複雑・ファジー小説
- Re: 不条理を塗りつぶす理不尽 ( No.15 )
- 日時: 2011/04/06 14:43
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「起きろ! ジン!起きろ〜!」
耳元で不快極まりない金切り声が木霊する。 何か、今にもキーンとかって漫画みたいな効果音が三次元に飛び出てきそうになる……。
「いい加減ッ! おっきろぉぉッ!」
「うるっせえッ!」
耳元で叫んでいたのは他でもないカトレアなのだが、
「何で、叫ぶ。 俺を起こせと言ったか?」
「言った」
「何時?」
「3時間前に」
「嘘だ」
「本当」
「証拠はあるのか?」
「これでいい?」
カトレアは、自分の上着のポケットを探るとなにやら古ぼけた携帯音楽プレーヤーを取り出すと、大音量で
「朝だよ。 起きないの? 人間は朝起きて昼間に活動する生き物だけど」
「いや、あと三時間立ったら起こしてくれ」
「了解」
ブツンッ!
と言う音が、ジンの目の前で展開された。 流石にここまでされると、反論は出来ない。
なんて奴だ……いや、ここまでまさか、見越して?
「分かった、起きる。、 で、お前にそそのかされて俺は一体何をすればいいんだ? どうせお前も不死鳥とはいえ悪魔だ、何か企んでるんだろ?」
ジンの言葉に、カトレアは驚いたように頷き、
「キミには、私が人間に与えた科学と魔術を取り返す手伝いをしてほしいんだ。 特に、それ以外に要求は無いよ」
「あのなあ、俺はそれの見返りを貰ってねえんだが」
「間違っての召還」
「ああ、失礼しましたよ、このやろう」
ベッドから飛び起きると、ジンはテーブルの上においてあった酒を一気に飲み干した。 寝起きに酒を飲むという習慣は、彼の師匠の悪習という悪習だった。 だが、彼にはそれがプラスに働くらしく、
「体も温まった。 で、如何するんだ?」
肉体の代謝を一気に上げ、運動能力を上昇させると言う奇妙な体質を持っている。 ちなみに、彼の師匠、ジャックには一切そのような作用は無く、ただ、無類の酒好きというだけだった。
ジンの問いにカトレアは少し考え込み、
「まだノープラン」
あっけなく、一番聞きたくなかった答えを返す。 何で、科学と魔術を奪い取りに来た悪魔がノープランで地上に出て来るんだよ!
可笑しいだろ。 普通は計画立ててくるものだろ!
「あのな、本気で人間相手取るつもりで来たのか? 確かにお前は相当理不尽とでも言う力があるのは分かった。 だがな、人間を甘く見るのは頂けない。 人間には、不条理な力があるからな。 特に、俺のライアやイミテーションが良い例だ。 相手を問答無用で騙したり、自分のフィールドに誘い込んだり、応用力がある」
ジンの言葉に、カトレアは少し考え込み、
「それぐらい、知ってるよ。 私はその不条理が大嫌いで、人間を滅ぼすんだから。 科学や魔術が人間のそれに使われてると思うと、ぞっとするね」