複雑・ファジー小説

Re: 戦場の双子 ( No.20 )
日時: 2011/03/11 17:38
名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: e8jC9Mfi)

#6


前方から光の影が見える。
——由紀だ…。
後ろにそびえる、巨大なモミの木がガサガサと揺れた。
カラスがやかましく鳴いた。

光の影と、すれ違った。
さやに手を添える。掟、か。宿命、か…。くだらない。
私は、殺す気はない。だって、私の妹だもの。
手を離す。
私は振り返った。


「由紀…」


その影は、振り返り、あの時の笑顔で笑った。
醜く、可愛らしく——。


「お姉さま、会いたかったですわ…!」


由紀が駆け寄る。
私はその白い影を、抱きしめた。強く、強く。私モ、アイタカッタヨ。
嗚呼、有難う。くだらない掟でも、出会えたことに感謝します。

由紀が、一歩引いた。
私の手が解ける。


「お姉さま、私、貴方の為に死にますわ。そうすれば、お姉さまは英雄になれます」


その笑顔が崩れ、涙にぬれた。
私は由紀を、もう一度抱きしめた。


「……宿命など気にするな。私たちは私たちだろう、そうだろ?」


耳元でささやく。
由紀はただ、私の胸で泣いた。

——光の王国の朝鳥キニルがキュルキュルと鳴いた。
私は由紀にサヨナラを継げた。

いや、いつでも会える。
私はこれから、私でなくなるから。