複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.65 )
- 日時: 2011/04/15 21:29
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: http://yaplog.jp/yurida/
第 話
列 車
の
決 闘
4 4
自分を不思議そうに見ている乗客たちを余所に、ルリはまたベルトで男達を縛り付けた。
抑制完了車両はこれで6個。
残りは2つ。
機関車両と一般車両。
その一般車両の前。
———————人間達は、勝手だ
こうして自分の欲望を力を使って実現させようとする。
その為に自分の仲間は何十、何百と死んだことだろう。
自分の両親も、優奈の両親も。
普通の人として、生まれたかった筈なのに—————————
ルリは自分の胸倉を左手で掴む。
しわが出来るまでにきつく、強く握り、そうして手を放し、ドアを開ける。
そこに待っていたのは、一人の大男。
彼以外の気配は全く無い。
両手に一つずつ持っているのは巨大な銃火器。
グレネードランチャーを持つ右手とガトリング砲を持つ左手。
両手で持つのも相当体力を使うそれらを、片手で軽々と持つ。
こいつがこのテロリストを纏めるリーダー—————————
ルリは銃連刀を持つ右手に力を込め、銃口を向ける。
今までは、乗客が人質に取られないように早急に撃ち放っていたが、彼一人と言うなら遠慮する事なく、撃てる。
何も言わず、何の言葉も交わさず、全弾装填済みのその刀から炸裂音と金属の塊を出す。
続けて二発、三発。
だが、それを全て、彼の持つ二つの銃火器に防がれる。
舌打ちし、ルリは全弾を使い果たしたその銃を閉次元へ納め、代わりに巨大な鋸状の刀、崩鋸刀を取り出した。
一気に懐まで詰め寄ろうと、右手に大剣、左手に大盾を持って、全速力で駆ける。
しかし、それを許さず、相手側からガトリング砲の射撃が放たれた。
1秒に何十発と来るそれらを、硬純刀で防ぎ、金属と金属がぶつかり合う音が止んでから、前方を確認する。
視界に見えたものは黒い何か。
否、榴弾————————
もう一度、身を屈め、盾の陰に隠れる。
爆音と爆風が飛び散り、鼓膜が破れる程ではなかったが、かなりうるさかった。
瞬間、何かに前から押される様な感覚がしたが、傷も何もなく、同じ姿勢のまま。
窓ガラスが全て割れ、飛び散る。
流石は「防御力」を固有利点とする硬純刀。 空気の流れさえ通さない絶対の盾という凄さが、盾よりこっち側にこない煙を見て分かる。
そして、削れ跡も残らない硬さ。
しかし、巨大な物を片手に一つずつ持つのは流石に無理がある。
ルリは一旦硬純刀をしまい、夢幻刀を取り出した。
柄と鍔だけの、刃なき刀、夢幻刀。
左手に持ったそれを構え、彼に見せた。
「‥‥‥なんだ、それは? さっきから黙って見ていたが、何も無い場所に鉄の塊みたいな物を押し込んだり、その場所からそれを取り出したり。 大体それは、刃が無いじゃないか。 そんなものでごっこ遊びでもするつもりか」
やっと彼から開かれた口から出た言葉。
だがそれは、ルリにとっては愚問以外の何者でもなかった。
「そうか。 まあこれを知らないなら仕方が無いだろう。 だがな、少し舐めすぎじゃないか?」
そう言い、意識を夢幻刀だけに集中させた。
寒気と共に現れたのはその刀に吸い込まれていく様に集まっていく白い煙。
否、煙ではなく、それは氷の粒だった。
この異常な低温。 それが何よりの証拠。
徐々に集まった氷は長く平べったい何かの形へ変化し、明らかになる。
透明な、透き通った、身の丈に合う長さの刃。
光の反射で美しく映える、刀。
「鬼神九刀流・魔術奥義」
夢 現 之 殺
列 車
の
決
闘
終