複雑・ファジー小説

Re: Gray Wolf  移りました ( No.69 )
日時: 2011/04/20 22:41
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
参照: http://yaplog.jp/yurida/


「何だ‥‥‥」

後ろに向かって若干反り、程よい長さの刀。
変わった特徴は、無い。


否、その特徴は—————————




    刃 が 氷 で あ る 事







       第   4   5   話

                 夢    現    之    殺






「夢現之殺」
彼の問いに対する第一声は、たった一つの単語。
そこから後付けするように、加えて説明する。
「夢幻刀の魔術奥義。 見たとおりのものだ。 それ以上を言う必要はない」



そう言って、飛び出す—————————



一瞬唖然としていたが、男は直ぐにグレネードランチャーを構え、スイッチを押す。
そして、同時に榴弾が後ろに煙を吹き出し、直進して行った。
それを、崩鋸刀のたった一太刀で真っ二つとなり、別れたそれらが左右へ散り、窓ガラスを割り、爆発する。

爆音に驚き、悲鳴を上げた乗客達。

そんな事も知らずに、彼らは、戦い合っている。

グレネードは連続して撃てない。 狙うなら今。
だが、一つ忘れていた事があった。


ガトリング砲を、左手に持っている。
片手でも扱える。
連射に隙は無い。


「しまっ————————!」




ダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッッッッッッ





連続した発砲音と放たれる銃弾。
撃ち放たれた場所には煙が立ち込め、彼の姿は見えない。
だが、厄介な盾も無く、その状態で6秒間ずっと発砲し続けていた。
生きてる筈が無い。 そう思った時—————————



無数の刀に取り囲まれた、生きたルリが居た。


「な‥‥‥」

前方に例の盾、硬純刀を浮いた状態でその位置を固定させ、後の刀は周りに浮遊させえいる。
矛、鎌、弓、銃、小刀。
それら全てが、ルリを護る様に。

「鬼神九刀流・乱舞奥義其八『多力奔玩』」
数ある鬼神九刀流の奥義名を、その一つを、ルリは言った。

「くっ・・・! このぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
グレネードランチャーを前方に向け、的確にルリを撃とうと狙いを定める。
だが、焦ってしまって中々狙えず、もたついている。
その隙を狙ってルリは絶傷刀を手に取り、それを既に大剣を離した右手に持って構える。


魔術奥義、絶傷絶命———————


振った瞬間に覇気をもってして生まれた無数の風が彼の構えた銃火器に全て当たった。

そして、何の削れ後も無く、小さな音を立てただけで切断され、崩れ落ちた。
男は次々と起こる理解できない事に驚くしかなかった。
自分の右手が持っているグリップを見つめる事しか。

ルリはその男に絶傷刀を投げつけ、それに気づいた彼は咄嗟に左へと身を動かし、服越しに肩に掠らせる程度で済んだ。

かと思えば、服は胸の部分まで大きく切られ、それに守られていた肩も同じぐらいの深さまで斬られている。
もう悲鳴すら上げられない。

氷の刃を持つ夢幻刀を両手に構え、ルリは男の懐まで行く。
自分の事を理解することもできない男に、少し憐れみを覚えながらも。
だが、それとは裏腹に、容赦の無い斬撃を次々と与えていく。
胸部にも、腕にも、切り傷が次々と出来、その度に悲鳴が漏れる。

肉厚なお陰で致命傷こそ負わないが、傷をこれ以上多くすれば出血多量になる。
ガトリング砲を振り上げ、渾身の力で振り下ろす。
ルリは大きく後ろに下がりその一撃を避け、遠くに一旦退こうとした。
だがそれを見た男は即座に機関銃を構え、残りの弾を放つ。
しかし、勝手に宙を浮いてきた盾によって防がれる。

防がれる、というより、遮られる。



「魔術奥義『金剛盾硬』」



宙に浮いた盾を中心に、壁が出来ている。

床、壁、天井、それらの角も何もかも、隙間の無い透明な壁が、ルリと男の間に作られていた。
これも恐らく、氷で出来ている。
しかも相当硬く、撃った銃弾は全てその壁に当たるも、傷一つつかない。



壁は壊れ、飛び散る氷を避けながら、夢幻刀を右手に歩く。


その刀に刃はもう無く、白い煙、氷の粒だけがそこにあった。
だが、変わらない殺気。
その表情から、何か来るのだろうと察し、男は銃弾が尽きたその機関銃を両手で握り、構える。


しかし何も起こらない。
否、今現在刀を振り上げているのだが、未だに冷気で氷の刃は造られない。
あろうことか、そのまま振っている。
最初はただふざけていると思ったのだが、それは間違いだと気づいたのはそう遅くなかった。




何故なら、鍔に刻まれていた魔方陣からでている冷気によって出来た白い気体、氷が彼の肩に当たった時、





彼の肩は斬られたからだった。











        夢      現      之
                                殺   終