複雑・ファジー小説
- Re: 現実逃避超空間 参照400ってこれバグだよね? ( No.80 )
- 日時: 2011/05/22 05:31
- 名前: 風そら (ID: jeOaq3UZ)
【 CSA 人 質 管 理 部 統 合 幕 僚 長 伊 藤 俊 介 戦 】
消えたルティアは伊藤の後ろに現れた。
斧のような剣を握りしめ、伊藤のすぐ後ろから横に斬る。
が、感触のないまま剣は右に流れていく。
「一応聞いておくって言ってんだろ。俺も男だ、ルールには忠実だぜ」
声は上から聞こえた。
ルティアは顔をしかめて斜め後ろに向けた。
「銃に、薬に、手榴弾。なんでもついてるよ〜」
ビルの屋上に立っている伊藤は手をぶらぶらとさせながら「ケケケ」と笑った。
「舐めるのもいい加減にしろ」
ルティアは膝を曲げた。
跳ねる
落ちる
斬る
跳ぶ
殴る
「っ!!」
つい二秒前まで伊藤が立っていた高度まで跳ね上がったルティアの背中に拳が飛んだ。
背中から紫の炎が上がる。
『ジワワ……』
そう効果音を入れてもおかしくないほどの鈍い痛みが背中を襲う。
『ドッ!!』
ルティアはビルの壁に突っ込んだ、いや、突っ込まれた。
アニメなら、ものすごい音と共に壁に穴が開くような場面だが、現実にはルティアの体はむなしくコンクリに打ち付けられる。
が、落下した時には何事もなかったかのように着地する。
背中が痛んだ。
「ッ!!!」
出血してるのが見なくてもわかる。
そう、あの炎は他の細胞を一瞬にして破壊する——
ルティアの頬に汗が流れた。
伊藤は両手に炎を宿しながらニヤリと笑った。
「普通なら骨折して立てない勢いだが、なんともないとはさすが感染者のことはある」
「実力だッ!」
『ガシャ』
剣が変形して銃になる。
『ダダダッ!!!』
発砲音と、後ろの電柱に『パパパ』と跳ねる音だけが聞こえ、また伊藤は消えた。
「遅い」
耳から伝わる電気信号は反射的に首を後ろに動かした。
後ろを振り返り、伊藤の顔を見た瞬間また拳が飛んでくる。
『ゴフッ』
見事に吹っ飛ぶ。
鮮血がアスファルトの上に飛び散った。
「ちっ…」
ルティアは態勢を整えなおすと頬を触った。
さっきの切り傷が開いたのと、今のでかなりの出血をしている。
だが、『一瞬にして細胞を破壊する』という割には顎まで消しかけられないのが不思議だ。
それに、弾丸の速さはいくら感染者といえどよけれないスピード。
つまりこっちの動作さえ見せなければ……
TSウィルス感染者=神 ではない。
S P
「馬鹿が。俺とお前とでは格が違うんだよ」
伊藤が目が鋭くなった。
背中と頬のダブルパンチに耐えながらルティアは右に跳ねる。
向こうの能力は細胞破壊ただ一つ…
つまり、殴る蹴るの近接攻撃が主体。
こっちはどちらでも…
しかし、近づかれては意味がない。
それにはやはりスピード……
ルティアは親指と中指をくっつけた。
『パンッ』
剣を構えて突進する。
伊藤は翻り、後ろから蹴りを入れる。
が、
ズシャ……
と、剣が伊藤の背中から突き刺さった。
伊藤は顔をしかめたまま立ちすくんだ。
ルティアは剣を抜いた。
伊藤の胸部から派手に出血した。
「バーカ」
「!?」
伊藤は影よりも早く動き、ルティアの真横に現れた。
「!!」
反射的に距離をとる。
どういうことだ……
心臓は貫いたはず……
伊藤のコートには確かに大きな黒い染みがついていたが、出血はしていない。
ただ、ニヤニヤと笑った表情を浮かべるだけだ。
これが伊藤の言う格の違いなのか…?
ルティアが絶望した時、不意にギラギラと輝く太陽が目に入った。
!!!…なるほど……
ルティアは地面を一蹴りすると、そこらじゅうを跳ねまわった。
手を太陽に向けながら。
地道な作業だが……これでしか…
ルティアは狙いを伊藤につけた。
『ゴッ!!!』
剣がコンクリに突き刺さる。
伊藤はポケットに手を突っ込んでヒョイヒョイと攻撃をかわしていく。
これぐらいで…
ルティアは全神経を右手に集中させた。
そして……
『カッ!!!』
目の前を白が支配する。
ルティアはぐらつく伊藤の背後に回ると、後頭部に銃口を向けた。
『ドシュッ!!!!』
はたしてそれが効いたのかは知らないが、視界が開けた時には伊藤は消えていた。