複雑・ファジー小説
- プラン.0【負けるのは趣味じゃない。】 ( No.1 )
- 日時: 2011/02/27 00:41
- 名前: 深山羊 (ID: DZWfhZUD)
プラン.0【負けるのは趣味じゃない。】
紺色をした人の形をした機械に何本もの線が繋がれていた。
その機械はほとんど人と同じ体格、何度見ても高揚感に包まれる。
「なぁ、兵司」
そう呟くとパソコンに向かってピアノを弾くように軽やかにキーボードを叩いている兵司が口だけで応答
「なんだよ」
淡白な台詞に小さく笑みがこぼれ
「いよいよ。だな」
「ああ」
台詞の割には熱のこもった返事に対して満足感を覚え
「おれ、絶対勝ってみせるから」
全身に鳥肌が立つ。
いつも身に着けていたはずのそれはいつもとは違う光沢をしている気がした。
「任せられるのはお前だけだからな」
相変わらずあっさりしている言葉選びだが信頼してくれているというのが伝り思わず
「任せたぜ、相棒」
「任された」
静かに笑い、おれは兵司を残して部屋を出た。
扉を閉めようとした時、
「プログラムは万全じゃない。いや、正しくはこの機体じゃプログラムの本来のスペックは出せないが、それでもこのままで行くのか?」
兵司の作ったプログラムは完璧だが機体の方に積んでもほとんど意味を持たない。
「お前の作ったそのプログラムを初めて見た時惚れたんだからそれでいいさ。簡易版でも負ける気がしない」
だから態々簡易版を作ってくれた。
本来もっとこの機体のスペックに合っているプログラムはいくつでもあるが簡易版でも容量を多く取り他のプログラムは香辛料程度にしか入れられない。
兵司は溜息をついて
「いつもいつも、お前は言うだろ『負けるのは』」
そう。負けるのは
『趣味じゃない』
二人の声が重なると兵司は呆れた風に
「ほらな」
と言うが負けるのは性に合わないタイプなんだよ
「負けるのは趣味じゃないんでね、そのままよろしく頼むよ」
後ろ手に手を振り今度こそ部屋を出る。
「了解」
閉じかけの部屋の中から兵司の声がきこえる。
何を言ってもあいつも自分のプログラムが好きな男だ。
結局はこっちに折れるんだから文句言わなきゃいいのに……。