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複雑・ファジー小説
- Re: 戦場の双子 ( No.45 )
- 日時: 2011/03/17 16:50
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
#10
『チリン……リン……』
玄関の鈴を鳴らすと、とても小さな泣き声が聞こえた。私は扉が開くのを待つ。どうしようか?
不安がにじみ、心に染み込む。空っぽの、とても良いとはいえない心に。
空から降ってくる大粒の涙が、私の体を濡らす。
見上げると、暗い空が、強く、大きく泣きはじめた。
「今日は無理かしら…」
私は呟き、振り返る。斜めに見えるのは、黒くて大きなお城だった。そう、それはただ大きいだけのお城。温もりも、色も、何も無い。
その時、後ろでギィと、耳障りな音がした。もう一度扉を見ると、そこには小さな子供がいた。
泣き声はこの子のようだ。
その子供は、体の半分もの大きさのぬいぐるみを抱えて立っていた。
頬は、空の物か、自分の物かの涙で濡れていた。
その子が口を開く。
「お姉さん、誰?そこに居たら寒いでしょ?中に入っていいよ…」
私はその子に向けて、精一杯の笑顔を作った。その子も笑う。
私は濡れた服を、できるだけ絞って、家に入った。その家は、小さくて可愛らしいログハウスだった。
木の香りが漂うその部屋は、とても悲しそうな表情をしている。
なんとなく、そう感じた。
「名前、なんていうの?」
その子の差し出したタオルを受け取りながら私は問うた。
女の子は、とても小さな声で「リラ」と言った。
「リラちゃんか、よろしくね」
私は笑顔で言った。
さっきまでの不安な、悲しそうな表情は消え、リラは笑った。
そして、此処に泊まるように言った。
私は頷いた。なんとなく、私はリラが好きになった。
その夜、リラは話してくれた。
とても辛く、悲しい出来事を——。
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