複雑・ファジー小説

Re: 戦場の双子 ( No.72 )
日時: 2011/03/27 10:28
名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)

#16


「リラ、貴方一体…?」


私の小さな呟きは、最後の突風に飛ばされて消えた。
リラはただ、白の王国を見つめるばかりで、口を開こうとはしなかった。
——私は気がついてしまった。リラの左目に、ドラゴンのタトゥーが現れていることに。
言葉が出ず、ただそのタトゥーを見つめていると、リラの瞳が閉じた。
タトゥーが消えた…。驚いたが、驚きに浸っているのは無理だった。
リラが地面に、うつぶせに倒れこんだ。
リラの下敷きになった枯れた花が、はかなく散った。


「リラ!!!」


私が叫び、リラに駆け寄る。
揺すっても起きる様子はなかった。——心臓が止まった様子はなかったので、安心して、リラの頭を膝の上に乗せた。
その時。


「お前らは誰だ!?」


知らないうちに、すこし霧がかかっていたようだ。
霧の向こう側に、二、三人の影が見えた。
だんだん近づいてくる影から、私は目をそらさなかった。
——だって、どうせ光の兵士だから。
光の兵士は私を姫だと思う。適当にごまかせば、城までいけるだろう。


「姫!?何故こんなところに?」


さっきと違う兵士が言った。
予想通り。


「人が倒れているのを見たものですから。助けなくてはと思いまして」


私は静かに、リラの体を持ち上げようとした。
兵士が駆け寄る。


「姫、この方は私が城までお連れします」


そう言って、一人の兵士がリラをおぶった。