複雑・ファジー小説

Re: Gray Wolf  移りました ( No.55 )
日時: 2011/04/07 19:23
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)


  第
        1
                  回  想  と  決  心
     4
           話




南東区都市ソルディア
中心都市サウストセントラルの次に付く南東区の大都市であり、人はかなりの多さ。
そこの駅の前にルリはいた。

一週間前、旅の次の目的、西の隣国クリエスへ向かうべく、この街で列車に乗った。
その時は彼の隣に一人の少女がいた。



『ユナ・カナザワ』





『神紗和 優奈』



その少女と、共に——————————



——————————


「瑠璃ぃー? 早く行こうよ」
肩に掛かる長さのふわふわした黒髪を揺らしながら跳ねる様に歩く少女が振り向いて言った。
自分の後ろに居る————————美奈月 瑠璃を。
薄い黄色の上着の下に白いシャツ、上に結んだ長い黒髪と言う容姿の彼は、呆れながら彼女へ付いている。
「そんなに急がなくてもまだ時間はある。 急いだらその分待つんだぞ」
「ええー。 都合良くいかないなぁ」
ぶぅーと頬を膨らませ、彼女は歩むスピードを緩め、そのおかげで歩き続けていた瑠璃も追いついた。
御淑やかなイメージのある和服、浴衣を着こなしてはいるが、それとは対立的に天真爛漫な雰囲気を全身から醸し出している少女、

神紗和 優奈

瑠璃の横へ立ち、楽しそうに歩いた。
「そんなに楽しみなのか?」
「うん! だって瑠璃と一緒に新居を探せるんだもん! 嬉しいに決まってるよ!」
右腕に抱きついた優奈が重心をかけるも、瑠璃はバランスを微塵も崩さない。
—————————新居、か
一応ヴェルゲンズ語は2人とも覚えている。
エゴリス語に続いて使っている国の多いヴェルゲンズ語はヴェルゲンズ近隣国ではほぼ全て使っている。
だから、しばらくの間は言語に困らない。
お金だって、色んなところで用心棒をしていたために十分にありすぎる。

別に日天が悪かったわけではない。
むしろ故郷だけに一番好きな国だ。
だが、危険すぎた。
世界で最も治安の良い国として知られてはいるが、しかし危険人物がいないわけではない。
しかも、それは瑠璃と優奈を狙った。
2人だけを、殺そうとした。
毎日、毎週、毎月、毎年、山、川、村、街、いつでもどこでも殺そうとした。
それはたった一人の女。
見覚えも聞覚えも増してや話した覚えも無い、女。
人間の筈なのに何十体ものキメラを操り、それで瑠璃達を襲わせた、女。
自分達の故郷が巻き添えになるかもしれないその過激な行動から逃れるため、2人は外国へ去った。


だが、甘かった。





無人の列車に乗る最中に、豪雨が降り始め、その時に列車の上からズンという重みのある音がした、
瞬間、巨大な物体が天井を突き破って来た。

その正体は、キメラ。

翼の生えた仁王立ちの獅子。
突き破った天井の穴からも、似た形状のキメラが数匹飛んでいる。
その中の一体に、一つの人影を見た。
よく見えないが、シルエットを見る限り、かなり細い。
それで察しが着いた。
日天に居た時に襲った女であると——————————




それからは複数のキメラを鬼神九刀流を用いて撃破したが、逃げる途中で優奈と逸れてしまった。
連結器具が外れてしまったため、未だ引っ張られていた車両に居た瑠璃と、離された方にいた優奈は別れ、瑠璃だけは無事だった。
だが、途中の駅で降り、線路を辿って、別れた所へ行った。

が、そこには無残に壊された車両と、その原因を探ろうとしているのであろう軍人と警察と、野次馬しかいなく、しかも死者も無いと言う。



ということは、優奈は生きている。






僅かな希望で決心した瑠璃は、また、一から探すべく、目の前にあるソルディア駅へ、足を進めた。








      回


      想


      と           終


      決


      心