複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.30 )
- 日時: 2011/04/07 19:05
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
第 2
2 話
傭 兵 団 の 街
ダンレンスシティ——————
ヴェルゲンズ国西区に存在する街にはこれといった名物などはない。
が、傭兵派遣組織「エンパラ」の本部がそこにはあった。
国軍が実質警護しているわけだが、非常時にはエンパラにも協力要請が回る。
中央区から西区へと飛んでいったため、既に夕方へと刻は過ぎている。
ユーリも列車の中で寝ていたため、未だに目を開けるのが辛い。
そんな彼が目を擦りながらエンパラについて質問した。
「ふあぁ〜。 で、結局エンパラはそんなにすげえのか? 一個師団レベルとは聞いたけど、お前がいると想像つかないんだよな〜」
そんな言葉に少しムスッと来ながらも、堪えながら顔だけ振り向いて答えだした。
「まあボスを除くと20人っつー少ない数なんだけど、一人一人相当な力があんぜ。 特に—————お」
瞬間、レンは前を向いた。
その前には同じぐらいの体格の男。
きれいに整った赤い髪、白いシャツの上に着た黒いジャケット。
蒼いジーンズに銃身の長い拳銃を取り付け、ゆっくりこちらに近づいてくる。
誰だと一瞬思ったが、レンガ一歩前に出る。
「あれ? レン、今まで何してたんだ?」
「何って‥‥‥ボスに言われた命令を忠実にこなしてたけど?」
レンが何気なくそんな事を言ったので、男は溜息を大きくついた。
沈む気分と同時に頭が下がる。
「お前な…いくら『ちゃんとした奴を連れてくるなら時間かかってもいい』って言われてもよー‥‥‥流石にこんなに時間はかけないだろ。 きっと大将、堪忍袋の緒が切れてるぜ」
呆れた風に指摘され、言葉に詰まる。
「ま、まあ結構な手練を連れてきてやったんだから、一ヶ月ぐらいかかっても許してくれるっしょ!」
(一ヶ月もかかったのか‥‥‥)
(一ヶ月もかかったんだ‥‥‥)
レンの素っ頓狂な開き直りを影で聞いたユーリとシエラは頭の中で冷静に指摘する。
「そんじゃな。 俺は仕事があるから。 さっさと大将の所に行ったほうがいいぞー」
「ああ。 じゃあな」
それから続いた他愛もない話は5分間続き、また歩き出す。
「なあ、あいつも傭兵団の仲間なのか?」
後ろにいたユーリがレンの横に並ぶ。
横目で見ることもせず、レンは前に歩き続けた。
「ああ。 あいつはリュア・テイト。 俺と同じ傭兵団の仲間でエンパラの幹部」
「幹部?」
「20人の中から四名だけ、実力者が幹部になるんだ。 俺もその一人だよ」
レンは未だに前を歩き続ける。
だがユーリはレンに向けた視線を戻し、考え込む。
(こいつが幹部ってそんなでもない傭兵団なのか? 否それともこいつだけ弱いのか—————?)
レンが声を上げ、目的地に着いたことを口に出すと、ユーリも顔を上げた。
コンクリート製の角のある建物。
窓の数は正面だと大体30個以上。 三階建てなのか、三列に並んでいる。
真ん中にある大きな扉の前に立ち、レンはドアノブを掴んでゆっくり開け、入った。
それに続いて二人も入ると、それほど多くない人数が周りにいる。
三人に視線を向け、シエラはそれに恐れをなしてか、ユーリの背中を壁のようにして隠れ始めた。
そんな集中した視線も気にせず、ユーリとレンは歩いていると、見ていた中から一人の男が現れる。
黒いスーツ姿で腰にサバイバルナイフを2本携えている。
その男はレンに視線を集中させると口を開き始めた。
「おう、レン。 何だそいつら、新人か?」
「新人見込みだよ。 この金髪、俺に勝ちやがった」
そのレンの言葉に周囲が軽く驚き、ユーリに視線が注がれる。
だがすぐに普通の表情に戻り、レンをまた見た。
「へーそうか。 そりゃボスに報告だな。 奥の部屋にいるぜ、行ってこいよ」
レンはああ、と言い、また歩き出す。
奥にあった階段を昇り、三階まで上がった。
そして廊下を歩き続け、着いた先は木製のドア。
恐らくここにボスと呼ばれる者が居ることが直感で分かった。
レンが沈黙の中ドアをノックし、声を上げる。
「ボス、レンです。 ただいま頼まれた仕事から戻ってきました」
その後、ほんの少しの間の後、ドスのある重たく低い声がドア越しに響き渡る。
「入れ」
このたった三文字の言葉にすらシエラがユーリの後ろで脅えている。
ユーリもまた、その声にかなりの威厳があることが理解できた。
レンはドアを開き、その中へと何食わぬ顔で入った。
ユーリも迷わず入り、シエラが一瞬躊躇いながらもその後を追う。
そしてそこに居たのは、白髪を混じらせた黒髪を無造作に伸ばした、年老いた大男だった。
傭
兵
団 の 街
終