複雑・ファジー小説

Re: Gray Wolf ( No.99 )
日時: 2011/07/11 19:00
名前: yuri ◆F3yWwB7rk6 (ID: DOGZrvXb)
参照: 最近ユーリ視点のグレウルのネタを夢で見た俺は末期


   第

      5    4           罪   の   人

              話



「何の用だ‥‥‥?」
夜、ユーリの部屋。
ルリとユナは空き部屋やその他の事において都合の良いシエラの家に滞在する事になり、ユナは現在就寝中。
ただしルリだけが、今はユーリの許に居る。
その理由を、ユーリはパソコン付きの机に腰掛けながら言った。
手には空間術の書物があり、それをぱらぱらとめくり始める。
「お前の鬼神九刀流にちょっと興味あってね。 そいつの起源から、何でお前が使えんのか、知りたくてね」

何だそんな事か、と呟き、ソファーに腰を掛ける。
「別に、鬼神九刀流は必ずしも血統で受け継がれる物じゃないからな。 だから開祖の朝奈夜月が愛弟子に継がせて、更にそいつが自分の弟子を・・・・・・と、どんどん継がせて今がある。 俺もその一人だ」
疑問挟む余地も、そもそもその疑問自体浮かぶ前にどんどん解消されていった。
そのため、つまらなそうに背もたれしながら声を低くしてふーん、と言い放った。



「まさか‥‥それだけか?」
「‥‥‥」
上を向いた頭をだらしなくぶらぶらし、開いた本をそこに乗せたまま、何も言わない。
だからてっきり図星かと思ったが、そうではなかった。
「‥‥‥お前が俺らを信用しようがしまいが関係ねえけどな、でもお前らが何なのかぐらいは教えてもらえねえのか?」

何度もして何度も避けられた質問。
ルリたった一人をここに呼んだのはそれが理由だった。
「それを訊いてどうする?」
「お前は俺たちをまだ信用していない。 だがユナちゃんは俺たちを信用している。 シエラとは友達にすらなっている。 だけどこのまんまお前等の正体が分からずに、お前等の都合でいなくなると、俺はともかくシエラが納得しねえよ。 多分、ユナちゃんもな」
「ふぅ・・・・・・。 随分あいつらを心配するな?」
当たり前だ、と言い、
「どうやら俺達は正直過ぎて頑固過ぎる奴と一緒に居るらしいからな。 そいつらの説得役は多い方がいいだろ?」
頭に乗せた開きっぱなしの本を取り、椅子から立ち上がる。
彼がその本を読みながら歩き、本棚に戻す間に、ルリは不服ながらもその口を開き始めた。







————————————










「昨日のワリアさんが凄い格好良かったなぁ〜」
「あの人? ルドバス役の? 私はコリア役のデイザさんが良いかな‥‥‥」
「シエラちゃんは人を見る目がなってないね。 そんなんだと悪い男に引っ掛かっちゃうよ〜」
昨夜見たドラマの話をしながら、リンとシエラは放課後、学校を出ようとする。
しかしその途上、せかせかと早歩きで帰ろうとするレフィの姿が目に入る。

(・・・・・・ユーリのところに行くのかな)

そういえばルリとユナが来てから今日で8日目。 未だにレフィは彼らに会っていない。
というか学校でも最近は中々話さなかった。
分厚いファイルみたいな物とにらめっこするばかりで、何も、誰とも話さずに早々と帰っている。
周りもそのいつもとは違う威圧的な姿から誰も近寄れなかった。

そして今も。

正直話しかけづらかったが、今日ばかりはと、リンを少し待たせて思い切って声を掛ける。
「あの・・・レフィちゃん? 今日はユーリの所に寄るの?」
「ん‥‥‥シエラか。 まあユーリさんにも会っては置きたいそれよりも公務があるから」
チラッと振り返って視界の端にシエラを見ながら、淡白な反応で返す。
いつもとは違って真面目極まりない態度、その上公務という言葉が引っ掛かり、一度は彼女を見送ったものの、帰り道でリンと分かれた後で急ぐように走り出す。

向かう先は勿論ユーリの家。

何かいやな予感がして堪らない。
考えれば考えるほど足が重くなり、それとは反対に走る速度を速めていく。



速く



早く



あそこに行かないと—————————!!











着いたそこは最悪だった。
その場所はユーリとセルアの家の前。
青服、つまりは軍服を着た人が十数人、何かを囲んでいる。
そして、囲まれているのは————————


「ルリさん! ユナちゃん!」
「君! 待ちたまえ!!!」
軍人達の間を抜けて必死に彼らに駆け寄ろうとするも、その軍人に腕をつかまれ引き止められる。
「話してください! 何であの2人がこんな事になってるんですか!!?」
「少し黙りなさい」
必死に抵抗する彼女に、ある声が制する。
その声の主は、先程まで難しい顔、そして今は厳しい顔の少女、レフィ。
ユナは無くとも一度はルリの事は見たはずなのだから彼のことは知っているはず。 敵ではない。
なのにこの状況で何故か平然としている。
「な、何で‥‥‥」
そんな疑問の言葉に答えず、彼女は静かに前に出て彼らに言った。



「ロートスシティ担当ガーディアンのレフィ・リホルンです。 ルリ・ミナゲツ、及びユナ・カナザワ。 放火、強盗、殺人の罪により。拘束します」
「な・・・・・・!」








—————レフィちゃん





—————今なんて?





—————信じられない。





ルリは少し気難しいところはあるが、そんな事をするような人じゃない。

ユナだって、あの無邪気な笑顔からそんなイメージは湧かない。

そんな事はしない筈なのに、なんで2人は何も言わず、ただ俯いてるのだろう。


「抵抗する場合は、射殺も止む無しです」
その言葉と同時に、軍人全員が持っていた機関銃を構える。


それで大人しくなると思いきや、、逆に刀を抜き出した。
右手に巨大な崩鋸刀、左手に小振りな銃連刀。
二つを構え、あからさまな抵抗の意志を見せている。


彼らの意図を察し、レフィは諦めたように言い捨てる。
「そうですか。 ・・・・・・仕方無いですね。 国軍の方々、お願いします」
各々が機関銃の引き金を人差し指に引っ掛け始め、引こうとする。
一斉掃射するつもりだろう。 そうすれば確実に2人は死ぬ。

「待っ——————————!!!!」




シエラが止め様とした瞬間、絶句した。
その時点で既に全員が撃ち放っていたのもそうだが、何より2人の姿がぼやけ始めたからである。
理由は単純明快。

水が噴水する様に彼らとその周りを包んでいたからだった。

そしてそれが起こった理由も噴水が終わってから判明する。





それは彼によるものだった。



高く振り上げていた刀を弄ぶように振り回し、もう一度右手で握り直す。





後ろで束ねた金髪の長髪に、黒いロングコートの少年。









        罪    の    人    終