複雑・ファジー小説
- Re: Ultima Fabura—〝最後〟の物語— ( No.18 )
- 日時: 2011/05/07 23:53
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
>>15 Before shot >>30 After shot
SHOT 3 からす
命の窮地を悟った化獣。最も能力の秀でたものが、他の仲間を喰らう。
あたりはすでに、血の海だ。仕方ない、それを流すのが建物の5分の4を占めているのだから。
建物に、唖然とする二人に。それは、降りかかる。
化獣の悲鳴。
最後の化獣がゆらりとこちらに振り向く。
「・・・!?おい、膨らんでいってるぞ!!」
「巨大化するんだろ、知らねェよ。うろたえんな、ビビり野郎」
うろたえてなんかいねェよ、と言い返したかったところだったが、化獣の膨らみ方の加速にヴィルは閉口する。建物よりもデカくなったそれは、爪の一枚でさえ3Mはありそうだ。
「さぞかし暴れるだろうな、この怪物は」
「くぁ〜っ、面倒臭ェ」
「元凶が言うなバカ」
言って口元を笑いの形に緩めたフェルドは、駆け出した。
にゃろ、独り占めする気だな!!?いや待て、あいつ今・・・。
「ばかとはなんだ、バーカ!!」
・・・まぁ当然、負け犬の遠吠え。
向かうフェルド。しかし、化獣の様子がおかしいことに気づく。
腹部の一部が、出血している。
黒い影。
「誰だ」
「わたし?」
目の前に着地した女。
瞳は銀闇【ギンヤミ】。特殊な色だ。 クロウ
銀闇の瞳は、強い魔力を持ちし純粋な鴉族にしか与えられない。
つまりこいつは、純粋な鴉族——だ。
それを証明付けるかのように、緩やかなウェーブのかかった黒髪の下に生えるは黒い羽。
「リトゥス・レフトベッカ・・・・・・。 よろしくね」
「あ!俺そいつ知ってるぞ!!賞金首だ。俺達より高い奴」
「お前が賞金首の名前知ってるなんて珍しいな」
ふ、とリトゥスは妖しく笑った。
翼が彼女の体を覆い、再び開いたとき飛んで行ったのは黒い羽。
化獣がそれを虫のごとく払い除けようと前足を振るったが、払い除けるのに失敗した。
羽は一枚残らず、化獣の前足に突き刺さっていた。
「この羽根ね、ちょっとでも触れちゃったら血が出るわよー」
その言葉を合図のように、化獣の前足から大量に血が流れた。
いや、足はもう既にズタズタに引き裂かれて歩くことも叶わないだろう。
「強ェ・・・」とヴィルが好奇心からか、顔を輝かせた。
「女なのに強ェんだな」
「馬鹿にしないで。これでも鴉族の戦士なんだから、わたしは」
応戦する気か、化獣が口から噴出させたのは——火炎放射。
Σ「んぬわぁにぃいいい!!?」
それはリトゥスの延長上にいたヴィルたちにまで届く。否、届きはしない。2人は瞬間にかわす。
しかし、振り返ったヴィル。さっきまでいた二人の後ろにあった噴水が、干からびていた。
「げぇっ!?どういうことだよ、あの火・・・!!おかしいぞ」
「重々承知」
「だな」
リトゥスとフェルドが冷静に続ける。
突然、尾の一撃。
気づいたリトゥスが叫んだときにはもう時既に遅し、フェルドは受身の態勢で吹き飛ばされていた。
そのまま、後足の一撃で地面にのめりこむ。
ツ
「痛ッ・・・!!」
「フェルド!!・・・んの野郎!!もう許してやらんッ!俺は怒ったぞ!!!」
「単純なヤツね」
「おい待て、ヴィル・・・!」
しかしフェルドのうめき声はヴィルの耳までは届かず——彼は指をポキポキと鳴らすと構えた。
目にも留まらぬ速さで、残像を残しつつ彼は巨体に猛進した。手は青白い雷に包まれている。
何が起きるのかわからないまま、リトゥスはその光景を見ていた。
ロンド
「〝雷獅子・大牙——【舞踊】!!〟」
ヴィルが叫んだ瞬間、彼の体は掌にあった稲光に包まれた。青白い雷撃が辺りの地面を照らし出し、抉る。
舌打ちして細めたフェルドの、光のまぶしさに細めたリトゥスの瞳に映ったのは雷獅子。
「そうか、ヴィルが〝雷獅子〟と呼ばれるのはこれのせいなのね?」
「・・・クソッ。あの馬鹿、聞きやしない」
雷獅子は突如、姿を消した。——否、消えた、のではない。消えるように思えるほど早く動いたのだ。
光に勝る速度は無い。
為す術も無く、化獣は16方向から次々に打ち抜かれた。
雷光は時に蒼く、時に白く。交錯し、踊った。
倒れることの許されない、攻撃の乱舞。
「仲間を喰らい、なおも生にしがみつく愚かなる化物よ。
我の仲間を手にかけようとした罪よ。
我の守護神、雷騎士神【ラムオーディン】の捌きにより、消え去るが良い」
「・・・やな予感しかしない」
「finish!!」
格好つけるとき、それはヴィルの技が正確にヒットしている証拠だ。
難しい言い回しができるのも、「こういう格好良い言い方がしたい」と言われ、俺が教えたからだ。
化獣はうめき声を上げると、首を残して体は砕け散った。
鴉族の女はへたっと座った。
「あ〜、トドメさされた」
「知るか。それよりお前、なんでここに」
ヴィルは首をかしげた。
「?知り合いか?」
「知り合いも何も・・・。こいつは、俺の従姉妹だ」
「ええええええええええええええええええええ!!?」
い・・・従姉妹・・・。
確かに、似てるかもしれねェけど・・・。
「母は龍族、父が鴉族だった」
「んで、この人の父さんはうちの母さんの兄」
3人の様子を遠目で見ている銀髪の人物が一人、時計塔の上にいた。
銀紅の瞳が月光に輝いていた。