複雑・ファジー小説
- Re: キリフダ ( No.9 )
- 日時: 2011/06/19 14:48
- 名前: モンブラン (ID: Oof0JpPa)
第七話『鬼』
「こいつで番号を打つと、その番号の奴の居場所が解る。どーやらこいつが損益ってやつなんだろうな。あ、鬼は赤い点でデフォで映ってる。」
画面には玄雪が指さした赤い点の他に、俺達の位置を示していると思われる黄色い五つの点がある。こいつがあればわざわざ集団にならなくてもよかっただろう。しかし……。
「……なんでもっと早くに言わなかった?」
「僕もこれが何だか解らなかったんだよ。」
どうやら俺達のいる集団には朱炎、青草、白金はいないらしい。
「蓮と鋼は一緒だし、焔も鬼から遠い場所にいる。僕らのグループも鬼の居る場所からは程遠いから、少なくともしばらくは大丈夫だよ。」
「……そうだ、もう一人追加してくれないか?」
「良いけど、何番?」
「そうだな……そうだ、あいつにしよう。」
「あぁ〜、かったりィ〜……。」
朱炎は、歩く速さが遅いからなのか早くも集団から孤立していた。
なに、こんなのは慣れている。問題なのは他の仲間……蓮、鋼、そしてユッキーこと雹がいないことだ。あと探偵。
特に探偵を除く三人とはいつも一緒に行動していたからか、どうにも落ち着かない。今の自分はソワソワしているように見えるのだろうか。そんなことを考えている間に、他のメンバーは何処かへ行ってしまった。
全く、薄情な奴らだ。まあいざとなったら鬼を燃やせばいいだけだし問題無いか。
そういえば、蓮と鋼は一緒に行動していたはずだ。そっちに行こう。
え?なんでユッキーの方に行かないかって?……ホラ、あいつより蓮と鋼の方が馬が合うからさ。
朱炎は周りを見渡し懐のマッチが湿っていないのを確認した後、他のグループを探しに行った。
「ねー鋼、焔とユッキー大丈夫かな?あとあの探偵さん。」
「あの探偵さんって、あの人に失礼でしょ?確か……フミキリさんだっけ?」
白金と抱き抱えられた青草は、そんな会話をしながら集団の少し後ろを歩いていた。
先程彼等と会った美濃もこのグループに居る。このグループではどうやら彼が中心のようだ。
「……なあ、待てよ。さっき「蓮と鋼は一緒」って言ってたけど、鬼は近くに居るのか?」
「近いな。だんだん近づいてる。」
文霧の問いに答えながら、玄雪はGPSを操作している。
「十人いる鬼の中であいつらの周りに六人も鬼が居る。まずいぞ、このままだと……。」
「ねえ、なんかあそこにいない?」
青草が白金に話しかけたその時、集団の先頭から急に声が上がった。
「鬼が来たぞ!早く逃げろ!」
その声に応じて、グループは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
鬼は散り散りになった参加者を追いかける。
「大丈夫なんですか美濃さん、早くしないと一網打尽ですよ?」
走っている最中、男が美濃に話しかける。
「大丈夫。少なくとも。」
「え?それどういうことですか?」
美濃は後ろを振り返るとこう言った。
「肉食の動物なんかが得物を狙うときは、大抵群れから少し離れた位置にいる者を狙う。だから心配ない。」
確かに、美濃は現在集団の先頭に居る。ここなら鬼に追われてもそう簡単には捕まらないわけだ。
「二人は大丈夫なようだが、何人か捕まってるだろうな。……で、なんであいつの番号まで指定した?」
GPSを凝視しながら、玄雪が文霧に聞く。
「いやあ、司令塔がどんな動きをしてるのかがちょっと気になってね。」
第七話『鬼』 終