複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.56 )
- 日時: 2011/04/07 19:24
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
第 4
ト レ イ ン ジ ャ ッ ク
話 2
一週間前の事もあって、当時と同じ線路の列車は使えない。
だから、違う線路で他の場所へ移動する。
その行き先は前に起きた事件の直前の駅。
そこに向かうべく、現在列車の車両の中で座っている。
————————何故彼に頼んだのか。
ユーリ・ディライバルに。
一度は敵同士だった間柄。
今は協力し合う間柄。
勿論敵となった原因は勘違いからなったものだが、そんな事で簡単に信頼できるはずがない。
それなのに、彼に頼んでしまった。
同じ剣士だからか、同じ強い信念を感じるからか、疑いが感じられない。
裏切らない絶対的保障が何処にある。
そんな不確かな信頼で、頼んでしまった。
自分達の秘密は取り合えず漏らしてはいないが、洞察力の高い彼なら、自分達の正体に気づきつつあるのではないか。
そうとなると、もしかしたら彼は優奈を見つけた途端連れ去ってしまうのではないか。
———————チャ
ルリの思考は、その音で過去から現実へ引き戻された。
目の前には黒い塊。
ではなく、銃。
銃口を頭に突きつけられてる。
周りを見れば、スーツを着た男が7人いる。
その一人のスキンヘッドに、銃口を向けられていた。
他の乗客も、身動きできずに、固まっている。
恐らく何処かのテロリストだろう。
元居た国では、『トレインジャック』と呼んでいたか。
しかしそんな事はどうでもよく————————
「おいぼうず。 命欲しけりゃ動かない方が良いぜ」
御決まりのセリフ。
何処の国でもいるものだ。
ルリははあ、と溜息を吐いて、男を見据える。
否、睨み付ける。
それに怯んだ男に、ルリは冷たい口調で言い放った。
「命が欲しければ俺に近づくな」
「ああ!!? な、何言って————————」
スパン
今の音を描写するにはこれがしっくり来る位、簡単に銃は切れた。
虚空より現れし、一本の槍によって。
切ったというより貫いたのだが、刃の幅が広いので突いただけで簡単に切り落とされた。
いきなりの事に全員沈黙していたが、銃を彼に向けていた男が自分のそれの有様を見て声を上げて脅える。
そして、ルリは未だ異空間から抜き切れて居ない槍、矛槍刀を全て抜き、立ち上がる。
それをコントクトマテリアルの様に振り回し、掴み直すと同時に構える。
銃を壊されたスキンヘッドの男はもう一つの銃を懐から取り出し、それを向けようとするが、既に目の前まで来た彼によってまた切り落とされる。
それは良かったが、切った瞬間に視界に何かが映ったのを思い出す。
スキンヘッドの後ろの奥にいた他の男が近くにあったケースからライフルを取り出すのが見えた。
ルリは切った後の体勢からそのまま回転し、正面に向き直って銃連刀を取り出した。
その銃口を向けたのは勿論ライフルの男の方。
もう構えようとしているが、そのチャンスを逃す意味がなければ理由もない。
事前に銃弾も装填していた為、すぐに撃ち放った。
発砲の音と共に炸裂し、その勢いで飛んだ弾は空気を貫き、音速ほどではないが速いスピードで進む。
そして、ライフルを持つ男の手を、貫いた。
「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
低く大きな、悲鳴。
傷口を押さえ込んで叫ぶその男に全員が気を取られた隙に、ルリは一気に駆け出す。
そして、相手の銃弾が迫り来る前に、擦れ違い様に斬る様に、斬撃を連ねた。
不規則に、激しい勢いで線を描く血が剣撃の軌跡を物語っている。
全てが全て、的確に急所を外し、しかし激痛を伴わせるほどの深さでスーツ姿のテロリストに命中する。
あまりの痛みに動けず、どうしようもなくなった彼らはとうとう全員何も出来ずに倒れ、捕らえられた。
しかし、縛るための縄もないので、スーツについていたベルトを使って全員拘束する。
だが、妙だったのはこの静かな空気。
他にも乗車は居るはずなのに悲鳴も何も聞こえない。
考え事をしてる間にここは制圧されてしまったのだろうか。
ここで放って置いても問題無いが、簡単に倒せそうな悪人をわざわざ野放しする理由も無く、こちらも手を出してしまったのだから逆に戦う理由が出来てしまった。
「此処のほかは全て制圧されてるのか?」
ルリは一番近くに居た男に訊いた。
脅えながらコクコクと必死に頷く。
あれだけの戦闘力を見せ付けたのだから、当たり前ではあるが。
「そうか———————」
————————なら
————————全て潰すか‥‥‥
ト レ ジ ャ
終
イ ン ッ ク