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複雑・ファジー小説
- Re: 戦場の双子 ( No.75 )
- 日時: 2011/03/29 21:25
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
#18
「なかったって…、どういうことですの?」
「いや、本当に知らないんだ」
姉さんが立ち上がって叫ぶ。
私はあわてて人差し指を唇に当てた。姉さんは、少し声を漏らしてそのまま座り込んだ。
姉さんは闇の国のことをよく知っていた。住人を初め、店、家、色々と。そんな姉さんが、リラを知らない。
——リラ、貴方は一体何者なんです?
沈黙は、リラの小さな声によって破られた。
「ん…」
リラが顔をしかめて、起き上がる。左目を手で押さえながら。
——痛いのだろうか?
リラは、自分のそのタトゥーに気がついているのだろうか?
そんな疑問は、当然聞けるはずはなかった。
「お姉ちゃん……が二人…?」
「リラ!大丈夫!?」
リラは、私を見ると、にっこりと笑った。
「お姉ちゃん、私を光まで連れて行ってくれたの!?闇の王女様も居るね!」
リラの言葉に姉さんは驚き、顔を横に向けた。
——見分けられたことに驚き、照れているのだろう。
「私、リラだよ、よろしくね!」
姉さんは明るい声に、顔を少しだけこちらに向けて、よろしくと消えそうな声で言った。
リラがさぞ可笑しそうに笑う。
「照れ屋さんだなぁ、こっち向いてよ!あはははっ!!」
沈黙の続いていたこの部屋に、一筋の光が舞い降りたようだった。
リラを疑う気持ちも、不思議がる気持ちも、嘘のように消えた。
——これがその子の能力なのかもしれない…。
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