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＃２９



世界のよき終焉を。
聞きなれた台詞。目の前の現実。
サヨナラ。


「…………」


小刻みに震えるリラの体と、おどおどする由紀の姿。
私は、リラを抱きしめた。
ごめんね。

私は、確信した。


「この世界はもうじき終わるよ。大丈夫。皆一緒だから」


由紀は、おどおどするのをやめて、リラを見つめた。
状況が飲み込めない中、大切なことだけを伝えた。伝わった。

リラが、最後に一言呟いた。

私の目。由紀の目。リラの目。
小さな雨粒が、いくつもいくつも降り注いだ。



「ごめん。ごめんね、ごめんね…」



私の連呼。
私が最後にはなった言葉。


「ごめんね、陸」


由紀はただ、うつむいて泣く。
私が手を伸ばすと、由紀はだまって抱きついた。




世界のよき終焉を。




さあ、帰ろう。
現実へ。