複雑・ファジー小説
- Re: Gray Wolf 移りました ( No.75 )
- 日時: 2011/05/08 18:00
- 名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
- 参照: GWってゴールデンウィークじゃないから!!Gray Wolfだから!!!!!
第 4 ユナ・カナザワ
8
話
公園のベンチで少女は座っていた。
百合の柄の浴衣を着て、肩に掛かるほどの長さの黒髪。
長い距離を走ったために、汗が体中から出ており、息も少し荒い。
そんな彼女の目の前に茶色と白の玉が写った。
「うわあっ!!」
気の抜けた声に笑って見せたのはその玉の持ち主、ユーリ。
「アイス、食べない?」
手に持った玉もといアイスキャンディーを差し出す。
いきなり出てきて第一声がそれなのもびっくりするが、彼が先程助けた人物だと思い出し、恐る恐る手に取る。
しかし用心深く手に取ったそれをまじまじと見つめた。
チョコ味とバニラ味の二段重ね、ワッフルコーン。
何処から何処までもただのアイスキャンディー。
睡眠薬が盛られている様には見えない。 見た目からじゃ睡眠薬が分からないから意味無いが。
だが、ユーリは何でもない顔で隣に座り、普通にがっついている。
何も気にしてる風ではないのを見て、舌先でペロッと舐める。
眠気も痺れもない。
調子に乗ってパクッと加え、その味を味わった。
そこで大事な事を思い出し、ユーリを見つめる。
怪我一つ無い、変わらない肌。
———————あんな人数でこれだけで済んだのかな‥‥‥
それを訊こうとして「あの‥‥‥」と言いかけた瞬間、
「ユナ・カナザワ、だよな」
と何食わぬ顔で言う。
反射的に距離をとり、ユナと呼ばれた女はユーリに対して身構えた。
そのしぐさは元々見越していたのか、慌てる様子も無く、彼女に一枚の写真を見せる。
「ルリからお前を探すように言われてた。 こいつはその証明、みたいなもんだ」
それをベンチの上に置くと、またアイスを食べ始める。
そっと震えながら掴み、見ると、そこには自分の笑顔が写った物だった。
「そんなびくびくした様な顔より、写真の笑顔の方が十分可愛いですなぁ〜」
でれでれと腑抜けた顔をしながら言う彼の言葉に、彼女は赤面する。
「る、ルリとはでょぉう関係なんですかっ?」
慌てて話題を切り出し、気を紛らすも、思わず舌を噛んでしまい、更に赤面して顔を手で覆う。
(まるでシエラだな)
と、思いながらも変わらずアイスを食べ続け、気にする素振りはしない。
‥‥‥が、耐え切れず少しだけ吹き出してしまった。
その態度にユナは頬を膨らませる。
だが、それで親しみを持ったのか、ユーリとの距離を少し詰めた。
「‥‥‥ま、知り合い程度の間柄ってところか。 俺、何でも屋やってるし、それでそいつに依頼されたからなぁ」
「何でも屋?」
聞きなれない単語の方に彼女の疑問は向いた。
「要は便利屋みたいなもんだよ。 護衛やら傭兵やらの危ない仕事から、引越し手伝いや建設業務手伝い、人探しやペット探しとか、そう言った力仕事から地味な仕事まで、何でも報酬次第で解決する。 まあ、稼げるときと稼げない時があるからそこら辺は困るけどな」
へーぇ、と抜けたような声をしながらまたアイスを食べ始める。
すると、ユーリが立ち上がってユナに顔を向ける。
「あいつからの依頼で、お前の事を保護しなくちゃならない。 この後すぐにでも付いてきてもらいたいんだが‥‥‥」
「え‥‥‥でも・・・」
ユーリの言葉を聞いた瞬間、急にもじもじし始め、何かを呟いている様だが、聞こえない。
さては未だ用心しているのかと思い、彼女に安心の言葉をかける。
「勿論心配すんな。 暗闇に誘い込んでゴンッ!みたいな事はないから。 ちゃんと人通りの多いところには行くし、もし何かあったら護れるだけの力量はあるぜ?」
しかし、それでもまだ、同じ態度。
そして、口をやっと開いた。
「違うんです‥‥‥。 その・・・お金が‥‥」
「あー」
ルリが来るまでまだまだある。
その間に何処かへ滞在しなければならないが、迷える少女が宿に止まるお金を持っているわけでもなく、誰かしらの家に止まらなくてはならない。
自分の家はトイレとバスルーム以外の部屋はリビングとダイニングが一致した部屋しかないが、三人や四人住んだところで余裕で生活できる広さがある。
だから、彼女をそこに一旦住まわす事も出来るが、年齢相応の時期故にそれは無理だと言えよう。
しかし、問題は無い。
「その事なら気にすんな。 心当たりが一つだけある。 そいつの所に住まわしてもらえ」
そう言って彼女の後ろへ回り、両手を前に突き出して歩くように促す。
「ほら、ちゃっちゃと歩く」
「え? あ、そ、その、あ? わ、は、はい!」
否定の言葉を口から出させるよりも先に行動させないと説得が面倒になる。
ルリが来るまで、後4日。
ユ
ナ
・
カ 終
ナ
ザ
ワ