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複雑・ファジー小説
- Re: 戦場の双子 ( No.67 )
- 日時: 2011/03/26 14:44
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
#15
「さ、出発しよう」
私は、リラに言う。リラは明るく頷き、家の鍵を閉めた。
いつもの桜吹雪ではなく、枯れた黒い木に止まったカラスが見送りと、一声鳴いた。
空はまた、曇りがかっていた。
国境まで、10分もかからなかった。
リラが、嬉しそうに国境を眺めている。そこには、黒と白の境目として、枯れてみすぼらしい花が、風に踊っていた。
リラは枯れた花を、面白そうに見つめて、笑顔を見せる。哀れみの色は見えない。
私は、リラの手をとって、光に踏み込もうとした。
——そのときだった。
急に突風が吹き、国境に壁を作った。透明な、ガラスのような壁を。
——神が私たちを拒んでいるのだ。私たちを受け入れてくれないのだ。
ドウシテ…。
私は光の王女よ。今は黒いけれど、元は光の王女なのよ!?そんな私も見分けられないというの…?
リラが突風でしりもちをつく。
悲しそうな目が、私に突き刺さる。
「何で入れないの?」
リラが叫ぶ。
私は泣きたいのをこらえて、首を横に振った。
「どうして?どうしてなの?私も白に入りたいのよ!イレテヨッ!!!」
リラが泣き出した。
涙が風に飛ばされて見えなくなる。一輪の花が散った。
「バカアァァァァ!!!!!」
リラの叫びが、ガラスの壁に亀裂を入れた。
彼女の赤い目がらんらんと輝く。涙さえも乾いていくような光かただ。
その亀裂は、ガラス全体に広がり、
ガラスの壁は、音も無く割れた。
——この子は何なの…?
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