複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.60 )
- 日時: 2011/04/09 21:56
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: http://yaplog.jp/yurida/
列
車
第 4 3 話 の
戦
闘
連結器具と共に繋がっている他車両への移動を目的とした小さな短い橋の様な足場を、ルリは渡る。
自分が乗っていた車両が一番後ろであるから、進む方向は一つしかない。
しかし、その方がまた戻る事もないので、逆に都合が良い。
ガラッと床を擦る音を立て、右から左へスライドドアは流れるように開く。
中に居るのは勿論乗客と、五人のテロリスト。
彼らは一瞬仲間だと思ったのか、全く敵意無しにこっちを向いたが、数秒固まった後、すぐに銃を構える。
「だ、誰だっ!!!!! てめぇ!!!!」
その構えた銃の中には、マシンガンも含まれており———————
ルリがすぐに並んだソファーの陰に隠れた時には、連続した炸裂音が車内に鳴り響いている。
脅えて体を震わせる乗客。 突然の出来事に驚愕を浮かべるテロリスト。
ようやく弾の無駄遣いと理解したのだろう。 すぐにその弾丸の嵐は止む。
その間にルリが銃連刀への装填を済ませている事も知らずに。
敵はここを全て抑えていると言っても、所詮は銃という凶器を脅しに使っているだけ。
でなければ、想定外とは言え、今程度の事で取り乱す筈がない。
いまこちらが出れば、確実に先手を打てる。
その絶対的自信の許、彼は床の上を蹴り出した。
そしてそのまま、銃口を向け、横方向に動きながら、正面に銃を構える。
ぱん
ぱん
ぱん
ぱん
ぱん
合計五発。
銃特有の、単純で乾いた様な、しかし大きな音がそれを伝える。
そしてそれは、全て急所を外した部位に当てている。
滑り込むように向かい側の椅子の陰へと向かう。
いくら自信があるとはいえ、多数の銃口から弾丸は放たれずともプレッシャーを一斉掃射されるのは気分が良い物ではない。
しかし、奥から悲鳴がいくつも重なって聞こえる。
未だ相手が動ける可能性がある事を想定して用心深く、椅子の背に自分の背中をくっつけ、振り向く様な形で右目から覗く。
どうやら全員当たったようだった。
次の反撃が来ない内にと、ルリは椅子の陰から飛び出して、2列の椅子の間、真ん中から速い速度で突っ込む。
彼が鞘として扱っている閉次元。 そこから黒縁の赤い盾、東方で多く使われていた大盾を取り出しながら。
硬純刀は刀だけあって縁に刃が取り付けられているが、普通に真ん中を使えば硬さを利用した協力な打撃武器にもなる、
その硬い武器でルリは五人全員を力を加減しつつ叩く。
しかしいくら手を抜いているとは言え、相当利いたようで、全員が全員ふらふらになって最終的に倒れ伏した。
最初に居た車両と同じくしてベルトで全員動けないよう固定させてから次なる車両へ向かう。
多分先程の内に連絡は済まされていたのだろう、あけるなり連続した銃声が響き渡る。
だがそんな事はルリにとっては予想の内。
即座にしゃがんで、それだけで体全てを覆い隠せる大盾を正面に構え、相手側の銃弾が来なくなるまで防ぎ続けた。
そして、止んだ瞬間、ひょこっと顔と腕を出す。
「返すぞ!」
その腕に持っていた銃を構え、一気に人数分撃ち放った。
六発六中、全てが相手の体に吸い込まれる様に速いスピードで向かい、当然ながら急所ではない場所を撃ち抜く。
ちょっとの悲鳴を上げて倒れ、呻き声を上げている。
その彼らも縛ろうと近づいた瞬間。
「うああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
と、狂ったような、否実際狂った叫び声を上げてルリに突っ込む。
両手でライフルを持っている事から、どうやらそれで殴りつけるようだった。
だがそれは当たり前にルリには通じる筈もなく、いとも簡単に銃連刀で防がれる。
本当は硬純刀でも良かったのだが、やはりいちいち大型を持ち上げてガードするのも面倒。
それとは対立して、軽く、振り回し易い拳銃を振った方が無駄な体力(コスト)もかからずに済む。
しかし、この男のルリ以上に筋肉質な腕で押し付ける力は強く、押し返せそうにもない。
このままでは、ルリが押し倒されるか、こうしている内に他の男達が起き上がって彼を抑え込むかもしれない。
————————なら————!
と、何か思い至った様に目の色を変え、硬純刀を床に突き刺す。
そうして手を空かせ、その左手の平を広げて、急にそこから僅数センチ上から出てきた一つの筒の様な物を乗せる。
右手にかかる力が緩まないようにグリップを捻って弾倉を開き、そこにその筒を入れた。
そして、弾倉をしまい、左手を右手に添えた。
右手は人差し指をトリガーに引っ掛け、左手はその右手を支えるように握り、
トリガーを引いた。
その瞬間先と同じく乾いた音が出る。
だが、銃弾は飛び出ず、代わりに銃連刀が相手のライフルを斬り裂いた。
銃身が真っ二つとなったそれを見て、脅えて何も言えなくなる。
恐らく、否、必ずあの筒状の物には火薬“だけ”が詰まれていたのだろう。
銃弾が発砲されていないのに出ている煙が証拠。
腰が抜けて何も出来ないそのひ弱なテロリストを余所に置き、ルリは装弾を完了させる。
それを彼らに向けると、更に後退り、震えた声で必死に命乞いをする。
「い、命だけは助けてくれっ。 お願いだ! 頼む! 許してくれ!!」
———————何処までもお決まりな奴等だな‥‥‥
いやこの窮地にある状態ではそうしか言えないのだろうか。
はあ、と一つ溜息をつき、ルリは銃を持つ手を下げる。
そして硬純刀を持ち上げ、それを振り上げると————————
「へ?」
ガンッ
と、硬い音を立てて全員を叩いた。
更に強く深く床に硬純刀を突き刺し、銃連刀を肩に担ぎ、一喝する。
「許しを請うなら別の許しを請え! ヘタレ共が」
列 車
の
戦
闘
終