複雑・ファジー小説

Re: 現実逃避超空間  ( No.89 )
日時: 2011/06/13 17:12
名前: 風そら (ID: w/0gLVjW)

【 CSA 人 質 管 理 部 統 合 幕 僚 長  伊 藤  俊 介 戦 】


『ザンッ』
伊藤の右腕は野球投手のように振られ、帯状になった紫炎が鞭のように地面をたたきつける。


「よっと」
軽いステップでそれを右にかわすと右手に力を籠め思いっきり押し出した。


滅却弾——


が、弾は途中でグワンと右上へ急上昇すると、隣のビルに激突した。伊藤の髪がフワっと舞う。

「コントロールができてねぇなぁ。こんなんじゃ、計画を執行することなんざ到底不可能だ」
伊藤はよけることもなくこちらを見据えた。

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぞ!!」

俺は右腕全体に炎を巡らせると、走って伊藤に近寄った。
そして上から思いっきり腕を振り落した。


風を切る音が耳に入った。


伊藤は少し体を後ろにそらすだけでそれをよけると腹部から炎柱を噴き出した。

「ッ!!っ…」

紫炎は俺の腹に侵入した。



とっさに後ろに跳ねて距離をとる。

一蹴りでこんだけ飛ぶって美佳みてぇだな…


大出血をしているのにもかかわらずそんな事を考える。

「…!!」
腹筋に力を入れると、メキメキという音と共に傷口が皮膚で覆われた。

伊藤はその様子をニヤニヤしながら眺める。


「やはり細胞の活性が速いな。だが、」


伊藤は消えた。



「!!」

あたりを見回すがどこにも見当たらない。

冷や汗が背中を伝った。



と、その瞬間視界が紫に覆われた。


「そんな理屈ぶっ飛ばすほど早く、てめぇを消してやるからよ」

紫炎は足元から体全体を包んでいた。


その時、全身が真っ赤に染まっているのが分かった。

なるほど、すっぽり包んでそのまっ…














「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」















麻痺していた痛みが駆け巡る。

全身を八つ裂きにされたかのような縛り付けられる痛み———


声を出そうとしても喉が焼けただれるように痛い——




「ぐっはぁッ!!」

声が出た、目が見えた、音が聞こえた。


全身の痛みも徐々におさまり、ガクリと膝を落とした。



血さえも炎により消え去り、存在していなかった。


「安心しな。細胞の再生は命に関わるほど急速に活性化する」
伊藤の読んでいた目がうざったらしい。



痛みはもうなかったが体はまだ動かなかった。



こんな奴…マジで倒せんのか…?