複雑・ファジー小説

Re: 吸血鬼street【キャラ募集中!!】 ( No.12 )
日時: 2011/05/03 22:18
名前: 郷里 (ID: 8Sk6sKy2)

    〜第四話・忍の行方〜
 
「どんだけ広いんですか!ここは!!」

忍はいらつきながらも,屋敷の中を走り回った。

「こっからは,通らせへんで・・・」

忍は驚きながらも,声のする方をみる。
 そこにいたのは,紛れもないあの屡羽緋だった。

「屡羽緋!!」

だけど何かが違う。屡羽緋であって,屡羽緋ではないように感じた。

「手加減せえへんで!!」

屡羽緋が鳥の姿に変わり,忍に襲いかかる。

「やめなさい!屡羽緋!どうしたんですか!?」

そんな忍の声を無視し,屡羽緋は向かってくる。
忍は,屡羽緋の瞳を見ないで戦う。もちろん,操られるからだ。鳥の後ろを忍のツルが追いかける。そのすきに,忍は隣の部屋に入りこむ。

「そこは!!」
「?」

忍は不思議に思いながらも,その部屋に入り,鍵を閉めた。

「ここは・・・!?」

驚くのも無理はない。そこには,他の部屋とは比べものにならないような,豪華なあしらえがされていた。

「よく来られたのぉ〜秦條家の忍殿・・・」

声のする方を見るとそこには,白い狐がいた。

「狐が・・・喋った・・・!?」

説明しよう。ガベルの一族では,ある程度,練習を積み重ねると,動物の時でも喋れるのだ。

「長老!!ご無事ですか!?」

ドアを蹴り破り,屡羽緋が飛びこんできた。

「屡羽緋・・・下がっていなさい・・」
「えっ?でも・・・!!」
「わしに口答えする気か?」

屡羽緋は悔しそうに,部屋から出て行った。

「どういうことですか?長老とやら・・・」
「ふむ・・まず自己紹介をしようかの・・・わしの名前は,狐紀(このり)。ガベルの一族の長老・・・能力は,白狐じゃ・・」
「私の説明は要らないようですね・・・」

狐紀はフッと笑いながら,

「それじゃ,本題に移ろうかの・・・」
「屡羽緋について・・・」

狐紀はフウとため息をつきながら,話始めた。

「屡羽緋はガベルの一族の中でも異例の奴じゃった・・・自分たちが短命種と言うことを知りながらも子孫を残そうとせんかった。屡羽緋に想い人がいたのじゃった。ある日虎雅(くうが)につけさせてみると,相手は【レベル=S】・・・わしは必死にあやつを止めた。だが,わしの言葉は届かんようじゃった。」 
「それで,屡羽緋の命が残り少ないから,せめて和佳奈様に看取って欲しいと・・・?」

狐紀は少し考えながら,

「そうじゃ・・・」

忍は頭にきた。

「そのために和佳奈様を危険な目に遭わせたんですか?」
「あれは虎雅が屡羽緋を思って,行動を起こしてしまったんじゃろ。貴方の匂いで・・」

忍は不思議そうに聞く。

「私の匂い・・・?」

弧紀は驚いたように,

「まだ知らなかったのか!?屡羽緋と兄弟だと言うことを!!」
「私と屡羽緋が・・・きょう・・だい??」

忍は言葉を失った。信じられなかった。

「それでは,私はガベルの・・・」

そこまで言うと,部屋の扉が思い切り開いた。

「長老!!」

入ってきたのは,キャメットと和佳奈だった。

「忍さん!!」
「長老から離れろ!!この一族の面汚しが!!」
「猫さん、なんて事言うの!?」

すると、キャメット・・・いや、虎雅が悔しそうに・・・

「あなたは何も知らないんだ!!屡羽緋の事もそいつの事も!!」

虎雅が忍を指差して言う。
 和佳奈が忍に駆け寄りながら

「忍さん、大丈夫ですか?」

忍の肩に触れようとした瞬間、忍は和佳奈の腕を振り払った。

「触らないでください!!わたしは・・・もう・・・」

すると和佳奈は忍の隣に座り込み

「そんな事・・・知ってましたよ…?」

「え?」

そうなのだ。和佳奈は人一倍鼻がいいのか、忍と屡羽緋が同じ匂いだということを知っていたのだ。

「忍さんは忍さんでしょ?私には忍さんがガべルの一族だろうが何だろうが、そんな事は関係ないんです。」
「和佳奈・・・様・・・」

二人が感動に浸っている間、虎雅の怒りは収まらなかった。

「・・・っざけるな!それでは屡羽緋の想いはどうなる!!あいつはずっとあなたの事を・・・!」

そこまで言うと、忍の声が遮った。

「和佳奈様を危険な目に遭わせたんです。いくら実の弟だからといって、その報いは受けてもらいます・・・」

忍は和佳奈をお姫様だっこし、二人に背を向けた。 
「・・・くっ!!」

虎雅は何も言い返せなかった。本来通常の吸血鬼が【レベル=S】の吸血鬼に害を及ぼす行為は死にも値する。それは、【レベル=G】であっても同じだ。
 
「最後に一つだけ聞きたい・・・」

忍が二人に背を向けたまま、言う。

「わたしの母は?」

二人が俯きながら、長老が答える。

「2年前から・・・病で寝込んでおる・・・」
「そう・・・ですか・・・」

その答えを聞くと、忍はまた歩みを進めた。
和佳奈はその後、自分でも気付かないうちに眠っていた。
 その時、忍は何を思ったのか…
 次の日、和佳奈が目を覚ますと忍は屋敷にいなかった。   


 コメまってまーす。