複雑・ファジー小説

Re: Gray Wolf ( No.91 )
日時: 2011/06/12 00:44
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
参照: 最近ユーリ視点のグレウルのネタを夢で見た俺は末期




              2

   第   
                 話

         5

                                兆

                    予




「本当にすまなかった」
武器をしまったルリが深々と頭を下げる。

てっきりユーリがユナを攫っていったものと思い、勘違いしてしまったことを。




「・・・・・・ま、別にいいけどよ。 そちらさんも面倒事に巻き込まれて荒むのは分からなくもないけどね」
「それより大丈夫? ユーリ」
シエラは心配しながら頭も胴体も四肢も汗びっしょりな彼を見つめた。
汗だけではない。 息も、かなり荒すぎる。
誰よりも運動神経を自慢とするユーリが、たったワンモーションでここまで疲労する事は今まで見た事が無い。
あの一撃にそれほどの威力が出るはずもないのに—————————









—————— 一瞬、意識が飛びかけた———————————————————



もし反射と言う自分の防衛本能が動いていなかったら————————



もし自分の意思が自分を支配するのが遅かったら——————————




危なかった—————————





—————————早く『コイツ』を克服しとかないとな






額に付いた汗を拭った腕を見ながら、ユーリはゆっくり立ち上がる。
まだ少し目眩はするが、倒れるほどでもない。
呼吸を整え、テーブルに置いてあった物を取り、ルリに差し出す。
「食うか? 団子」
赤白緑と並んだ球を見て、一瞬驚くが、黙って手に取る。
ユナも同じ物を持っているし、食べ跡が口元に付いているので安全なのだろうが——————


(何故団子・・・・・・)


「いやー、ユナちゃんが白玉粉を持っててさ、賞味期限近かったから取り合えず何かにして食おうと思ったらこれ思いついて」
ああ————————

『ルリ、ルリ! 見てこれ!!』
『・・・・・・何だそれは? 白玉粉?』
『うん。 これをいざと言うときの非常食にするの!!』

ただ、それを白玉にしようにも、2人とも料理下手で、作る事ができない。
そのため、こんな時になるまで全く使われなかった。
彼女の気遣いが仇になるかもしれないと思ったが、取り合えず良かったのだろう。


パクッと一口。


その瞬間、余りの味に思わず噴出しそうになったが、しっかりと飲み込む。
決して不味かったわけでなく、むしろ美味かった。
だからこそ——————


「‥‥‥信じられない」


そう、引いてしまう。
『人は見た目ではなく中身』とは言うが、意外すぎる。
ガサツそうな見た目に反比例して今までに食べた事の無い味だった。
「・・・ユナか俺がこれぐらい出来たら良いんだが・・・・・・」
「ええ!!!? ひどいよぉ!!」
溜息を吐いて咀嚼し、味に浸りながらユナに対して当てつけた。

ガチャリとアリスがゆっくりドアを開け、深刻そうな顔でこちらを見る。
先程ルリに脅迫されて部屋まで強制的に案内されたのだから仕方ないが。
そんな彼女の心境を察したユーリは、
「ちょっと後もうちょい団子作ってくるわ」
と言って、部屋から出ようとする。
小走りと歩きの中間のような速度で行き、アリスの肩をぽんぽんと叩いて落ち着かせ、一緒に下に行くよう促して戸口から姿を消す。


そこで、ある事を思い出して声を上げ、閉めた扉をまた開けてルリに向かってその物事を伝えた。
「お前、呆気ない再会の所すまねえけど、後で依頼料払ってもらうかんな」








目が点になっている。








——————————ああ、そういえば












「金がない」







                     終


            予



                  兆