複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.47 )
- 日時: 2011/04/07 19:20
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
第 3 4 話 鬼 の 如 き
の
剣
士
鈍い音、鋭い音。
数多の音が入り混じり、それとともに二人の少年は互いの剣を交わす。
一人は長き直刀を持つ金髪の少年。 一人は八本の刀を持つ黒髪の少年。
しかし、
鎌、矛、盾、弓、銃、中には刃をもたない柄だけの刀。
どう見ても刀とは言えない形状を持つものもあるどころか、そういった物が半数を超えているが、それでも刀。
八本の刀を扱う剣士など信じられないが、それでも剣士。 否、“それこそが彼にとって剣士なのだ”
その中でも一際大きな———と言っても大剣と言うには余り大きくなく、かといって細身でもない、鋸の様な片刃の剣、
“崩鋸刀”を黒髪の少年は構えている。
また、大きく、鋭い音が響いた。
「ぐっ‥‥‥ぉおおああああ!!!!!」
重さを力にする崩鋸刀。 その威力はいくらユーリでも受け止めても強い衝撃が走った。
押し返すのも精一杯。
だが、幾つもの修羅場を潜り抜けてきたレンでさえ、受け止められず、肋骨にひびを入れられたと言うのに、力で押し返すというのはかなりの芸当と言えよう。
もちろん持ち主のルリは意外とは思ったが、先程も受け止められた故に驚きは小さかった。
そうしてユーリは彼から距離をとり、構えを更に固める。
が、それも意味なし。 彼が巨剣を投げつけたからである。
いきなりで驚いたが、縦方向に回転しながら飛んでくるそれを横に飛び、かわす。
ユーリのいた場所の後ろにあった壁の一部は砕け、崩鋸刀が突き刺さっている。
あれ程の重力を持つあれをあのスピードで此処まで投げるとは見かけによらず相当な腕力だ。
それよりも気になるのは彼がその次にとった刀。
刀と言うよりどう見ても鎌なのだが、断じて刀。
彼が絶傷刀と呼ぶ、正真正銘の刀。
左手で取ったそれを右手に持ち替え、クルクルと振り回し、弄ぶ。
双方に上下向きが逆の湾曲した刃が取り付いた鎌で、柄の部分に魔方陣のような紋章が刻まれている。
それを構え、ユーリの許へ駆けて行った。
その刀に少なからず違和感を感じているユーリは刀で受け止めようとせず、完全に体を動かして回避する。
来る斬撃を避け、かわし、逃げる。
決して受け止めようとはしない。 何故なら、斬撃が余りにも危険すぎるから—————
斬る際の空気を裂く音が余りにも鋭く、高く、まるで強い耳鳴りの音—————
それにその次来た斬撃をかわした際、それは彼の後ろにあった木を切った。
しかし、完全に切れ、倒れた。
切ったのだから倒れるのは当然だが、幹の半分までしか刃は通っていないはず。
なのに完全に切り倒された。
やはり、相当な切れ味——————
これを刀で受け止めたら真っ二つにされるだろう。
そうされれば確実に負けるどころか殺される。 そういうわけにはいかない。
絶傷刀の恐ろしさが分かってしまった今、距離を縮めて近接戦闘に持ち込むには危険すぎる。
ユーリはまたも距離をとり、刀を振り被って覇気を込め始めた。
だがそれよりも先に彼の放つ攻撃、否、魔術の方が早かった。
それこそ、
鬼神九刀流
魔術奥義
“絶傷絶命”—————!
何もないところにその刀を振り、その瞬間に幾つもの突風、あの刀の切れ味を乗せた突風が吹き荒れ、ユーリに襲う。
しかし、いくら見えない風と言えど、所詮は覇気で作り出したただの魔術に過ぎない。
相手が完全な自然物ならともかく、覇気によって作り出されたなら、同じ覇気の持ち主、つまり魔術師には“感覚の目”で見破られる。
ユーリもその例外ではなく—————その風は彼にとって“見えて”いた。
すかさず宙返りしながら後ろにとび、多々なる風を掠りもせずかわした。
ユーリのいたそのコンクリート製の地面には綺麗に切った跡が残っている。
普通ならどんな切れ味の刃物でも削り跡が出るはずにもかかわらず、削り取られた模様は無く、本当に切れていた。
ルリはまた絶傷刀を構え、ユーリにまた走り出す。
その途中の道に突き刺さっていた矛、つまるところ、矛槍刀を抜き、左手に持つ。
そして、右手に合った絶傷刀は宙へ投げ、その瞬間に彼は走る事をやめ、静止した。
「‥‥‥何の真似だ?」
勝負の最中に敵前で突撃を止めるなど不自然以外の何者でもない。
ユーリは未だ警戒しながらルリを見つめる。
そして、矛槍刀を両手に持ち、構え、神経を研ぎ澄ませた。
「いや、折角だから鬼神九刀流・乱舞奥義も見せておこうと思ってな」
不敵に微笑むその口角に、逆にユーリの方が彼から殺気を感じたが、同時に宙にあった絶傷刀がルリの目前まで来た。
その時、彼はその矛を突き出す。
鬼神九刀流・乱舞奥義其の五——————
身傷膨大
高い貫通力を持つ矛槍刀。
それによって切れ味の鋭い絶傷刀を飛ばし、その切れ味に貫通力を乗せる。
そうしたらその威力はどうなるのだろう——————
それを受けて、無事で済むのか。
答えは“否”。
「ぐおおおああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ユーリはその攻撃を受けてしまい、飛んできた絶傷刀と共に後ろのビルの側面まで吹き飛ぶ。
絶傷刀はビルに突き刺さり、ユーリもまた、ビルに体を叩きつけられた。
そして、遠くで見据えている彼は言う。
「鬼神九刀流の力を見誤るなよ」
き 如 の 鬼 の 剣 士
終