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　この世界は、人間の口頭だけの平和と、金持ちと権力者だけの平和が存在する。　平和って、何だろう？
　自分が安全で、快適に暮らせればそれが平和なのか？
　不条理な言い訳のような平和で、大体人間と言う生き物は騙される。　騙されて気づかないということは、人間は平和でなくとも平気だ……という事か？
　何だろう、考えれば考えただけ、どんどん混沌としてドロドロで形が無くなっていく。　考えるのが悪いのか？　もとよりその平和には原型が無いのか。
　特に気にしたことは無いが、この人間界を作り上げた科学を与え、知恵に知識を与えたこの私が、それを黙って見ているわけにも行かないだろう。　

　「時間が経てば、目を覚ますと思っていたのだけれど……」

　世の中には、時間が経って解決する問題と、時間とともに深刻化する問題がある。　恐らく、人間の平和はその後者。
　不条理な平和を壊し、新たな軸の通った平和を作る。　そして、後は放置すれば、人間は勝手に前へと進む。　だったら、軸を通した平和を与え、勝手に進ませるのがいいだろう。　
　色々と人間のことを考えているが、私は特に人間がどうなろうと構わない。　小さな子供が、地を這いずり回る蟻を眺めて何をしてどうなっていくのかを観察しているのと同じようなことなのだから。
　だけど、私が人間に知識を与えた以上、人間の管理をしなければいけない。　

　…………。

　何の知識を与えたって？　……それはね、悪魔の力の一部。　

　“科学”……だよ。　君たちの使う電子から、簡単な炎の原理まで。

　私が、人間に召還された時から始まった。　この愚かな人間の過ちと言う無間地獄に……私の寿命は追いついてしまう。　だったらここで、不条理な平和と言う名の過ちを、正してやる必要が……あるだろう？
　けれど、人間はそれに対し、必死で抵抗することも分かっている。　だったら、私はその不条理を、理不尽な力で圧倒するだけ。

　もちろん、その後で私の与えた知識も……返してもらうよ？　

　ニンゲン……。　君たちに与えたその力を、ね。