知って居なければ話にならないと思い猫達に彼女の事を知っているかを問う。
情報通と言うのだから自らの生息する場所にある組織の幹部の事を知らぬなど無いだろうが一応だ。
猫は当然知っていると言い逆にイースレイに質問をしてくる。
隠す必要も無いと思いイースレイは肯定する。

「————そうだが……」

「やっぱりニャ♪アルファベットZニャ!サインくれニャ♪」

肯定すると2匹の猫達はサインを申し出てきた。
サインを書くまでは質問に応えてくれる気はなさそうなのでイースレイはサインを書く。
サインを渡した瞬間,悪筆だと猫に酷い評価を受けるがイースレイ自身字が下手なのは自覚しているので余り気にはしなかった。
一頻り,騒ぐ彼等を見て会話が収まるのを見計らって彼等にタピスが何処に行ったかを問う。

猫達は申し訳ないが分らないと言う。
だが,この周辺で彼女が拠り易い場所なら知っていると其の場所を教えてくれた。

「感謝する」
「僕達は暇だから話し掛けられるのは嬉しい限りなのニャ♪」

イースレイは感謝の念を述べ颯爽と歩き出す。
猫達は気軽そうに此方が感謝したいと言う風情でイースレイに手を振っていた。
魔界の猫は手を振れるのかと瞑目し,然し彼等もまた所詮は人を食う口を持っているのだと心を許す気は無かった。
上位の位階に属するタピスですら我慢が出来ないのだ。
下位であろう彼等が幾らこのシャングリ・ラの雰囲気のお陰で温和だとしても本性は人を食う魔物に違いは無い筈なのだ。

其の後,イースレイは街路に居る猫と言う猫に話しかけ居そうな場所を具に確認する。
然し,全く見付る気配は無い。シャングリ・ラの町並みは存外に入り組んでいて何より広い。
夕方の茜色が雲と合いまり素晴らしいグラデーションを造るが其れを見る余裕も無い。

「兄ちゃん,あれ……」

嘆息していると小さな猫が煉瓦造りの古い家の屋根を指差す。
その仔猫は恐らくイースレイが猫達にタピスの行方を聞いて回っている事を既に情報として得ていたのだろう。
イースレイの姿形も……
そんな猫の指差す方向をイースレイは力無く振り向く。
其処にはタピス・ハンナハンナの姿が有った。
このエリアは諦めて違うエリアに移るかと考えて居た頃だった。

「感謝する!!」
「感謝されたニャ♪」

イースレイは水を得た魚の様に立ち上がり其の猫に感謝する。
仔猫はキラキラと瞳を輝かせながらイースレイに敬礼するのだった。
然し,人間のみであるイースレイにはあの屋根の上に行く手段が無い。
どうする……逡巡する。あの家の二階に行き屋根に飛びついて攀じ登る事なら何とか出来そうだが不法侵入が許されるのか
否,断りを入れて入ろうとしても全く知らない顔の筈だ。
イースレイと言う情報通の猫だからこそ知っている情報だと猫達は言っていた。

逡巡するイースレイの横に突然,何かが飛来した。
白髪の色白……モスグリーンの瞳,アンリ・ハンナハンナだ。
情報を統制出来ると言う事は当然,イースレイの見る情景も知る事が出来るという事だ。
急いで此処に来たのだろう。相当に息が切れている。
横に居るイースレイの事など一瞥もせずタピスの元へと跳躍する。

「アンリお兄ニャん?」
「頭は冷えたかニャ?凄く心配したんですよ……」

タピスの前へと降り立ったアンリは涙目のタピスを見詰める。
目が腫れている。随分長い間泣き続けたのだろう。
タピスはノロノロとアンリを見回し涙声で彼の名を呼ぶ。
アンリは近付き涙を拭い心配したんだと声を震わせた。

「タピス……イースレイの事怒らせちゃった」
「大丈夫,大丈夫だニャ……タピスは少しずつ人間の血を我慢出来るようになってるじゃないか?」

タピスは昼間の事を鮮明に思い出して倒れ込む。
アンリはそんなタピスを抱き抱え優しい声でタピスに言う。
昔と比べてずっと我慢を覚えたと……だから,きっと本能に勝てるようになると。
タピスは俯いた顔を上げてアンリを見詰める。

「タピスは人間と一緒に笑って過ごせるようになりたいのに」

切なる願いが慟哭の様にアンリには聴こえる。
意気揚々と理想郷があると聞いて此処に来た時を思い出す。
悪魔だから魔族だからどうせ人間と共存は出来ない。
幾ら,天使を妄信している人間を見ても諦められ無かった過去の夢。
今も諦めていない。いや,強く前へ前へと疾駆している。

「分ってる……分ってるニャ,僕達はだからシャングリ・ラに入国した」
「お兄ニャん」

アンリの頬を涙が伝う。
タピスの前では務めて涙を流さなかったアンリの涙。
タピスはこんなにも心配してくれる身内が居る事にまた盛大に泣き出した。

「行こう,冷えるから……今回の行動は是からの行動で払拭しよう!だから泣かないで?
タピスは————」

                


              ____笑っている方が綺麗だ……


タピスの肩に手を当て真摯な声でアンリは言う。
悪い事自覚が有るのなら是から払拭すれば良いのだからと……それが人生なのだと言う様に。
卑屈にならないプラス思考で満面の笑顔を浮かべるタピスが好きなのだ彼は————
だから,妹として女として女神の様に笑い続けてくれと願うのだ。

「有難うお兄ニャん♪」

「当然だろう?僕はお前の兄貴ニャ♪」


純粋な感謝をタピスはアンリに伝える。
アンリは少し照れ臭そうに目を細めて当然の事をしたまでだと胸を張る。
何時の間にかタピスの顔には笑顔が少しずつ戻ってきていた。
目が腫れていて涙で目が潤んでいてそんな状況で笑うと何だか普段とは違う美しさを感じる。
そう思ったアンリは思わず口にする。

「一杯泣いて笑うとタピスはもっと綺麗になるんだニャ?」

「お兄ニャン!!」


そんなアンリにタピスは恥かしがる様に怒った。
千変万化————表情の抜け落ちたアンリにとって是以上見ていて飽きない者は無い。

一方,イースレイはと言うと彼等の会話を結局は家の外で見詰め割って入るのは少し野暮だと思い留まって居た。
其れを見詰めていた仔猫はイースレイの背中に飛び乗り偉い偉いと言う風情でイースレイの頭を撫でていた。
煩わしそうにして猫を引き剥がそうとするが仔猫はそのイースレイの手を華麗に回避するのだった。
猫とイースレイの壮絶な戦いが始まる。





「それにしても何か忘れてるニャ」
「なになにぃ?」

「…………忘れてるから思い出せないんだ」

猫と乱闘を繰り広げるイースレイを傍目に2人は帰路に付く。
そんな中,完全に媒介からの情報を遮断したアンリは何かを忘れている事に気付く。
タピスが何を忘れているのか問うがアンリはどうしても思いだせず首を傾げる。


そんな忘れ去られた男,ウルブスは状況の進展など理解出来るはずもなくタピスを探し続けていた。
ウルブスが諦めて帰ってきたのは夜の9時以降だった。
タピスと顔を見合わせて実はとうに帰って着ていた事を聞かされた時ウルブスは唖然とするばかりだった。

「俺は何だ?」
「間抜けだろ?」

ウルブスは涙ながらに道化を演じた自分は何なんだろうとイースレイに問う。
するとイースレイは目を細めて冗談交じりに罵倒する。
昨日の仕返しだとでも言わんばかりに……
其処に風呂から上がってきたアンリが入ってくる。

「オイ,馬鹿狼!」
「あ?」

「今日は,このアンリがタピスと一緒に寝る!ガデッサからも彼からも許可は得た
お前は此処から出ろ!」
「な…………」


タピスとの禁断の空間に何存在感の異常にあるデカブツが突然入っているんだと言う風情でアンリは目を細めて怒る。
其れに対し探し疲れて目が少し垂れ下がっているウルブスは負けじと声を荒ける。
そんなウルブスにガデッサ達からも許可を得たのでお前の居場所は此処にはないとアンリは言う。
ウルブスは唖然として倒れ込む。

「全力で探したのに……不当だ……扱いが不当すぎるだろうが!!」
「不当な位が狼さんには丁度良いと思いまして」

「この野郎———」

今回の件でタピスの心のケアが必要だと思ったアンリはタピスと今夜中は一緒に居る事を約束したのだ。
其れに対してガデッサは適当にどうでも良いと言う風情で
イースレイはこの兄妹なら間違いなく二人一緒に同じベッドで寝るだろうと想定し
未だに自分の布団もベッドも支給されていないのだから好機と考えて了承したのだ。

何せ,ベッドは2つ,1つはタピスとアンリでもう1つは自分……
先刻とは違い1人で1つのベッドを楽しめるのだから……
そんな中,至極ご尤もな事を口にしながら地面に当るウルブスはアンリに鬱陶しいと罵倒され塵でも見るような目で睥睨されていた。
数分後,ウルブスは諦めアンリを一瞥し逃げ出した。

今日は速めに寝ようかと思ったがタピス達が五月蝿いのと目が覚めた時間が遅かった故か寝付けない。

眠れないので今日の出来事を具に思い出してみる。
今日,初めて魔界を走り回った。
普通の生活風景だった。
泣き止まない子供をあやす母親,店で食材を楽しそうに物色しながら今日の料理は何にしようかと悩む人々,全く人間と変らないように見えた。



本当に魔界に対する認識を改めなくては行けないと思えるほどに————
そして,それは正解であると今後そう遠くない内に彼は自覚する事になる。



Fin

Next⇒第1章 5曲目「宵闇に紛れて踊れ…………」