複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.21 )
- 日時: 2011/04/07 18:59
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
第 襲
13
話 撃
フェルトシティはロートスシティよりか人も店も多い。
流石は都会、と言った所か。
ただ数だけではない。 種類や、同じ類の店でも名前が違う。
人、建物、人、建物。
次々と映る景色を見、途中で若く、可愛らしい女性も見かけた。
早速声をかけようと思ったが、もう奥まで進む人と人の間に映るシエラを見て止めた。
すぐさま人混みを手で体で掻き分け、進んで行くと同時に確信が浮かぶ。
シエラは歩いていない。
どうやら立ち止まっている様子で、しかもその周りの人たちはシエラを避けるように通る。
否、シエラではない。 シエラの前に位置する男達を避けているのだ。
「ねえ〜君〜。 ちょっと俺達と遊ばない? 優しく扱うからさ」
「いえ、こ、困ります」
声を震わせ、僅数センチまで近づく褐色の肌の男に言う。
ロートスシティではこんな大胆な事は全く無かった。
確かに今まで何度か告白された事はあった。 だが、ここまで大胆に、恥ずかしげも無くせまって来る者等はあったことすらない。
初めての出来事に体が震える。
だが、このまま為すがままに流されまいと抵抗する自分がいた。
しかし、足を一歩引いた瞬間に逃がさないよう強くその男が自分の右腕を握る。
「ほらほら、大丈夫だよ。 俺達こう見えても紳士だからさ、早く行こうって‥‥‥」
腕を引くと更に力が強まってくる。
その握力は痛みだけでなく恐怖も伴い、シエラは思わず涙目になる。
が—————————
「俺の彼女に手ぇ出さないでくんない。 失せろよ」
その言葉が聞こえたのは腕に掛かっていた握力が無くなった直後。
自分を握っていた手は無くなり、その腕は逆にユーリに掴まれている。
男は苛立ちながらその手を払いのけ、半歩後ろへ下がった。
「あ? なんだてめえ!! あんま舐めてっとひでぇぞコラァ!!!!!」
「だからこの娘の彼氏だって言ってるんだけどねぇ」
おどけた調子でユーリは言う。
彼を男達は携帯していたナイフを構え、取り囲む。
その殺気丸出しな睨みや体勢を見、溜息をつく。
そして腰を低くし、拳に全神経を集中するように構えた。
よし、これ終わらせて昼でも食うか——————
『緊急事態発生!!! 緊急事態発生!!! フェルトシティから南西方向にキメラの反応あり!!! 市民の皆さんは警察の指示に従い、速やかに非難を——————————』
街中のスピーカーから非常アナウンスが伝えられる。
「やべっ。 いくぞてめえら!!」
恐らくあの男がリーダーなのだろうか。
指示を出し、逃げ去っていく褐色の男を見つめながら他愛もない事を思う。
そのアナウンスが終了した数秒後にポーチの携帯が振動と共にコール音を発した。
腰に携えたポーチの蓋を開け、漆黒の携帯電話を取り出す。
「はい、もしもし。 皆さん御存知ユーリ・ディライバルですよー」
「‥‥‥アナウンスは聞いたか」
「…聞きましたが?」
(何だこいつ昔通りノリが悪いな)
電話越しにいるレインに静かに文句を言う。
しかしそれ程緊急事態なのだろう。 直ぐに真面目に顔を軽く強張らせる。
「それでも言った通り、南西部にキメラが襲撃している。 遊撃隊だからって自分勝手な行動は許さないからね」
はいはい。
その言葉を最後にユーリは電話を切る。
「‥‥‥行くの?」
「ああ。 シエラは戻る?」
ユーリは横目でシエラを見つめた。
その顔は沈んでいて、どうするべきかを悩んでいる。
だが、ふとシエラは自分の脳裏に言葉が浮かんだのを感じた。
———————いい? シエラ。
もし自分が誰かに何かしたい!!って思う時が来たら
その気持ち、大切にしてね。
大事なのは自分がどうしたいか、どうありたいか。
それでダメだったら反省すればいい———————————
「———————行きたい」
その目に迷いはない。
その目に恐怖はない。
ユーリはその姿を、一人の女性の幻と照らし合わせ、微笑む。
「そ。 なら、行きますか!!!!!」
第
1
3
話
襲 撃