複雑・ファジー小説
- Re: 現実逃避超空間 『ゲーム』開始—— ( No.74 )
- 日時: 2011/05/07 00:58
- 名前: 風そら (ID: .pTubGvP)
【第四章】
信 ず
「なっ…」
直人が焦る。
「消えた…わね」
車もなくなっている。
なぜ今まで気づかなかったのだろうか。
ちっ……
あの表を見てどこかに消えたのか…
何か考えがあるのか
なぜか頭の中が異常なまでに回転した。
「23/106…」
「あ?」
直人が間の抜けた顔をした。
「前美佳が言ってたTPウィルス感染者数だ。
仮にその106人が全員人質管理部だとして、1グループ7班だったとしたら——」
「A〜Fまでで42班」
美佳が計算する。
「1班二人か三人…」
直人が顔をしかめた。
「明らかに人が少なすぎる。
ここまで班が多いならせめて1000人は必要だ」
「だとしたら感染者は約200人…」
「そして1班だいたい20人ぐらいね」
「いくら大規模な組織でも1000人は無理だ。何かしら方法があるはず。たとえば——」
「人が増えるとか?」
直人が一番理想的で、なおかつ非現実的な事を言った。
「それだ!!
美佳が千里眼で『ヴァーリーが幻影を作れる』事を聞いた!!」
「それでメンバーを次々に増やしていく…」
美佳が手をあごに当てて言った。
CSA
「つまり、ヴァーリーの本物を潰せば向こうの戦力は激減する」
直人が言った。
「ルティアはそれに気づいて」
「ヴァーリーを探し始めた」
美佳が言った。
完璧な理論だが二つ問題がある。
「だがルティアはヴァーリーの事は知らないはず。
美佳がそれに気づいた時にはあいつはまだいなかった」
「俺達はそれ以前にCSAに狙われていた」
「もしかしたらルティアはそれを知っていて…」
美佳が言った。
「俺らをつけてたのか…?」
直人が声のトーンを低くして言った。
「それともう一つ」
「ヴァーリーがどこにいるかでしょ」
美佳も頭が働くらしい。
「あぁ、ヴァーリーの居る場所を知っているとなると」
「CSAの仲間か、美佳みたいなハッキング野郎だ」
直人が舌打ちした。
「後者だと良いんだが」
「どちらでもないと思うわ」
「「!?」」
美佳……
「どういうことだ」
直人が言った。
美佳は軽く息を吸い込んだ。
「この世に存在している制御センターは二つ。一つは現実世界に、もう一つは裏世界に。
裏世界と【SPACE】は、やり方さえ知っていればいつでも出入りできる。
現実世界とは今現在通信の手段が取れない。というか、取れなくしている。
つまり、これだけの情報から整理すれば、CSAは裏世界に引きこもっている。
今はゲームが始まったからどうだか知らないけど。
もしルティアがなんらかの手段でそれを知っていたら?
CSAでなくても、【SPACE】にある制御センターに関係してる人だったら絶対分かるはずよ」
「正直言ってCSAは頭が良い。そういうことは前もって防いでいるはずだ。現に、リストにも裏世界の監視班があった」
直人が言った。
俺はうなずく。
「直人の言うとおりだ。あのタイミングでルティアが出てくるのはやっぱりおかしいし、
『敵が持っていたウィルスで感染した』というのは嘘臭い。
ここはCSAの仲間だったって考えた方が筋が通る」
「でも、そうと決めつけなくても裏世界の入り方は分かるはず——」
「どうしてそこまで庇うんだ?
あいつとは出会って一時間しか経ってない。
今なら敵も同然だ」
直人が言った。
とたん、美佳の顔つきが変わった。
どんなふうに?
それは俺にも分からない。
「直人は…信じないの?」
「え…?」
直人は、突然の質問に言葉がつまった。
「ルティアは悪い人じゃないわ、きっと」
「なぜわかる」
俺は言った。
美佳はにんまりした。
「『人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ』」
「……」
一瞬ポカンとしていると直人が付け加えた。
「メロスだな」
あぁ
と、その言葉で思い出した。
走れメロス
まぁ、詳しいことは知らないが英雄だったらしい。
美佳はうなずいた。
「あたし達も…やれること、やんなきゃ」