複雑・ファジー小説
- Re: \ Fellow World *⌒ ( No.8 )
- 日時: 2011/03/06 11:34
- 名前: 美苺. ◆o6w52onrpA (ID: 5RAlDtaS)
- 第1話 -
「 痛てえっ、痛てえよ姉ちゃん!もっと優しくしてくれよぉ 」
「 煩いっ!あんたが喧嘩なんてするからよっ 」
「 俺は手ぇ出してねえよ。あっちから殴りかかってきたんだよ 」
始まりがこんなんでいいのか、とあちらこちらから聞こえそうだが、そこは触れないでおこう。
場所は高校の保健室。居るのは、ちょっとお色気ムードの保健の先生、新田 芽と、男子高校生、新田 恵だ。
何人かはお気づきだろう。このふたり、苗字が新田、名前がそっくりであろう。
別に夫婦と言う事ではない。姉弟と言う関係にあたるのだ。
ふたりが幼いころ早くに両親が交通事故でなくなり、芽が恵の親と言う事になるか。
まあとりあえず、ふたりは"家族"とまとめるめんどくさがりやなスレ主を殴ったって、物語は変わらない。
そして、何故恵が怪我して、何故芽が恵を治療しているのか。
原因は、恵の喧嘩だ。
刻は朝の8時前。恵は幼馴染の澪、悠と共に登校していた。
いつもの道だが、様子が違うと恵は薄々気づいていたが、悠は泣き虫、澪はキレやすいという性格から、言わないのがベストだと思い、ふたりに伝えないでいた。
しかし、言の葉では伝えなかった事が、実際に起こってしまった
「 よーぉ悠ちゃん♪今日もお前のブサ面泣き顔見ーして★ 」
話しかけてきたのは超ヤンキーの奴らだ。いつも悠をいじめている可哀そうな奴らが、この様子を生み出したのか。
話しかけてきたヤンキーは、ほうきやちりとりを持っており、誰かを殴ったような血痕が付いていた。
「 えっ… 」
悠は、もう号泣しそうな顔で奴らを見上げていた。
「 もー、すぐ泣くんだよな、悠ちゃんたら。あたし達がもう泣かないように、痛い思いさせないようにしてあげよっか? 」
「 へ? 」
悠に言った女が、血痕のついたほうきを降り掲げた。
痛い思いを一生させない…="生きていない"と言う事に悠はやっと気づき、危機一髪で降ってきたほうきをよけた。
「 なっ、何やってんだてめえら! 」
居てもたってもいられない恵は、悠の前に仁王立ちした。
「 また新田の野郎かよ。あたしらは悠ちゃんのためにやってんのよ?新田だって、泣き虫な悠ちゃんに飽き飽きしてたんだろう 」
「 そっ、そんなわけ… 」
「 …恵君。 」
悠が泣きそうな顔で、恵を見た。その目は、何か訴えてるように恵は見えた。
「 な、マジで受け取んじゃねえよ悠!俺はそんな事、思ってねえよ! 」
恵があわてて悠に言った。すると悠はホッとしたように肩をおろした。
それを見ていた女はほうきを肩にポンポンと叩きながら話した。
「 そんな地味な友情ドラマみたいなの、見たって面白くねえんだよ 」
「 っるせえな。てめえらみたいな痛い奴らには分かんねえだろうがよ、俺らは"信じあってる"んだよ。昔から一緒の、"友達"なんだよっ 」
「 それが何なんだ…よっ 」
大声で女が叫ぶと同時に、ほうきが恵に降りかかってきた。
( あ、やべえ。
…避けれねえや。 )
ゴツッ
-
「 友達を助ける事はいいことだけどね。無茶する事ないのよ。話し合ってすればいいじゃないの。 」
「 俺的に話し合ったと思ったんだけど。あいつらはそう思ってないみたい 」
静かな保健室には、ふたりの声しか響いていない。恵は、そんな保健室が大好きで、怪我してない時もしょっちゅうよっている。
澪や悠も時々来るが、恵がひとりで来る方が多い。
そこに、廊下から明るい声と、おとなしめな声が聞こえたかと思うと、保健室のドアが勢いよく開いた。
「 恵のお姉さんっ!お早うございますっ 」
「 どうも。…お早うございます 」
澪と悠だった。
芽は笑い、「お早う」と返した。
「 ったく、恵ったらまた喧嘩したんですよーぅ 」
「 えっ、そんな僕のせいですっ…恵君は助けてくれたんですよ… 」
そんな楽しげな恵は、少しにやけた。
ヤンキーがいても、喧嘩しても怪我しても。こいつらが居れば何もいらねえ。
この人生がすっごく楽しい。
けれどそんな恵の想いをよそに。
もうすぐ、伝説が始まる。