複雑・ファジー小説

Re: Ultima Fabura 【参照400返信100突破】 ( No.115 )
日時: 2011/05/07 23:29
名前: Lightning(仮Aerith ◆ax80eGCIKw (ID: hQNiL0LO)
参照: 母ユーザー時はLightningで行動します、Aerithです

番外編 Side story 1







「今日はこの洞窟で休も!」
「えっ、でもここ何かの気配を感じるような・・・・・・」
気のせい気のせい、と言いながら奥へと進むレフィーナの後ろに光るものを見つけ、テフィルは顔を引きつらす。
後ろ、と指を差す。
楽しそうに笑いながらそっちを振り向いたレフィーナの口元は笑顔の形のまま固まった。
刹那、叫びつつふたりは出口に向かって全力疾走した。

ガティルヴァ
「化蝙蝠ぁあああああぁぁ !!!!!?」








Episode/Refienna and Tefille「双子と銀の鎖/リク作〜by フレイア様〜」







吸血蝙蝠、ガティルヴァ。
万一、血を吸われればその牙から代わりに猛毒を体の中へと送られるのだと言う。中でも危険なのは獰猛種。
先刻の街で人攫いに追われて、逃げ込んだ先がガティルヴァの巣だなんて今日はツイてないにも程がある。

「わたしの竜巻で・・・!」
「ダメだよレフィー! こんなとこで使ったら洞窟の天井が崩れて僕たちまで!!」
「そ、そっか!」
兄に止められ、レフィーは魔法で護身出来ない事を歯噛みした。
漸く恐ろしき洞窟の出口までたどり着くも、今外は夜だ。蝙蝠だったらまだ来るかもしれない。
月明かりに当たったガティルヴァが視界を横切った。色が赤みがかっているのが見え、テフィルはゾッとする。

スティルバット
「獰猛種だ !! 危険だよレフィー !! ・・・・・・レフィー !?」
いつの間にか隣で走っていたはずの妹の姿が無いのに気づき、テフィルは慌ててブレーキをかける。
息を切らしたレフィーナが転ぶのが見え、テフィルは思わず駆け寄った。

「いったたたた・・・」
「レフィー、大丈夫!? ・・・あっ! 怪我、してるじゃん!」
白いワンピースのすそは転んでできた膝の傷から出た血とそれに混じって付いた泥とで茶色く汚れていた。
瞬間われに返り、はっと気づいて二人空を見上げるも時既に遅し。
上空には何羽、いや数十羽にも渡る蝙蝠たちが夜空に羽ばたいていた。これではレフィーナの弓矢は数的に意味を成さないし、弓をつがえるにも出欠の所為で腕が震える。
意を決し、テフィルは立ち上がった。

「僕が相手だ!」       ジャムブウル
「だめ、テフィル! 聖竜巻【蛇風】!!」
叫んだレフィーナの魔力で突然幾重にも重なった細い竜巻が現れ、それは蝙蝠たちを巻き込んで吹き飛ばす。
その隙に怯んだ一部をテフィルは短剣でなぎ倒した。
大分減ってほっとしたのもつかの間、先程の洞窟からの蝙蝠の出現に愕然とする。
しかもテフィルは短剣を使った際、腕に牙が少しかすったことに気づいた。
脱力感が体中を襲う。

「え・・・」
「ここから離れないと、血吸い尽くされるの、時間の問題だよ!」
「でも、レフィー・・・っ! 脚が!」
「だいじょぶだよ、この位・・・!」
そう言い、強がって踏ん張るもレフィーナはよろけてその場に転んだ。

「レフィー!」
「ごめん、テフィル。逃げて」
哀しげに微笑み、レフィーナは竜巻を発した。あまりの勢いにテフィルは吹き飛ぶ。
よろけながらも立ち上がるとテフィルのいる位置は蝙蝠たちの包囲した輪から外れていた。中にはレフィーナ一人取り残され、再び洞窟から蝙蝠が補充される。まるで無限ループ状態じゃないか、とテフィルは拳を膝に打ち付けた。
「逃げて!」
再度レフィーナが言う。
「いやだ! 置いてくもんか! 僕はレフィーのお兄ちゃんだ!」
叫びに蝙蝠たちが一瞬怯むが再度舞い戻ってくる。しかしその気持ちとは裏腹に、テフィルの足元がふらつく。
恐怖で涙が零れた。生まれて初めて恐怖を感じた。一人になる、恐怖。
気づくと叫んでいた。

「誰かレフィーを、僕たちを助けてェ !!!!!!」

魔力を持ったテフィルの叫び声に蝙蝠の動きが鈍った。
するとどこからともなく銀光の筋が行く筋も延びてきて、蝙蝠を一突きにした。
ほぼ同時に洞窟の入り口にも三本の銀光が伸びて入り口を切り崩し、そこが完全に塞がった。
「「・・・ふぇ?」」
双子にはお決まりの、二人そろって驚くという行動を思わずしてしまう。
2人の前に立っていたのは、水色の髪が下で軽くとぐろを巻いてしまう位の長い髪の少女だった。
年の頃は自分達より4、5コ上くらい。白いタンクトップのワンピースの上から袖がだぶだぶの緑の上着とマント。

「無事?」
「え? あ・・・はい」
何者なんだろうこの人。そう訊こうとは思わなかった。それ程に脱力していた。
蝙蝠に先程の銀光が巻きつき、それを振り回して何羽も巻き込んで振り落とした。土煙が舞い、二人は咳き込む。
何かに巻き付かれた感覚、続け様体はふわりと浮く。体中に巻きついていたのはなぜか鎖だった。

「夜、あれに遭遇したら逃げるが勝ちなの。あたしカテーナ。あなたは?」
「テフィル・・・です」
「レフィーナだよ! テフィルにはレフィーって呼ばれてるけど」
微笑んだカテーナにほっとして2人は口を開いた。
しかし安心したのもつかの間、彼女の口から思わずさらりと出た次の言葉に二人は身を硬くする。

「〝銀翼のレフィーナ〟、〝魔歌のテフィル〟・・・」
「「!!!!!」」
「パルフィディアエマージ同士、仲良くしようよ。・・・そんな警戒しないでってば」
「ぱる・・・?」
笑って言ったカテーナの言葉の中に知らない単語を見つけてレフィーナは抱えられたまま首をかしげる。
多少意外だったようで、カテーナは目を瞬く。
  パルフィディアエマージ
「裏切りの魔導士。知らないの? 政府公認の職に入ってない人のこと」
後ろから甲高い蝙蝠の声。
カテーナは難なくその周波数が発する音の影響下から逃れ、銀光によって一撃を食らわす。
よくよく見ればカテーナの銀光の正体は彼女の上着の袖から出る鎖だった。
攻撃の素早さにテフィルは思わず見とれていた。視線に気づいたように、カテーナが見返す。

「うん? どうしたのかな、テフィル君?」
「へっ!? あっ、え、えっと何でもない、です・・・。あ僕テフィルでいいです・・・」
「うん、わかった」
カテーナって鈍いのね、とレフィーナは独りごちる。
当然双子が双子の思惑を読み取れないはずが無く、その場で気づいていたのは彼女だけだった。



その日、潮風は朝日と共にやってきた。
  恋はテフィルのもとへ潮風と共にやってきた。


それは旅立ちからつい1週間のことだった。

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あとがき
恋愛もので2人の登場人物ではきつかったのでカテーナ投入&過去形の話になってしまいました。
3人がミュレアたちに遭遇する一週間前の話という設定です。
いづれその一週間の中の一日の話も書きたいなと思いましたね。
フレイアさん、いかがだったでしょうか?
ちなみに獰猛種はあれでも銀蒼の人がやっと倒せるくらいなのでテフィルたちはすごいと思います。
そこから察するにカテーナは只者ではありません。
おっとこれ以上言うとネタバレとなってしまうので後はヒミツ!更新をお楽しみに^^