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複雑・ファジー小説
- Re: 戦場の双子 ( No.16 )
- 日時: 2011/03/10 22:26
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: e8jC9Mfi)
#5
「さぁ、準備はいいですか」
青みがかった月が昇った。
扉の前からまっすぐに並んだ桜の並木が、戦に出る私を快く送り出そうとしている。
風が吹き、桜の花弁が散った。まるで、春の雪のように。
「はい、私は行きます。この国の平和の為に」
拍手が起こる。
私は無表情で、道の遠くをただ見つめた。
嘘だ。
分かっていない。分かっていないわ。
皆は分かっていない。
私が今から殺す相手は、自らの姉だということも。殺意を持つこと自体、許されぬというこの国の掟を。
—平和—
平和なんて無い。
二つの国が争う自体、平和などない。
コノ争イハ無意味デアルコトモ。
青い月明かりに照らされて、白い桜がキラキラと輝く。
私はその輝きに負けないよう、精一杯の笑顔を作った。
「皆様、私は必ず帰ります」
嘘だ。きれいごとだ。
私は分かっていた。自分は今日で死ぬんだと。
運命に逆らうなんてできないわ…。
さようなら、王国の人。さようなら、皆さん。さようなら、神様。
サヨナラ、私。
私はまっすぐ、ただ前を見て歩き始めた。
私は誓う。
I' ll sabe dhis world.
この世界を救う。
嘘じゃない。
私が終われば、きっと。きっと——。
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