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複雑・ファジー小説
- Re: 戦場の双子 【参照500突破じゃい!!!】 ( No.141 )
- 日時: 2011/04/29 13:07
- 名前: END ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
- 参照: 名前変更「玖龍」から「END」
#30
目に映ったのは、くすんだ白い天井。
私はうっすらと目を開けて、あたりを見回してみた。
白い壁に、あいた窓に、飾られた花に、ベットに、点滴。
看護婦さんが、私の目を覗き込んで、目を丸くした。
そして、隣のベットも覗き込み、さらに目が丸くなった。
「由紀さんと由美さんが起きましたよ!!」
看護婦さんは、そういって走って出て行った。
私が起き上がる。
頭にひどい頭痛が押し寄せる。
絶えて、左を見ると、私の目には、私が映った。
——いや、由紀だ。
「お姉ちゃん!!」「由紀…」
ほぼ同時。
私達は、溢れんばかりの笑顔をこぼした。
思っていることは、同じだろう。
「やっぱり、見たよね?」
先に問いたのは由紀。
私は、大きくうなずいた。
「見た。夢」
私達は、さらに大きく、笑顔を咲かせた。
私達には、知らないことがあるのに。
しばらくして、看護婦さんが帰ってきた。
白衣の男の人を連れて。
「おお、目を覚ましたかね」
白衣の男の人が言う。
にっこりと笑った顔に、私達は答える。
「「はい!」」
「うむ、異常なしだ。明日にでも退院だろう」
白い病院。
ベットの脇の花瓶には、綺麗な薔薇の花。
赤と、白。
花びらが一枚、儚く散った。
窓から差し込む木漏れ日に、目を細める男の人が見えた。
窓脇に腰掛けた男の人は、目線をそらさない。
高校生くらいだろうか。
そんなことを考えていると、男の人が、こちらを見た。
「あ」
一瞬。
男の人の姿は消えた。
「陸兄?」
私は、目線をそらさない。
認めたくない。
認めたくない。
消えた。
落ちた。
そんな私の心を無視し、白衣の人は続ける。
「よし、君達はゆっくり休んでくれたまえ」
そういって立ち去る白衣の人を、唯見送ることしか出来なかった。
由紀は、何も知らない。
私は、何も知らない。
落ちた。
ただそれだけで。
私は認めず、眠りについた。
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