複雑・ファジー小説
- Re: 僕等と普通と神様と。 ( No.3 )
- 日時: 2011/05/16 22:29
- 名前: 香兎 ◆kyRFGkO1TU (ID: h9rhVioE)
序章 ただ普通が良かったのだ
バシ、と頭に当たる固い板のようなものを感じた。
何だ?僕の安らかな眠りを邪魔するなんて……
五月某日
僕は
普通
だった。
「…わ…小川、起きたか。授業中に寝るとは堂々だな」
「あ、センセー。僕寝てましたか?」
「アイルー大好きだよー…って呟きながら、幸せそうに寝ておりました。はい授業再開するよー」
ぎゃははは、という他愛のない笑いがクラスに響きながら僕、小川葛馬は眠気と戦っていた。
左後ろの親友、渡辺苓はニヤニヤしながら『無様だな』と小声で言った。
くそう、寝ないでモン○ンを全クリしようとしてた僕がバカだった…
ふええ……眠い。脳が半分機能してない。
ガツン、と白いチョークがおでこに命中した。
素晴らしい命中力。流石野球部顧問サン。
それのお蔭で目が覚めましたセンセーありがとう。
「———…という事でこれは全て基本問題が元になるからなー、復習しておくように。これで数学の授業を終わる」
さあこれで帰れると思った時、苓に腕を引っ張られた。
「なあ、今日さー新作のゲーム見にいかね? 俺の兄貴のツテで早く見られるらしーんだ!」
「……スマン、今日は弟たちの迎えに言ってやらねーといけねーんだ。母さんが残業だから」
「うひょー、このブラコンシスコン!」
「……うるさい」
僕は自分の鞄を取ると、荷物を全て詰め込み始めた。えーと……ゲームの攻略本に攻略本に今日の晩御飯の買い物メモと…
「あ、今日お前んち味噌胡麻ズッキーニ? むっちゃ美味そう…」
「今日に限って来るなよ、今日僕料理当番だし…」
「だってお前の料理プロ並みに美味いし俺の嫁に来てm「黙れ苓」
母が某企業の通称『花形』という所で働いているバリバリ仕事ウーマン。父は小さい頃離婚した。
てか今なんでこんな事を……
その時、バンッとクラスのドアが開いて、つかつかと黒髪の少女が歩いて来た。
「葛馬! 苓! 今すぐ屋上へ来る! てか強制的!」
「ちょ……」
そして僕はひょいっとお…お姫様ダッコされ、そのまま担がれていった。
少女——————汐音は廊下を凄い勢いで走って行く、目が回りそうだ。
「あの……先輩? 汐音先輩…お姫様ダッコはどうかと……」
「だって葛馬致命的に足遅いじゃん、それに私より軽いとか……」
そうです僕は足遅いし体力無いし筋肉はこれっぽっちも付く筈がないし……汐音先輩より軽いだと?嘘…
ネガティブ思考は止めよう。
そういえば苓はどうなったのかと見てみると、
後ろにぜぇぜぇと息を吐きながら追いつこうと走っている苓の姿があった。スマン、苓。
でもこの状況ヤバい。階段を超人的速さでのぼっていく、僕気絶寸前。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ……」
.ただ普通が良かったのだ
もう既に、普通という日常は無かったのかもしれない。
.