複雑・ファジー小説

Re: bird cage in Darkness ( No.1 )
日時: 2011/04/10 13:37
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: z9uqPrLL)

第零話


僕には、親がいない。

そのわけを知ったのは、僕が五歳の時。
僕を育ててくれている少年が、僕に絵本を読んでくれた時に、子供には親がいるということを知った。
僕はその絵本を読んでもらうまで、親の存在なんて知らなかった。

「ねぇ、義兄さん。僕には、お母さんはいないの?」

僕は義兄さんの目をじっと見つめ、そう聞いてみた。
それを聞いた義兄さんは、悲しそうな顔をして、白く冷たい手で僕の頭を撫でた。

「ごめんね。今は、そのことは教えられないよ。大きくなったら、教えてあげる」

義兄さんはそう言って、僕の頭を撫でていた手を、僕の頬へと滑らせた。
頬に義兄さんのひんやりとした手の感触が伝わる。僕は義兄さんが質問に答えてくれないことを不満に感じながらも、その時から、親のことは聞かなくなった。
義兄さんはそんな僕を見て、申し訳のなさそうな顔をして、僕の頭を撫でた。



今、僕は十四歳だ。
「大きくなったら、教えてあげる」という、義兄さんの言葉は、まだ僕の頭に残っていた。
それは、義兄さんが幼い僕に辛い思いをさせたくないからということは、よくわかっていた。



でも、知りたかった。
僕の親が、いないわけが。