複雑・ファジー小説

Re: Gray Wolf  移りました ( No.73 )
日時: 2011/05/04 01:52
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
参照: http://yaplog.jp/yurida/

「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
鎧と兜を身に纏った中世の兵士を思わせる男が剣を右手に、盾を左手に持って向かい合う者に向かって突っ込む。
しかし、臆する事無くその者は男を鎧も何も関係なく持った剣で斬り倒してしまった。
「は! こんなもん俺には無駄だな。 余裕過ぎるっつーの」
彼、ユーリの嘲笑う声が鎧の男に向かって放たれる。
その直後に、更に鎧の兵士が次々と現れたが、それらすらも簡単に斬り倒し、地面へ倒れ伏させる。

そうして進んでいくと、終に鎧を纏った大男がランスを構えて待ち構えている。
構えると同時に男は駆け出し、その突撃槍を前に突き出してきた。
彼はそれをかわし、隙が出来たところで斬りつける。
だが、それでも未だ死なず、、ずっとかわしては斬る動作を繰り返している。
「ほら、無駄無駄ァ!」
ユーリの声が響き、そうして斬り降ろした。
大男は自分の首を握り締め、呻き声を上げて倒れる。

それを見たユーリの顔は、


笑っていた。




   第   4

          7   話


                       浴  衣  の  少  女




「すげぇ!! 兄ちゃんやるな!!!!」
ゲームアーケードで三人の子供が外側に設置されていたコンピューターゲームの前で騒いでいる。
それは、一つの所謂『アクションゲーム』
コードに繋がれた棒を振り回し、それに連動してテレビのコンピューターの主人公の剣を振る、剣で防ぐと言った動きに連動させるというもの。
足元にある金属製の板2枚を踏んで、左右に敵の攻撃を避けることも出来たりもする。
しかし、難易度はそこらのゲームよりもかなり高く、やり込んだ者でも中々高得点は出せないのだが——————————




「すごいすごい! お兄ちゃん点数一位だよ! すごいよ!」
三人の子供の中で唯一の女の子がそのゲームの台に乗っている少年———————ユーリに対してはしゃぐ。
ノーダメージ、際限ないコンボ、それらを平然とやってのけ、二位と圧倒的な差をつけてトップに輝いている。
「ま、ガチモンやってる俺には簡単すぎて仕方が無えな」
棒をケースにしまい、台を降りたユーリはそのまま子供たちの前まで行って、目線を合わせるようにしゃがみこむ。
そしてコートの内ポケットから一枚の写真を取り出して、見せながら言った。
「お前ら、この娘を知らないか?」
「えー? 誰それ。 お兄ちゃんの彼女?」
少し赤面しながら言う女の子の言葉にあー、と言いながら頭を掻き、自分のほうに写真の中の女の子——————ユナを見る。
「こんな娘が彼女だったら、俺は幸せかもなぁ〜」


————————それはあいつが許さないか


溜息を吐きながら、脳裏に過ぎったルリの姿を消して、子供達にもう一度見せる。
すると、髪が極端に短い男の子が、口を開いた。
「あ、その女の人、さっきママ此処に来る前に見掛けたよ」
「え、マジで!?」
他の2人は全く知らなくて半分諦めていたユーリにとって、朗報以外の何物でもないその言葉。
「うん。 あそこの道の端っこ辺りで見かけたんだけど‥‥‥」
————————あの通りか・・・
ユーリは子供が指差した交差点を見て、横切ったもう一つの大通りを見た。
そうして納得すると、腰に付いたポーチから黒い革の財布を取り出す。
そこから100zの硬貨を三枚取り出し、子供一人に一枚ずつあげる。
「ほらよ。 教えてくれた礼だ。 感謝しろよー?」
すると、一気にはしゃぎ出して、彼にお礼を言った。
歩行者用の道路をまだまだ遅いが、全速力で駆け抜ける。
その姿を見送り、しばらくその方向を見た後、振り返って小走りで先の子供が指差した交差点へ走る。


角を曲がり、短髪の男の子が言っていた大通りを歩いた。
とは言え、流石にあれから時間が経っている故に、ここには居ない。
ユーリは取り合えず、建物同士の間から裏通りへと入った。
(大抵ああいう目立つ娘が表に居ないとなると・・・人知れない場所に居るとしか思えねえなぁ‥‥‥)
まあ、ここは結構危険地帯なのだが。


案の定、男達が狭い建物の裏通りで彼を挟む様に集まってくる。
勿論、善人ではない。


「おいお前!! おめぇ何処のモンだァ!!?」
「此処は俺達のテリトリーだって事を知らねえのか?」
(知らねぇよ)
そう心の中で否定して、格闘技の構えをとる。
反応したのか、男達はそれぞれ手に持ったバットや金属棒を更に強く握り締めた。
しかし、その張り詰めた空気の中、ある声が割って入る。
「おいお前らァ!!! どうかしたのか!!?」

その声に不良の男達が震え上がり、後ろをすぐさま振り返った。
見るからに厳つそうな、ごつい体格の男。
隣に、男を嫌悪、恐怖している少女が一人。
東洋風の顔立ちに良く似合う、浴衣が印象的で——————————






—————ん、浴衣?






ユーリは少し構えを緩め、写真を取り出し始める。

「兄貴、その女は?」
「あァ。 あまりに美人だからよお、捕まえちまった」
男は高笑いしながらその女を更に抱き寄せる。
当然、女はそれを喜んでいるはずも無く、むしろ泣きそうな目をしていた。

その間に、ユーリはその女と、写真の女を何度も何度も見比べた。
浴衣、ふわふわしたようなセミロングの髪。







「いたあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」









ユーリは全員が驚いて当然なほどの大声を上げる。
確かに、浴衣と肩に掛かる髪は写真と同じ。 違うと言えば、百合の模様が描かれた浴衣が、桜の模様が描かれた写真の浴衣との事。
だが、それを除けば本人写真と全く同じ。

驚いて隙が丸出しだった男達を素早い体術で押し退けて行き、女を抱いているごつい男の左手を蹴り上げた。
その衝撃によって左手は女から離され、今度はユーリがその女を抱きかかえ、高速でその男から離れた。
抱えた女を放し、自由にさせて、彼は男に顔を向き直す。
「早く行け!」
その言葉を聞いて、安心したのか、振り返りもせずにバタバタと走り去る。



「てめぇ‥‥‥せっかく見つけた俺の女を逃がさせやがって‥‥‥」
ごつい男が左手を摩りながら怒りを露にする。
彼だけではない。 ユーリに尽く薙ぎ倒された他の男達も怒りを見せていた。


だが、ユーリはちっとも恐れを見せない。
むしろ、余裕であるかの様に、笑っている。








「へぇ? “俺の”女ねぇ?」











            浴

              衣

            の

              少

            女

              終